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第二章
第45話:緑化7とハルヴァ
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「驚いたな、本当に塩辛い雑草だぞ」
父上がとても驚いておられます。
それはそうでしょう、鹹水を汲み揚げる周囲の土地で成長した、タンブルウィードことオカヒジキなのです。
鹹水を汲み揚げる周囲の土地なんて、塩分が強すぎて植物が育たないのが普通なのですが、驚く事に育ってくれました。
育ってくれただけでなく、土地の塩分を吸収してくれているのです。
鹹水育ちオカヒジキが飼料に使えたら、別に塩を与えることなく家畜を育てられるようになります。
「このオカヒジキの根を台にして、トマトを接ぎ木してみようと思います」
「もう十分美味しく実ってくれたと言っていなかったか?」
父上の言われている通りです。
基本雨が降らない東竜山脈三〇〇〇メートル付近でトマトを作ると、こちらで水分量が調節できるので、小ぶりですがとても甘いトマトが育ちます。
更に塩分濃度が高い土壌で育てると、水分の吸収が少なくない、糖度八パーセント以上の果物のように甘いトマトが育つのです。
「はい、普通にとても美味しいトマトとして育ってくれました。
塩分濃度の高い畑でも育ってくれるのが確かめられました。
ですが、幾ら塩分に強いと言っても限界があります。
オカヒジキと併用しなくてもいいようにしたいのです」
オカヒジキも十分有用な、とても役に立ってくれる肥料です。
オカヒジキのお陰で塩分が高すぎて耕作に使えなかった土地が、豊かな牧草地や放牧地になってくれることでしょう。
「ふむ、果樹で成功したように、野菜も接ぎ木で強くする気なのだな?」
「はい、成功するか失敗するかは分かりませんが、やってみたいのです」
「いちいち俺に許可を貰いに来なくても良い。
ディドが次期領主であり、農業の責任者だ。
思うようにやればいい」
「ありがとうございます。
実るまで一気に育て。
地中の栄養素を取り込み、降り注ぐ陽光を最大限利用しろ。
ミネラルと糖分を実に蓄えろ。
塩分は葉に蓄えて地中の塩分を除去しろ。
必要な魔力は全て与えるから、限界まで成長しろ。
フォースィング・カルチヴェイション・オブ・トマト」
俺は父上の許可を受けて品種改良に励みました。
必要な魔力を全て与えると思い、乞い願ったからか、今回の成功率も100%で、とんでもなく美味しいトマトが実りました。
これで畑の塩分除去にオカヒジキを使わなくてすみます。
繁殖力が強いオカヒジキは、他の作物を育てる時に雑草になってしまうので、できれば荒野だけで使いたかったのです。
塩分除去トマトという新品種が創り出せたことで、我が家の農業が劇的に変化したのです。
既に成功していた農業革命ですが、更に一歩も二歩の前に進みました。
将来起こったであろう大問題を、起こる前に摘み取る事ができました。
これまで行っていた領地の農業は
1年目春:小麦
秋:クローバー(刈り取って畑にすき込む)
2年目春:クローバー(家畜の放牧)
秋:小麦
3年目春:大麦
秋:蕪
を基本としていました。
一般的に知られているノーフォーク農法は
1年目春:小麦
秋:蕪
2年目春:大麦
秋:クローバー(刈り取って畑にすき込む)
なのですが、土地があまりにもやせ過ぎている我が領地では、クローバーの連作が必要だったのです。
地竜森林の腐葉土を運んできて肥料にできるようになったので、その気になれば畑を休ませる事なく耕作する事ができます。
ですが、今の我が家には大量の家畜がいます。
特に巨体に合わせて大喰らいの中型草食亜竜がいるのです。
今は俺のゲートがあるから地竜森林を活用できますが、活用できなくなった時の事をを考えて、農業技術を開発しなければいけないのです。
1年目春:クローバー(家畜の放牧)
秋:クローバー(刈り取って乾燥させ焼いてから畑にすき込む)
2年目春:小麦(根などを掘り起こして乾燥させてから焼いて畑にすき込む)
秋:大麦(根などを掘り起こして乾燥させてから焼いて畑にすき込む)
3年目春:蕪
秋:トマト栽培(根などを掘り起こして乾燥させてから焼いて畑にすき込む)
この耕作方法だと塩分除去のオカヒジキを使わなくてすみます。
農地を豊かにするクローバーをオカヒジキにしなくてすみます。
以前の我が家なら、少しでも穀物を手に入れようとしたでしょう。
ですが今なら、穀物を減らして食卓を豊かにできます。
耕作地の外に自生するオカヒジキを家畜の飼料に利用できます。
増えた家畜のお陰で、乳製品、肉、毛織物が手に入るようになりました。
カロリーも栄養も、穀物やジビエ以外から手に入るようになったのです。
特に劇的に変わったのは、野菜と果物でしょうか。
これまでは他領から買うか、地竜森林に自生している果物や野草を手に入れるしか方法がなかったのに、領内の畑で作れるようになったのです。
魔力に任せて強制促成栽培したので、本当なら本格的に収穫できるまで十年以上かかるような果樹が、今年から収穫できているのです。
「フェルディナンド殿下、お菓子を作って頂けないでしょうか?」
すっかりお行儀がよくなったファニ姉上が、護衛騎士に守られながら俺が新品種研究をしている畑にやってこられました。
「母上や姉上達も楽しみにしておられます」
どこで俺が新しい菓子作りレシピを手に入れたのを聞かれたのでしょうか?
