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第1章
第45話:決意
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「見つけたわ、プロウジェニタ・ヴァンパイアがどこにいるか見つけたわ!」
四人が村人たちに移住の話をした翌日、予言精霊ディースが逃げたプロウジェニタ・ヴァンパイアの隠れ家を見つけ出した。
「ライアンはどうすべきだと思いますか?」
まだ父上様と母上様のレベル上げが1日しかできていないエマは、珍しく決断ができずにライアンの意見を聞いた。
村長の娘として厳しく育てられたエマ。
村長家とはいえ、大魔境内の小さな村とは思えない帝王学を叩き込まれているエマは、表面上は支配者に相応し言動をする。
だが内心は表面上の態度とは違っている。
他人悪口で傷つく繊細な心が隠されているのだ。
間違った事には屈しないが、本質は内向的なのだ。
「村長とアイリス様は格段に強くなられた。
亜竜ダンジョンに残るなら危険だが、村に戻るなら誰にも負けない。
恩知らずな連中が何をしても防御魔力層は破れない。
村でレベル上げした父さんやヴィクトーさんもいる。
だから村に戻ってもらえば安全だ」
「そっか、そうだね、村に戻ればいいだけよね」
「ああ、俺たちには精霊はディースだけついて来てもらえば良い。
プロウジェニタ・ヴァンパイアと行違うような事があっても、直ぐに戻れる。
他の五人に残ってもらえば、レッサー・ヴァンパイアやインターミーディア・ヴァンパイア程度が襲ってきても大丈夫だ」
「ありがとうライアン、あなたの言葉で安心できたわ。
プロウジェニタ・ヴァンパイアに時間を与えて配下を増やされる方が厄介よね。
父上様、母上様、村に戻っていただきます」
「あれだけお淑やかで可愛かったエマが、頼もしい支配者になってくれた」
レベル上げのために何十回も蘇生させられた村長がうれしそうに言う。
「私のような優しいだけの聖治癒術使ではなく、多くの人を助けるために少を切り捨てられる、一人前の統治者に成ってくれたのですね」
意外な事に、村人の為に自分を犠牲にしたアイリスが、冷徹な判断をくだせるエマを手放しでほめた。
「村長、アイリス様、村を売りそうな連中には気を付けてください」
「心配しなくても大丈夫だ、安心しろライアン。
治癒神エイルの影響が強いアイリスは村人を処分できないが、私は違う。
危険だと判断したら容赦なく殺す。
ライアンが話してくれたダンジョンの成長を考えて、ダンジョンの中で殺す」
代々支配者家系で、支配者になるための教育を受けた村長は冷徹な決断が下せた。
「さすが父上様です、安心してプロウジェニタ・ヴァンパイアを追えます」
エマが自分の決意を父親に告げる。
「万が一プロウジェニタ・ヴァンパイアを取り逃がしたら、更に追いかけます」
ライアンが不退転の決意を口にする。
「だったら転送精霊セーレも連れて行きなさい。
そうすれば手紙の遣り取りができる」
「分かりました、村長とアイリス様もレッサー・ヴァンパイアやインターミーディア・ヴァンパイア程度なら滅ぼせるようになられましたから、レベルの上がった精霊が四人いれば大丈夫ですね?」
「ああ、大丈夫だ、安心してくれ。
たださすがに、微調整ができていない状態でここから村までアイリスと二人で帰るのは危険だ、村までは送ってくれ」
「はい、分かっています、どうせカインとアベルと合流しなければいけません。
お二人を村まで送ってからプロウジェニタ・ヴァンパイアの討伐に行きます。
ただ、戻る途中で出会う魔獣は狩っていただきます、では行きましょう」
「やれ、やれ、最後まで厳しい先生だ」
エマとライアン、ガブリエルとアイリスは亜竜ダンジョンから村まで駆けた。
ガブリエルとアイリスの走力にあわせて駆けた。
余裕のあるエマとライアンは今後の方針について話し合った。
「村長とアイリス様は大丈夫だと思いますが、ティトゥワン様たちが心配です。
本来なら年長組の俺たちが年少組のティトゥワン様たちを守らないといけないのですが、今は無理ですから別の方法を考えましょう」
「信用できない連中を排除したうえで、常時館に匿えばいいのではないか?」
「それも良いのですが、後々の為に守り手を育てましょう」
「守り手を育てる、ああ、そうか、番犬か?」
「はい、カインとアベルが育てた猟犬たちの強さは知っておられますね?」
「ああ、知っている、君たちもだが、猟犬見習たちの強さにも驚かされた。
だが、魔獣の血が濃い猟犬たちが、自分よりも弱い人間の子供を守るか?」
「子供たちに命令させるのは無理ですが、強い村長とアイリス様が命じてティトゥワン様たちを守らせるなら、大丈夫だと思います」
「ライアンの言う通りですわ、父上様。
ですがライアンの言った事だけではありませんわ」
「他にもあるのか?」
「父上様と母上様が愛情を込めて育てれば、ティトゥワンたちの兄や姉として育ってくれますから、弟や妹を守るために戦ってくれます。
オオカミ系やイヌ系の魔獣は、リーダーや序列上位の者が序列下位の者を守りますから、安心してティトゥワンたち任せられます。
もっとも、今から調教を始めても三年はかかりますから、ティトゥワンが番犬たちを従わせるようになるかもしれません」
「そうだったらいいな、分かった、私とアイリスで番犬を育てよう。
だが、丁度良い子狼や子犬が村にはいないぞ?」
