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12話

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「ケッケッケッケ。
 何しに来た、腐れ使徒。
 ここはお前の国ではない。
 余計な事をしても何の得もないぞ」

 神殿の屋根を破壊して侵入した真金の騎士の眼に入ってきたモノは、魔がライリー王太子を咥え込んでいる光景だった。
 ライリー王太子は恍惚の表情を浮かべて、全ての理性も思考も捨てていた。
 ライリー王太子だけでなく、デイジーの父親であるバンバリー公爵ディラン卿も、デイジーの兄であるカーター卿も、他の魔と交わって同じ状態だった。
 正視に耐えない吐き気をもよおすような醜悪な情景だった。

「得?
 舐めるなよ。
 人間は損得だけで動くわけではない。
 愛と正義のためなら命を賭けられるのも人間だ!
 屑と一緒に死ねい!」

 真金の騎士は一切の手加減をしなかった。
 魔を一掃できるほどの強大な魔法を放って、一撃で全てを終わらそうとした。
 だが、魔の力は真金の騎士が考えているよりも強大だった。
 長年かけて腐敗した神殿は、神の力を抑え、魔の力を高める魔法陣で溢れていた。
 それも、他人に知られないように、神殿の地下に密かに描いていた。

 それだけではなかった。
 真金の騎士が放った攻撃に倍する魔力が、真金の騎士を襲ったのだ。
 神殿には、神に仕える者の攻撃を倍にして反撃に変えるという、とんでもない魔法陣まで描かれていたのだ。
 その一撃を、真金の騎士はまともに受けてしまった。

「ケッケッケッケ。
 腐れ使徒ごときに滅される我らではないわ。
 お前達が攻撃してくることなど、最初から計算しておったのだ。
 余計な事をするから早死にすることになるのよ。
 黙っていれば、魔王様の降臨までは生き延びられたものを。
 愚か者が!」

「誰が愚か者だって?
 お前達魔のやりそうなことなど、こちらこそ計算していたさ。
 さっきのは、ほんの小手調べだ。
 今度こそ本気でやらせてもらう。
 一切手加減なしの攻撃を加えさせてもらうぞ!」

 真金の騎士は神の使徒だ。
 それもただの神ではない。
 既に人間には忘れ去られている、古の神。
 古代神に選ばれた特別な存在だった。
 その古代神の中でも特に戦闘力に優れた、古代戦闘神に選ばれた使徒なのだ。

 だからといって戦闘一辺倒の愚か者ではない。
 戦術も戦略も知る、知勇兼備の勇者英雄でもあるのだ。
 だから、言葉では攻撃魔法を使うと言いながら、実際には破魔封魔の魔法を準備していたのだ。
 
 真金の騎士が知る限り、破魔封魔の魔法を跳ね返す術はない。
 古代神から与えられた知識なので、間違いなどありえない。
 だがそれでも真金の騎士は慎重だった。
 全力の魔力は使わない。
 倍返しされてもいいように、全力の一割しか魔力を使わなかった。
 それでも先ほどの攻撃の十倍の魔力だったのだが。
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