行商人のピエトロが、デーツを使って作るお菓子のレシピを売ってくれたのです。
王侯貴族にとって、客をもてなせる洗練された美味しいお菓子は、社交で有利に立つための切り札なのです。
大金を積んでも手に入れなければいけない重要な知識と技術なのです。
侯王となった以上、それに相応しいもてなしができなければいけません。
食事に関しては、亜竜肉という他者の追随を許さない圧倒的な手段があります。
デザートでさえ負けなければ圧勝できるのです。
だからこそ、信頼できる出入りの商人にデザートのレシピを依頼したのです。
その中で一番早く、最も欲しいレシピを持って来てくれたのがピエトロです。
「分かりました、直ぐに戻りますから、ファニ姉上は先に戻っていてください」
最近は素直になられたファニ姉上が文句も言わずに帰ってくれました。
悪態一つ吐かれなくなったファニ姉上に、少々寂しさを感じてしまいます。
急いで残っていた予定を終わらせて屋敷に戻りました。
料理人に声をかけて、俺が試作するのを覚えてもらいます。
彼らに任せた方が確実に美味しいデザートを作ってくれるのですが、恐ろしく貴重で高価な砂糖や食材を使うので、俺が責任者なっておかないと、失敗した時に彼らが困るのです。
用意した材料は
メイプルシロップ:4カップ
香草 :1つまみ
菜種油 :大さじ5
小麦粉 :1カップ
干果物 :好きなだけ(デーツ・桃・柿・葡萄・李・蜜柑など)
1:菜種油を入れてから小麦粉を咥えます。
2:焦げ付かせないように常に混ぜます。
3:小麦粉が狐色になるまで忍耐強く炒ります。
4:鍋にほんの少しずつメイプルシロップを加えて混ぜて行きます。
5:プディング状になるまでに焦がさないように煮詰めます。
6:プディング状になったら火を止めて休ませます。
7:飾り用の干果物を沢山乗せて完成です。
8:大きく作るのなら、中に干果物やナッツを加えます。
「おいしい、とても甘くて美味しいわ」
「硬く焼いたお菓子も良いですが、柔らかいお菓子も格別ですね」
「ふむ、俺はもう少し甘くない方が好きだな」
「……」
「甘さの加減は人それぞれですから、父上にはナッツを用意しましょうか?
それともドライフルーツをお持ちしましょうか?」
「そうだな、ドライフルーツを少しとナッツを多めにくれ」
「分かりました、用意してください」
給仕係に命知ると、優雅なのに早い足取りで取りに行ってくれました。
イングルウッド侯国 の、今は亡きヴェーン侯王家に仕えていただけあって、我が家で働いていた給仕係とは比較にもなりません。
ヴェーン侯王家を叩き潰し、半数以上のイングルウッド商家を潰したので、仕えていた者達が職を失ってしまいました。
悪質な商売をしていた営業職以外は、ほぼ全員我が家で召し抱えました。
そのお陰で、侯王家に相応しい陣容が整ってきました。
毒殺が怖いので、料理人だけは直接雇う事ができませんでした。
今は鉱山村の食堂で働いてもらっています。
もう少し行動を追って、信用できると分かってから召し抱える予定です。
商家に仕えていた料理人を召し抱えられたら、我が家の料理も劇的に改善できると思うのですが、どうでしょうか?