「どうせ三年計画なのです、少し待ちましょう。
カインとアベルの猟犬見習たちも子供を作れる年です」
四人が村人たちに移住の話をした翌日、予言精霊ディースが逃げたプロウジェニタ・ヴァンパイアの隠れ家を見つけ出した。
「ライアンはどうすべきだと思いますか?」
まだ父上様と母上様のレベル上げが1日しかできていないエマは、珍しく決断ができずにライアンの意見を聞いた。
村長の娘として厳しく育てられたエマ。
村長家とはいえ、大魔境内の小さな村とは思えない帝王学を叩き込まれているエマは、表面上は支配者に相応し言動をする。
だが内心は表面上の態度とは違っている。
他人悪口で傷つく繊細な心が隠されているのだ。
間違った事には屈しないが、本質は内向的なのだ。
「村長とアイリス様は格段に強くなられた。
亜竜ダンジョンに残るなら危険だが、村に戻るなら誰にも負けない。
恩知らずな連中が何をしても防御魔力層は破れない。
村でレベル上げした父さんやヴィクトーさんもいる。
だから村に戻ってもらえば安全だ」
「そっか、そうだね、村に戻ればいいだけよね」
「ああ、俺たちには精霊はディースだけついて来てもらえば良い。
プロウジェニタ・ヴァンパイアと行違うような事があっても、直ぐに戻れる。
他の五人に残ってもらえば、レッサー・ヴァンパイアやインターミーディア・ヴァンパイア程度が襲ってきても大丈夫だ」
「ありがとうライアン、あなたの言葉で安心できたわ。
プロウジェニタ・ヴァンパイアに時間を与えて配下を増やされる方が厄介よね。
父上様、母上様、村に戻っていただきます」
「あれだけお淑やかで可愛かったエマが、頼もしい支配者になってくれた」
レベル上げのために何十回も蘇生させられた村長がうれしそうに言う。
「私のような優しいだけの聖治癒術使ではなく、多くの人を助けるために少を切り捨てられる、一人前の統治者に成ってくれたのですね」
意外な事に、村人の為に自分を犠牲にしたアイリスが、冷徹な判断をくだせるエマを手放しでほめた。
「村長、アイリス様、村を売りそうな連中には気を付けてください」
「心配しなくても大丈夫だ、安心しろライアン。
治癒神エイルの影響が強いアイリスは村人を処分できないが、私は違う。
危険だと判断したら容赦なく殺す。
ライアンが話してくれたダンジョンの成長を考えて、ダンジョンの中で殺す」
代々支配者家系で、支配者になるための教育を受けた村長は冷徹な決断が下せた。
「さすが父上様です、安心してプロウジェニタ・ヴァンパイアを追えます」
エマが自分の決意を父親に告げる。
「万が一プロウジェニタ・ヴァンパイアを取り逃がしたら、更に追いかけます」
ライアンが不退転の決意を口にする。
「だったら転送精霊セーレも連れて行きなさい。
そうすれば手紙の遣り取りができる」
「分かりました、村長とアイリス様もレッサー・ヴァンパイアやインターミーディア・ヴァンパイア程度なら滅ぼせるようになられましたから、レベルの上がった精霊が四人いれば大丈夫ですね?」
「ああ、大丈夫だ、安心してくれ。
たださすがに、微調整ができていない状態でここから村までアイリスと二人で帰るのは危険だ、村までは送ってくれ」
「はい、分かっています、どうせカインとアベルと合流しなければいけません。
お二人を村まで送ってからプロウジェニタ・ヴァンパイアの討伐に行きます。
ただ、戻る途中で出会う魔獣は狩っていただきます、では行きましょう」
「やれ、やれ、最後まで厳しい先生だ」
エマとライアン、ガブリエルとアイリスは亜竜ダンジョンから村まで駆けた。
ガブリエルとアイリスの走力にあわせて駆けた。
余裕のあるエマとライアンは今後の方針について話し合った。
「村長とアイリス様は大丈夫だと思いますが、ティトゥワン様たちが心配です。
本来なら年長組の俺たちが年少組のティトゥワン様たちを守らないといけないのですが、今は無理ですから別の方法を考えましょう」
「信用できない連中を排除したうえで、常時館に匿えばいいのではないか?」
「それも良いのですが、後々の為に守り手を育てましょう」
「守り手を育てる、ああ、そうか、番犬か?」
「はい、カインとアベルが育てた猟犬たちの強さは知っておられますね?」
「ああ、知っている、君たちもだが、猟犬見習たちの強さにも驚かされた。
だが、魔獣の血が濃い猟犬たちが、自分よりも弱い人間の子供を守るか?」
「子供たちに命令させるのは無理ですが、強い村長とアイリス様が命じてティトゥワン様たちを守らせるなら、大丈夫だと思います」
「ライアンの言う通りですわ、父上様。
ですがライアンの言った事だけではありませんわ」
「他にもあるのか?」
「父上様と母上様が愛情を込めて育てれば、ティトゥワンたちの兄や姉として育ってくれますから、弟や妹を守るために戦ってくれます。
オオカミ系やイヌ系の魔獣は、リーダーや序列上位の者が序列下位の者を守りますから、安心してティトゥワンたち任せられます。
もっとも、今から調教を始めても三年はかかりますから、ティトゥワンが番犬たちを従わせるようになるかもしれません」
「そうだったらいいな、分かった、私とアイリスで番犬を育てよう。
だが、丁度良い子狼や子犬が村にはいないぞ?」
「どうせ三年計画なのです、少し待ちましょう。
カインとアベルの猟犬見習たちも子供を作れる年です」
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