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第三章
第87話:建国宣言
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炎竜はガタガタブツブツと文句は言いましたが、俺が驚くくらい一生懸命に、酒造りのための施設と農園を造ってくれました。
そこまでしてくれたら、俺も感謝の気持ちを持ちます。
お礼として、最高に酒精の強い、恐らくアルコール度数九十パーセント以上の蒸留酒を飲ませてあげました。
「くぉおおおおお、きく、きくぞ、こんな強烈な酒は初めて飲んだ!」
炎竜はそう言って強烈なコウシュウ・ウオッカを四杯立て続けに飲みましたが、突然倒れて大鼾をかきだしました。
その五月蠅さは、公害防止法以前の工業地帯のようでした。
人間の居住地域から離しておいてよかったです。
それでも、後で確認して分かったのですが、四十キロ以上離していたのに、魔獣や亜竜が争っている位の騒音が、八の村とかに聞こえて来ていたそうです。
現地に行った俺も大鼾の騒音を確認しましたので、間違いありません。
「炎竜様、二十日も泥酔されては農作業に大きな遅れが出てしまいます。
このままでは、毎日の晩酌に酒造りが間に合わなくなってしまいます」
「なに、ゆるさん、酒が飲めない日があるなど絶対に許さん!」
「では毎日ちゃんと起きて作物を促成栽培してください。
あの酒精の強い蒸留酒を造るには、これまでの発酵酒の五倍の材料が必要になるので、同じだけ飲まれるのなら十倍は働いてもらわないと、毎日は無理です」
日本酒だと二十パーセントまで、ワインだと十パーセント前後、ビールに至っては六パーセント前後です。
ワインを基準に考えるとしても、アルコール濃度を九十パーセントにまで高めるには、これまでの十倍は酒が必要になります。
「ぐぬぬぬぬぬ、あの酒は絶対に飲ませろ、飲ませないと暴れるぞ!」
「暴れたら、農地が駄目になり酒造りをする人間が死にます。
もう二度とあの酒が飲めなくなりますが、宜しいのですね?」
「ぐぬぬぬぬぬ、今までの十倍働けばあの酒が毎日飲めるのだな?!」
「寝ていた二十日を考えると百倍になりますが、宜しいですね?」
「……五倍は何とかなるが、百倍は幾ら何でも無理だ」
「では二十日も眠らなければいいのです。
先ずは魔力の続く限り農地と酒蔵を造り、促成栽培をして頂きます」
「……やったら酒を飲ませるのだな?」
「はい」
「しかたがない、やってやる」
炎竜はよくやってくれました。
百倍とまではいきませんが、これまでの二十倍働いてくれました。
細かい作業を色々とやらせたので、魔力はまだまだ残っていましたが、神経が疲れ切ってしまったようです。
「よく頑張ってくださいました、まず疲れを癒す甘くて爽やかな風味があるオレンジ・ワインから味わってください」
「なに、昨日酒を飲まさない気か?!」
「あの酒はとても強烈ですからね、最後に飲んでくださった方が美味しいですよ。
酒を味わうのなら、酒精が強すぎるウオッカよりもワインの方が良いです。
まずは、今日働いてくださった疲れを癒す美味しい酒を飲まれてください。
その方が美味しく愉しい酒になりますよ」
「お前がそこまで言うのなら一度だけ試してやる」
炎竜はそう言ってオレンジ・ワインから飲んでくれました。
俺が甘味や風味について口にしたから、味と香りを確かめるように、ゆっくりと飲んでくれました。
「ふむ、人間ごときに酒について言われるのは腹が立つが、確かに一気に飲むよりは、味わって飲んだ方が美味しい気がする」
「次にコムギ・ウオッカを飲んでいただきますが、一気飲みは止めてください。
強烈な酒精が舌を痺れさせ、喉を焼き、胃を痛めるのを愉しんでください」
「ふむ、一気に飲まないのか?」
「はい、酒精の強さを愉しんでください」
「おお、おお、おお、ゆっくりと飲んだ方が酒精の強さがよく分かる!」
「まだオレンジ・ワインは残っていますが、次は口直しにライス・ワインを飲んでみてください。
コムギ・ウオッカとの間にワインを飲んでいただく方が、酒精の強さを再確認できて愉しめますよ」
炎竜は俺の言う通り、新しい酒の愉しみ方に挑戦してくれました。
多くの種類をちゃんぽんさせる事で、激しく酔ってくれました。
量で言うと、酒蔵の八種ワインを十石甕で三杯、コムギ・ウオッカを十石甕で半杯飲んで泥酔してくれました。
ですが酒やアルコールの総量が前回のウオッカ三昧よりも少なかった所為か、三日で起きてくれました。
起きた後は何の文句も言わず、目一杯働いてくれました。
特に頑張ってくれたのが、超大型の蒸留所と酒保存所でした。
多種の酒をチャンポンするのが気に入ってくれたようです。
その分俺も忙しくなりましたが、しかたがありません。
酒の促成発酵醸造は俺にしかできないのです。
