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第二章
第64話:宣戦布告
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父上は、俺と母上に対して無礼な交渉の使者を送ってきた連中に、怒りを表明する正使を送られました。
「人を人とも思わぬ、公王殿下と女侯王殿下に対する無礼な言動は絶対に許せない。
公王と公国の名誉にかけて宣戦を布告する」
「まて、待ってくれ。
余にそのような気はなかったのだ。
使者が無礼な言動をとったというのなら、処罰する」
「もはや問答無用でございます。
大切な嫡男と妻を悪し様に言われたインマヌエル侯王殿下は、大公王家を皆殺しにすると宣言され、亜竜軍団を率いて出陣されました。
私は早馬を駆けに駆けさせて、一日先にやって来ただけです」
「そんな、詫びる、余直々に詫びるから、何とかとりなしてくれ」
「愚かでございますね。
あのような無礼極まりない使者を送った時点で、大公王家の命運は尽きたのです。
殿下にできるのは、城に残って亜竜の餌になるか、先祖伝来の財宝を持って逃げるか、どちらを選ぶ事しかありません」
「そんな!」
ブランデン大公王国は父上が占領されました。
大公王だけでなく、エヴァ大公王家が父上を軽く見ていたのでしょう。
愚かとしか言いようがありません。
普段はとても温厚で心優しい父上ですが、戦いになると豹変されます。
戦場での甘さが味方を全滅させる愚かな行為だと、骨身に染みておられるのです。
戦いの場に望まれた父上は、俺よりも冷酷非情です。
泣いて謝る大公王を生きたまま亜竜の餌にされました。
残っていたエヴァ大公王家の者達を、全員餌にされました。
「無礼な言動で喧嘩を売って来たエヴァ大公王家は皆殺しにした。
文句のある奴はでてこい。
勇気のある者は好きだから、正々堂々の一騎打ちをしてやる。
誰も出てこないのなら、私を次の大公王と認めた事になる。
それでもいいのか?!」
「文句があるぞ!
卑怯にも亜竜の力で国を奪いやがって!
人対人、一対一ならお前のような卑怯者に負けるものか!」
馬鹿な大男が父上の挑発に乗ってノコノコと現れたそうです。
身長二メートル、体重は百二十キロはあったそうです。
そんな巨躯が、大剣を片手に戦いを挑んだのです。
本人が本当に一対一で戦う気だったのか、今では分かりません。
性根の腐った策士に踊らされただけなのかもしれません。
巨躯も卑怯下劣だったのか、愚かですが愛すべき好漢だったのか……
父上と巨躯が一対一で戦おうとしたその瞬間、どこかに隠れていた兵が十数人現われ、猛毒を塗った矢を放ってきたそうです。
そのような姑息な手に不覚を取る父上ではありません。
その程度の実力では、五十年戦争末期から動乱期を生き抜けていません。
毒矢を全て躱された時には、味方の毒矢を受けた巨躯が死んでいたそうです。
「楽に死ねると思うなよ。
黒幕を含めた関係者すべてを炙り出して、生まれてきた事を後悔するほどの地獄を味あわせてやるからな!」
父上は宣言通りにされました。
矢を放って来た連中を生きたまま捕らえ、傭兵団伝統の拷問を使われました。
余りに凄惨な方法なので、具体的な方法は省きますが、弓兵達は殺してくれと泣き喚き、全てを白状したそうです。
「実行犯が白状した、逃げなかったのが度胸があるからなのか、愚かなのかは、拷問を受ければ分かる事だ」
「ちがいます、冤罪です、私は何の関係もありません!」
父上は愚かな連中を次々と摘発されました。
実力差を全く理解できていない馬鹿が多過ぎたそうです。
神輿に担ぎ上げられていたのは、エヴァ大公王家の末裔だったそうです。
一族を名乗れないくらい昔に本家から分かれた連中が、本家のエヴァ大公王家が滅んだので、父上さえ殺せば大公王を名乗れると思ったのだそうです。
黒幕は、自分は策士だと思い込んでいた愚者だったそうです。
エヴァ大公王家の末裔を神輿に担げば、成功した時は裏から大公王国を牛耳れ、失敗した時は追及から逃れられると考えていたそうです。
エヴァ大公王家を滅ぼし、ブランデン大公王国占領された父上は、貧民を中心とした平民に食糧を配って味方につけられました。
母上が占領された四十侯国の収穫が間に合ったばかりか、近年まれにみる豊作だったので、食糧が想定していた以上に余裕です。
母上は、父上がブランデン大公王国占領したという俺の報告を受けられてから、某侯王家出身の騎士をテンベルク大公王国に送られました。
「貴国の使者は、畏れ多くもフェルディナンド公王殿下に喧嘩を売りました。
パトリツィア女侯王殿下の正統な戦いを、下劣な侵略戦争を罵りました。
大公王、貴方にその意思があったかどうかなど、もう関係ありません。
フェルディナンド公王殿下とパトリツィア女侯王殿下は、受けた恥を注ぐために宣戦布告をされました。
明日の昼には城壁前に布陣されるでしょう」
「まて、待たれよ、何の話か分からない」
「問答無用、宣戦布告は済ませましたから、もう用はありません」
「まて、待たぬか、余に対して無礼にも程があるぞ!