★★★★★★お願いです。
6月1日から始まった第9回歴史・時代小説大賞に「山田奉行所の支配組頭と伊勢講の御師宿檜垣屋」という作品で参加しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/672198375/142732328
読者賞を狙いたいので、試し読みとお気に入り登録をお願いします。
できましたら、投票もして頂けたらありがたいです。
父上がとても驚いておられます。
それはそうでしょう、鹹水を汲み揚げる周囲の土地で成長した、タンブルウィードことオカヒジキなのです。
鹹水を汲み揚げる周囲の土地なんて、塩分が強すぎて植物が育たないのが普通なのですが、驚く事に育ってくれました。
育ってくれただけでなく、土地の塩分を吸収してくれているのです。
鹹水育ちオカヒジキが飼料に使えたら、別に塩を与えることなく家畜を育てられるようになります。
「このオカヒジキの根を台にして、トマトを接ぎ木してみようと思います」
「もう十分美味しく実ってくれたと言っていなかったか?」
父上の言われている通りです。
基本雨が降らない東竜山脈三〇〇〇メートル付近でトマトを作ると、こちらで水分量が調節できるので、小ぶりですがとても甘いトマトが育ちます。
更に塩分濃度が高い土壌で育てると、水分の吸収が少なくない、糖度八パーセント以上の果物のように甘いトマトが育つのです。
「はい、普通にとても美味しいトマトとして育ってくれました。
塩分濃度の高い畑でも育ってくれるのが確かめられました。
ですが、幾ら塩分に強いと言っても限界があります。
オカヒジキと併用しなくてもいいようにしたいのです」
オカヒジキも十分有用な、とても役に立ってくれる肥料です。
オカヒジキのお陰で塩分が高すぎて耕作に使えなかった土地が、豊かな牧草地や放牧地になってくれることでしょう。
「ふむ、果樹で成功したように、野菜も接ぎ木で強くする気なのだな?」
「はい、成功するか失敗するかは分かりませんが、やってみたいのです」
「いちいち俺に許可を貰いに来なくても良い。
ディドが次期領主であり、農業の責任者だ。
思うようにやればいい」
「ありがとうございます。
実るまで一気に育て。
地中の栄養素を取り込み、降り注ぐ陽光を最大限利用しろ。
ミネラルと糖分を実に蓄えろ。
塩分は葉に蓄えて地中の塩分を除去しろ。
必要な魔力は全て与えるから、限界まで成長しろ。
フォースィング・カルチヴェイション・オブ・トマト」
俺は父上の許可を受けて品種改良に励みました。
必要な魔力を全て与えると思い、乞い願ったからか、今回の成功率も100%で、とんでもなく美味しいトマトが実りました。
これで畑の塩分除去にオカヒジキを使わなくてすみます。
繁殖力が強いオカヒジキは、他の作物を育てる時に雑草になってしまうので、できれば荒野だけで使いたかったのです。
塩分除去トマトという新品種が創り出せたことで、我が家の農業が劇的に変化したのです。
既に成功していた農業革命ですが、更に一歩も二歩の前に進みました。
将来起こったであろう大問題を、起こる前に摘み取る事ができました。
これまで行っていた領地の農業は
1年目春:小麦
秋:クローバー(刈り取って畑にすき込む)
2年目春:クローバー(家畜の放牧)
秋:小麦
3年目春:大麦
秋:蕪
を基本としていました。
一般的に知られているノーフォーク農法は
1年目春:小麦
秋:蕪
2年目春:大麦
秋:クローバー(刈り取って畑にすき込む)
なのですが、土地があまりにもやせ過ぎている我が領地では、クローバーの連作が必要だったのです。
地竜森林の腐葉土を運んできて肥料にできるようになったので、その気になれば畑を休ませる事なく耕作する事ができます。
ですが、今の我が家には大量の家畜がいます。
特に巨体に合わせて大喰らいの中型草食亜竜がいるのです。
今は俺のゲートがあるから地竜森林を活用できますが、活用できなくなった時の事をを考えて、農業技術を開発しなければいけないのです。
1年目春:クローバー(家畜の放牧)
秋:クローバー(刈り取って乾燥させ焼いてから畑にすき込む)
2年目春:小麦(根などを掘り起こして乾燥させてから焼いて畑にすき込む)
秋:大麦(根などを掘り起こして乾燥させてから焼いて畑にすき込む)
3年目春:蕪
秋:トマト栽培(根などを掘り起こして乾燥させてから焼いて畑にすき込む)
この耕作方法だと塩分除去のオカヒジキを使わなくてすみます。
農地を豊かにするクローバーをオカヒジキにしなくてすみます。
以前の我が家なら、少しでも穀物を手に入れようとしたでしょう。
ですが今なら、穀物を減らして食卓を豊かにできます。
耕作地の外に自生するオカヒジキを家畜の飼料に利用できます。
増えた家畜のお陰で、乳製品、肉、毛織物が手に入るようになりました。
カロリーも栄養も、穀物やジビエ以外から手に入るようになったのです。
特に劇的に変わったのは、野菜と果物でしょうか。
これまでは他領から買うか、地竜森林に自生している果物や野草を手に入れるしか方法がなかったのに、領内の畑で作れるようになったのです。
魔力に任せて強制促成栽培したので、本当なら本格的に収穫できるまで十年以上かかるような果樹が、今年から収穫できているのです。
「フェルディナンド殿下、お菓子を作って頂けないでしょうか?」
すっかりお行儀がよくなったファニ姉上が、護衛騎士に守られながら俺が新品種研究をしている畑にやってこられました。
「母上や姉上達も楽しみにしておられます」
どこで俺が新しい菓子作りレシピを手に入れたのを聞かれたのでしょうか?