五十個の十石甕をコの字に並べた、炎竜が多くの酒を愉しめる、カウンターバーのような酒蔵に置いておく酒を全部造って運ばなければいけなかったのです。
炎竜は毎晩そこで晩酌を愉しむようになりました。
俺が勧めた塩や肴を食べながら飲む事も、愉しめるようになりました。
最近では、どの肴と酒を、どんな順番で飲むのが美味しいかを確かめています。
そんな日々が二百日も続くと、炎竜が最初の予定の二十倍も働いてくれるので、人口が百万人も増えました。
それも、将来五百万人になっても十分な農地を確保したうえにです。
「父上、母上、もう建国宣言してしまいませんか?」
「面倒事は嫌いだが、ここまで来たら宣言してもしなくても同じだな」
父上も腹をくくってくださいました。
「王国や連邦に所属している方が関税がかからなくて有利なのですが、私達がどうしても輸入しなければいけないような物はありません。
余った食糧も備蓄しておけばいいだけの事です、独立しましょう」
母上も、職人が増えた事による、領内産業の発達に決断してくださいました。
父上と母上だけでなく、家宰改め大公国の宰相となっていたフラヴィオにも相談しましたが、何の問題もないと言ってくれました。
譜代家臣達からも全く反対がなかったので、ゲヌキウス王国とカルプルニウス連邦に独立を宣言しましたが、文句を言うものは誰もいませんでした。
陰口は沢山言われているでしょうが、表立って言える者は誰もいませんでした。
誰だって亜竜の群れに領地を蹂躙されるのは嫌ですからね。
ゲヌキウス王国内とカルプルニウス連邦内にあった領地は、父上が建国されたアントニウス・マクネイア王国領となりました。
王都は炎竜砂漠内に定めましたが、譜代家臣や古参領民以外はいません。
ゲヌキウス王国とカルプルニウス連邦が知る我が国の国民は、ゲヌキウス王国内にあった領地とカルプルニウス連邦内にあった領地にいます。
世間が全く把握していない大半の国民、新たに移住させた百万人は東竜山脈と地竜森林の間にいます。
副都の一つはカルプルニウス連邦内の要衝に新造しました。
ゲヌキウス王国内の副都はウェストベリー侯爵領都に定めました。
領地が飛び飛びの細切れなので、知能の足りない愚かな野心家の目には、簡単に領地を奪えるかのように映るでしょう。
教皇に唆された馬鹿が襲ってきてくれたら面白いのですが、此方から戦争を仕掛けて大陸に騒乱を引き起こす気はありません。
そんな事をするよりは、炎竜の酒盛りに付き合ってウダウダ言い合っている方が、よほど面白いですから。
★★★★★★
作者です、第3章はこれで終わりにりします。
商業書籍化ができなければこれで完結になります。
最後にお気に入り登録をお願いします。
<(_ _)>
そこまでしてくれたら、俺も感謝の気持ちを持ちます。
お礼として、最高に酒精の強い、恐らくアルコール度数九十パーセント以上の蒸留酒を飲ませてあげました。
「くぉおおおおお、きく、きくぞ、こんな強烈な酒は初めて飲んだ!」
炎竜はそう言って強烈なコウシュウ・ウオッカを四杯立て続けに飲みましたが、突然倒れて大鼾をかきだしました。
その五月蠅さは、公害防止法以前の工業地帯のようでした。
人間の居住地域から離しておいてよかったです。
それでも、後で確認して分かったのですが、四十キロ以上離していたのに、魔獣や亜竜が争っている位の騒音が、八の村とかに聞こえて来ていたそうです。
現地に行った俺も大鼾の騒音を確認しましたので、間違いありません。
「炎竜様、二十日も泥酔されては農作業に大きな遅れが出てしまいます。
このままでは、毎日の晩酌に酒造りが間に合わなくなってしまいます」
「なに、ゆるさん、酒が飲めない日があるなど絶対に許さん!」
「では毎日ちゃんと起きて作物を促成栽培してください。
あの酒精の強い蒸留酒を造るには、これまでの発酵酒の五倍の材料が必要になるので、同じだけ飲まれるのなら十倍は働いてもらわないと、毎日は無理です」
日本酒だと二十パーセントまで、ワインだと十パーセント前後、ビールに至っては六パーセント前後です。
ワインを基準に考えるとしても、アルコール濃度を九十パーセントにまで高めるには、これまでの十倍は酒が必要になります。
「ぐぬぬぬぬぬ、あの酒は絶対に飲ませろ、飲ませないと暴れるぞ!」
「暴れたら、農地が駄目になり酒造りをする人間が死にます。
もう二度とあの酒が飲めなくなりますが、宜しいのですね?」
「ぐぬぬぬぬぬ、今までの十倍働けばあの酒が毎日飲めるのだな?!」
「寝ていた二十日を考えると百倍になりますが、宜しいですね?」
「……五倍は何とかなるが、百倍は幾ら何でも無理だ」
「では二十日も眠らなければいいのです。
先ずは魔力の続く限り農地と酒蔵を造り、促成栽培をして頂きます」
「……やったら酒を飲ませるのだな?」
「はい」
「しかたがない、やってやる」
炎竜はよくやってくれました。
百倍とまではいきませんが、これまでの二十倍働いてくれました。