捕らえよ、この者を捕らえて捕虜にせよ」
「愚かな、好きになされるがよい。
宣戦布告の使者に選ばれた以上、愚者に殺される覚悟はしている。
だが、私を殺せば楽には死ねませんぞ。
エヴァ大公王家が亜竜の餌になって族滅したのを知らないのか?!」
「な、なんだと、エヴァ大公王家が族滅しただと?!」
「もう逃げるのに残された時間は半日もないぞ。
エヴァ大公王家は、最後の警告を無視して滅んだ。
一族を滅ぼしたくないのなら、今直ぐ逃げるのだな」
「何故余が逃げねばならぬ?!
下賤な者が遣り過ぎたのを、親切に注意してやったのだ!
感謝されこそすれ、戦争を仕掛けられる謂れなどないわ!」
「これ以上馬鹿の相手はできない。
私を殺したければさっさと殺せ。
その代わり、ブランデン大公王国ほど寛大な処置は望めないぞ。
ブランデン大公王国は使者を返して籠城したから、エヴァ大公王家の族滅だけですんだが、私を殺したら、家臣国民皆殺しにされるだろう」
「ふん、我が国には忠勇兼備の忠臣が数多くいる。
そのような脅しに屈する事はない。
もはや余の堪忍袋も切れた。
勝ち戦の前の生贄にちょうど良い、その者の首を刎ねよ」
「お待ちください、殿下はブロデン大公王国が滅んだのをお忘れか?!」
テンベルク大公王国の宰相が慌てて間に割って入ったそうです。
「ふん、あれはブロデン大公王国が腐っていたからだ。
マクネイア公国など大した国ではない。
その証拠に、ブロデン大公王国領やマクネイア公国領と決められた地の者達が、未だにツォレルン大公王を名乗っているではないか」
「それは食糧が確保できないからです。
占領地の民を餓死させないように、自重しているからだけです」
「愚かな、平民のために勝てる戦を中止するような者などいない。
耄碌したな、もうお前は用なしだ、そいつも一緒に生贄にしろ」
「私を殺すのはかまいませんが、使者を殺すのはお止めください。
正式な使者を殺すなど、まともな王のする事ではありませんぞ!」
「ふん、先にまともではない使者を送ってきた方が悪いのだ。
何をグズグズしている、さっさと二人を殺すのだ」
「宰相閣下、御覚悟!」
「ギャアアアアア」
大公王の側近が命令通りに宰相を殺そうとした直後。偉そうに玉座に座っていた大公王が絶叫を放ったそうです。
数多い大公王子の一人が、父である大公王に剣を突き刺したのだそうです。
「なにをする?!」
「謀叛だ、謀叛だぞ」
「騒ぐな、まずは陛下をお助けするのだ!」
大公王を刺したのは、宰相の娘が生んだ七番目の王子だったそうです。
騒ぎ立てたのは、一人目の大公王妃が生んだ最初の王子だったそうです。
殺された大公王は、気に入った女を身分にかかわらず王妃にしていたそうなのですが、飽きたら殺して次の女を王妃にする、人非人だったそうです。
そのような残虐な方法を使って、旧教の教えを守っていると言い張る、身勝手極まりない最低の大公王だったそうです。
「心ある者達は聞いてくれ、もうこの国は終わりだ。
ミラー大公王家に残された道は、逃げるか滅ぶかしかない。
そんな家に従って自分達まで滅ぶ必要はない。
私は家族を連れて逃げるから、お前達は好きにするがいい」
父の大公王を殺した第七王子は、祖父である宰相を助けて逃げようとしたそうですが、大公王の地位を狙う第一王子はジャマしようとしました。
ですが、普段からの鍛錬に歴然の差があったようで、一刀両断されたそうです。
「人を人とも思わぬ、公王殿下と女侯王殿下に対する無礼な言動は絶対に許せない。
公王と公国の名誉にかけて宣戦を布告する」
「まて、待ってくれ。
余にそのような気はなかったのだ。
使者が無礼な言動をとったというのなら、処罰する」
「もはや問答無用でございます。
大切な嫡男と妻を悪し様に言われたインマヌエル侯王殿下は、大公王家を皆殺しにすると宣言され、亜竜軍団を率いて出陣されました。
私は早馬を駆けに駆けさせて、一日先にやって来ただけです」
「そんな、詫びる、余直々に詫びるから、何とかとりなしてくれ」
「愚かでございますね。