行商人のピエトロが、デーツを使って作るお菓子のレシピを売ってくれたのです。
王侯貴族にとって、客をもてなせる洗練された美味しいお菓子は、社交で有利に立つための切り札なのです。
大金を積んでも手に入れなければいけない重要な知識と技術なのです。
侯王となった以上、それに相応しいもてなしができなければいけません。
食事に関しては、亜竜肉という他者の追随を許さない圧倒的な手段があります。
デザートでさえ負けなければ圧勝できるのです。
だからこそ、信頼できる出入りの商人にデザートのレシピを依頼したのです。
その中で一番早く、最も欲しいレシピを持って来てくれたのがピエトロです。
「分かりました、直ぐに戻りますから、ファニ姉上は先に戻っていてください」
最近は素直になられたファニ姉上が文句も言わずに帰ってくれました。
悪態一つ吐かれなくなったファニ姉上に、少々寂しさを感じてしまいます。
急いで残っていた予定を終わらせて屋敷に戻りました。
料理人に声をかけて、俺が試作するのを覚えてもらいます。
彼らに任せた方が確実に美味しいデザートを作ってくれるのですが、恐ろしく貴重で高価な砂糖や食材を使うので、俺が責任者なっておかないと、失敗した時に彼らが困るのです。
用意した材料は
メイプルシロップ:4カップ
香草 :1つまみ
菜種油 :大さじ5
小麦粉 :1カップ
干果物 :好きなだけ(デーツ・桃・柿・葡萄・李・蜜柑など)
1:菜種油を入れてから小麦粉を咥えます。
2:焦げ付かせないように常に混ぜます。
3:小麦粉が狐色になるまで忍耐強く炒ります。
4:鍋にほんの少しずつメイプルシロップを加えて混ぜて行きます。
5:プディング状になるまでに焦がさないように煮詰めます。
6:プディング状になったら火を止めて休ませます。
7:飾り用の干果物を沢山乗せて完成です。
8:大きく作るのなら、中に干果物やナッツを加えます。
「おいしい、とても甘くて美味しいわ」
「硬く焼いたお菓子も良いですが、柔らかいお菓子も格別ですね」
「ふむ、俺はもう少し甘くない方が好きだな」
「……」
「甘さの加減は人それぞれですから、父上にはナッツを用意しましょうか?
それともドライフルーツをお持ちしましょうか?」
「そうだな、ドライフルーツを少しとナッツを多めにくれ」
「分かりました、用意してください」
給仕係に命知ると、優雅なのに早い足取りで取りに行ってくれました。
イングルウッド侯国 の、今は亡きヴェーン侯王家に仕えていただけあって、我が家で働いていた給仕係とは比較にもなりません。
ヴェーン侯王家を叩き潰し、半数以上のイングルウッド商家を潰したので、仕えていた者達が職を失ってしまいました。
悪質な商売をしていた営業職以外は、ほぼ全員我が家で召し抱えました。
そのお陰で、侯王家に相応しい陣容が整ってきました。
毒殺が怖いので、料理人だけは直接雇う事ができませんでした。
今は鉱山村の食堂で働いてもらっています。
もう少し行動を追って、信用できると分かってから召し抱える予定です。
商家に仕えていた料理人を召し抱えられたら、我が家の料理も劇的に改善できると思うのですが、どうでしょうか?
★★★★★★お願いです。
6月1日から始まった第9回歴史・時代小説大賞に「山田奉行所の支配組頭と伊勢講の御師宿檜垣屋」という作品で参加しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/672198375/142732328
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