細かい作業を色々とやらせたので、魔力はまだまだ残っていましたが、神経が疲れ切ってしまったようです。
「よく頑張ってくださいました、まず疲れを癒す甘くて爽やかな風味があるオレンジ・ワインから味わってください」
「なに、昨日酒を飲まさない気か?!」
「あの酒はとても強烈ですからね、最後に飲んでくださった方が美味しいですよ。
酒を味わうのなら、酒精が強すぎるウオッカよりもワインの方が良いです。
まずは、今日働いてくださった疲れを癒す美味しい酒を飲まれてください。
その方が美味しく愉しい酒になりますよ」
「お前がそこまで言うのなら一度だけ試してやる」
炎竜はそう言ってオレンジ・ワインから飲んでくれました。
俺が甘味や風味について口にしたから、味と香りを確かめるように、ゆっくりと飲んでくれました。
「ふむ、人間ごときに酒について言われるのは腹が立つが、確かに一気に飲むよりは、味わって飲んだ方が美味しい気がする」
「次にコムギ・ウオッカを飲んでいただきますが、一気飲みは止めてください。
強烈な酒精が舌を痺れさせ、喉を焼き、胃を痛めるのを愉しんでください」
「ふむ、一気に飲まないのか?」
「はい、酒精の強さを愉しんでください」
「おお、おお、おお、ゆっくりと飲んだ方が酒精の強さがよく分かる!」
「まだオレンジ・ワインは残っていますが、次は口直しにライス・ワインを飲んでみてください。
コムギ・ウオッカとの間にワインを飲んでいただく方が、酒精の強さを再確認できて愉しめますよ」
炎竜は俺の言う通り、新しい酒の愉しみ方に挑戦してくれました。
多くの種類をちゃんぽんさせる事で、激しく酔ってくれました。
量で言うと、酒蔵の八種ワインを十石甕で三杯、コムギ・ウオッカを十石甕で半杯飲んで泥酔してくれました。
ですが酒やアルコールの総量が前回のウオッカ三昧よりも少なかった所為か、三日で起きてくれました。
起きた後は何の文句も言わず、目一杯働いてくれました。
特に頑張ってくれたのが、超大型の蒸留所と酒保存所でした。
多種の酒をチャンポンするのが気に入ってくれたようです。
その分俺も忙しくなりましたが、しかたがありません。
酒の促成発酵醸造は俺にしかできないのです。
五十個の十石甕をコの字に並べた、炎竜が多くの酒を愉しめる、カウンターバーのような酒蔵に置いておく酒を全部造って運ばなければいけなかったのです。
炎竜は毎晩そこで晩酌を愉しむようになりました。
俺が勧めた塩や肴を食べながら飲む事も、愉しめるようになりました。
最近では、どの肴と酒を、どんな順番で飲むのが美味しいかを確かめています。
そんな日々が二百日も続くと、炎竜が最初の予定の二十倍も働いてくれるので、人口が百万人も増えました。
それも、将来五百万人になっても十分な農地を確保したうえにです。
「父上、母上、もう建国宣言してしまいませんか?」
「面倒事は嫌いだが、ここまで来たら宣言してもしなくても同じだな」
父上も腹をくくってくださいました。
「王国や連邦に所属している方が関税がかからなくて有利なのですが、私達がどうしても輸入しなければいけないような物はありません。
余った食糧も備蓄しておけばいいだけの事です、独立しましょう」
母上も、職人が増えた事による、領内産業の発達に決断してくださいました。
父上と母上だけでなく、家宰改め大公国の宰相となっていたフラヴィオにも相談しましたが、何の問題もないと言ってくれました。
譜代家臣達からも全く反対がなかったので、ゲヌキウス王国とカルプルニウス連邦に独立を宣言しましたが、文句を言うものは誰もいませんでした。
陰口は沢山言われているでしょうが、表立って言える者は誰もいませんでした。
誰だって亜竜の群れに領地を蹂躙されるのは嫌ですからね。
ゲヌキウス王国内とカルプルニウス連邦内にあった領地は、父上が建国されたアントニウス・マクネイア王国領となりました。
王都は炎竜砂漠内に定めましたが、譜代家臣や古参領民以外はいません。
ゲヌキウス王国とカルプルニウス連邦が知る我が国の国民は、ゲヌキウス王国内にあった領地とカルプルニウス連邦内にあった領地にいます。
世間が全く把握していない大半の国民、新たに移住させた百万人は東竜山脈と地竜森林の間にいます。
副都の一つはカルプルニウス連邦内の要衝に新造しました。
ゲヌキウス王国内の副都はウェストベリー侯爵領都に定めました。
領地が飛び飛びの細切れなので、知能の足りない愚かな野心家の目には、簡単に領地を奪えるかのように映るでしょう。
教皇に唆された馬鹿が襲ってきてくれたら面白いのですが、此方から戦争を仕掛けて大陸に騒乱を引き起こす気はありません。
そんな事をするよりは、炎竜の酒盛りに付き合ってウダウダ言い合っている方が、よほど面白いですから。
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