あのような無礼極まりない使者を送った時点で、大公王家の命運は尽きたのです。
殿下にできるのは、城に残って亜竜の餌になるか、先祖伝来の財宝を持って逃げるか、どちらを選ぶ事しかありません」
「そんな!」
ブランデン大公王国は父上が占領されました。
大公王だけでなく、エヴァ大公王家が父上を軽く見ていたのでしょう。
愚かとしか言いようがありません。
普段はとても温厚で心優しい父上ですが、戦いになると豹変されます。
戦場での甘さが味方を全滅させる愚かな行為だと、骨身に染みておられるのです。
戦いの場に望まれた父上は、俺よりも冷酷非情です。
泣いて謝る大公王を生きたまま亜竜の餌にされました。
残っていたエヴァ大公王家の者達を、全員餌にされました。
「無礼な言動で喧嘩を売って来たエヴァ大公王家は皆殺しにした。
文句のある奴はでてこい。
勇気のある者は好きだから、正々堂々の一騎打ちをしてやる。
誰も出てこないのなら、私を次の大公王と認めた事になる。
それでもいいのか?!」
「文句があるぞ!
卑怯にも亜竜の力で国を奪いやがって!
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身長二メートル、体重は百二十キロはあったそうです。
そんな巨躯が、大剣を片手に戦いを挑んだのです。
本人が本当に一対一で戦う気だったのか、今では分かりません。
性根の腐った策士に踊らされただけなのかもしれません。
巨躯も卑怯下劣だったのか、愚かですが愛すべき好漢だったのか……
父上と巨躯が一対一で戦おうとしたその瞬間、どこかに隠れていた兵が十数人現われ、猛毒を塗った矢を放ってきたそうです。
そのような姑息な手に不覚を取る父上ではありません。
その程度の実力では、五十年戦争末期から動乱期を生き抜けていません。
毒矢を全て躱された時には、味方の毒矢を受けた巨躯が死んでいたそうです。
「楽に死ねると思うなよ。
黒幕を含めた関係者すべてを炙り出して、生まれてきた事を後悔するほどの地獄を味あわせてやるからな!」
父上は宣言通りにされました。
矢を放って来た連中を生きたまま捕らえ、傭兵団伝統の拷問を使われました。
余りに凄惨な方法なので、具体的な方法は省きますが、弓兵達は殺してくれと泣き喚き、全てを白状したそうです。
「実行犯が白状した、逃げなかったのが度胸があるからなのか、愚かなのかは、拷問を受ければ分かる事だ」
「ちがいます、冤罪です、私は何の関係もありません!」
父上は愚かな連中を次々と摘発されました。
実力差を全く理解できていない馬鹿が多過ぎたそうです。
神輿に担ぎ上げられていたのは、エヴァ大公王家の末裔だったそうです。
一族を名乗れないくらい昔に本家から分かれた連中が、本家のエヴァ大公王家が滅んだので、父上さえ殺せば大公王を名乗れると思ったのだそうです。
黒幕は、自分は策士だと思い込んでいた愚者だったそうです。
エヴァ大公王家の末裔を神輿に担げば、成功した時は裏から大公王国を牛耳れ、失敗した時は追及から逃れられると考えていたそうです。
エヴァ大公王家を滅ぼし、ブランデン大公王国占領された父上は、貧民を中心とした平民に食糧を配って味方につけられました。
母上が占領された四十侯国の収穫が間に合ったばかりか、近年まれにみる豊作だったので、食糧が想定していた以上に余裕です。
母上は、父上がブランデン大公王国占領したという俺の報告を受けられてから、某侯王家出身の騎士をテンベルク大公王国に送られました。
「貴国の使者は、畏れ多くもフェルディナンド公王殿下に喧嘩を売りました。
パトリツィア女侯王殿下の正統な戦いを、下劣な侵略戦争を罵りました。
大公王、貴方にその意思があったかどうかなど、もう関係ありません。
フェルディナンド公王殿下とパトリツィア女侯王殿下は、受けた恥を注ぐために宣戦布告をされました。
明日の昼には城壁前に布陣されるでしょう」
「まて、待たれよ、何の話か分からない」
「問答無用、宣戦布告は済ませましたから、もう用はありません」
「まて、待たぬか、余に対して無礼にも程があるぞ!
捕らえよ、この者を捕らえて捕虜にせよ」
「愚かな、好きになされるがよい。
宣戦布告の使者に選ばれた以上、愚者に殺される覚悟はしている。
だが、私を殺せば楽には死ねませんぞ。
エヴァ大公王家が亜竜の餌になって族滅したのを知らないのか?!」
「な、なんだと、エヴァ大公王家が族滅しただと?!」
「もう逃げるのに残された時間は半日もないぞ。
エヴァ大公王家は、最後の警告を無視して滅んだ。
一族を滅ぼしたくないのなら、今直ぐ逃げるのだな」
「何故余が逃げねばならぬ?!
下賤な者が遣り過ぎたのを、親切に注意してやったのだ!
感謝されこそすれ、戦争を仕掛けられる謂れなどないわ!」
「これ以上馬鹿の相手はできない。
私を殺したければさっさと殺せ。
その代わり、ブランデン大公王国ほど寛大な処置は望めないぞ。
ブランデン大公王国は使者を返して籠城したから、エヴァ大公王家の族滅だけですんだが、私を殺したら、家臣国民皆殺しにされるだろう」
「ふん、我が国には忠勇兼備の忠臣が数多くいる。
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勝ち戦の前の生贄にちょうど良い、その者の首を刎ねよ」
「お待ちください、殿下はブロデン大公王国が滅んだのをお忘れか?!」
テンベルク大公王国の宰相が慌てて間に割って入ったそうです。
「ふん、あれはブロデン大公王国が腐っていたからだ。
マクネイア公国など大した国ではない。
その証拠に、ブロデン大公王国領やマクネイア公国領と決められた地の者達が、未だにツォレルン大公王を名乗っているではないか」
「それは食糧が確保できないからです。
占領地の民を餓死させないように、自重しているからだけです」
「愚かな、平民のために勝てる戦を中止するような者などいない。
耄碌したな、もうお前は用なしだ、そいつも一緒に生贄にしろ」
「私を殺すのはかまいませんが、使者を殺すのはお止めください。
正式な使者を殺すなど、まともな王のする事ではありませんぞ!」
「ふん、先にまともではない使者を送ってきた方が悪いのだ。
何をグズグズしている、さっさと二人を殺すのだ」
「宰相閣下、御覚悟!」
「ギャアアアアア」
大公王の側近が命令通りに宰相を殺そうとした直後。偉そうに玉座に座っていた大公王が絶叫を放ったそうです。
数多い大公王子の一人が、父である大公王に剣を突き刺したのだそうです。
「なにをする?!」
「謀叛だ、謀叛だぞ」
「騒ぐな、まずは陛下をお助けするのだ!」
大公王を刺したのは、宰相の娘が生んだ七番目の王子だったそうです。
騒ぎ立てたのは、一人目の大公王妃が生んだ最初の王子だったそうです。
殺された大公王は、気に入った女を身分にかかわらず王妃にしていたそうなのですが、飽きたら殺して次の女を王妃にする、人非人だったそうです。
そのような残虐な方法を使って、旧教の教えを守っていると言い張る、身勝手極まりない最低の大公王だったそうです。
「心ある者達は聞いてくれ、もうこの国は終わりだ。
ミラー大公王家に残された道は、逃げるか滅ぶかしかない。
そんな家に従って自分達まで滅ぶ必要はない。
私は家族を連れて逃げるから、お前達は好きにするがいい」
父の大公王を殺した第七王子は、祖父である宰相を助けて逃げようとしたそうですが、大公王の地位を狙う第一王子はジャマしようとしました。
ですが、普段からの鍛錬に歴然の差があったようで、一刀両断されたそうです。
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