32 / 87
第二章
第32話:緑化3
しおりを挟む
「フラヴィオ、俺に何をさせたいのか、はっきり言ってください。
誤解や思い違いで間違った事をしてしまうと、大切な人を死なせてしまう事もあるのですよ!」
「分かっております、若。
今回は、若が思い上がっておられないのかを確かめさせていただきました。
強大な力を持たれているうえに、叙爵までされたのです。
私に確認されることなく、想いのままに振舞われるか確かめたかったのです」
「……性格が悪いというか、慎重というか」
「お褒めに預かり光栄でございます」
「後は、俺がフラヴィオに気を使うかどうかも確かめたかったのですか?」
「はい、あのような行商人に添え状を書いた事は、私の明らかな失態です。
それを叱責しないようでは、身贔屓が過ぎますから」
「俺が罰を与えなければいけない状況を作るなんて!
引退したいとでも言うのですか?」
「引退したくないとは言いませんが、残念ながら後進が育っておりません。
今回は、若と私の立場を明確に知らせるためでございます。
あとは、愚か者を誘いだす為でもあります」
「家臣領民の中に、俺とフラヴィオの上下を誤解するような馬鹿はいません。
他家に知らしめるためなのは分かっています。
八歳児に二番手を奪われたフラヴィオが謀叛するかもしれないと思って近寄ってくる、愚者を炙り出す為でしょう?」
「はい、丁度いい機会だと思いましたので」
「これでは、本当に俺がフラヴィオを叱責して罰を与えなければいけないではありませんか!
なんてことをさせるのですか!」
「これも次期当主の務めでございます。
それに、これだけではありません。
まだまだやっていただかなければいけない事があります」
「フラヴィオは本当に鬼ですね」
「何度も褒めていただき、お礼の言葉もありません」
「今思いつくのは、もう一度王都に行って脅す事。
今回の件で後ろ盾のなっていた貴族を殺す事。
カルプルニウス連邦まで家畜を届け、冷酷なだけでなく、慈愛の心も持っている事を広める事。
それくらいですが、他にもありますか?」
「慈愛の心を広めるのは、伯国の次期統治者、次期伯王だと知らしめるためです。
その事を自覚したうえで行動していただきたいです」
「偉ぶるのは苦手なのですが、やらなければいけませんか?」
「ぜひお願いいたします」
「それで、何時頃ここを立たなければいけません?
挿し木と接ぎ木は順調ですが、気を抜くと全て駄目になってしまいます。
今はとても大切な時期なのです」
「根回しをするのに、それなりの時間は必要でございます。
今回の件を王に知らせて糾弾しなければいけません。
仮にも我が家は独立した準王国なのでございます。
一貴族が商人を使って騙そうとしてよい軽い存在ではございません」
「王に、あいつの後ろ盾になっていた貴族の処分を要求するのですか?」
「はい、ですが、ただ要求するだけではありません。
王の処分が納得できなければ、伯国の威信にかけて自ら処罰する。
そう強く脅かすのでございます」
「やれやれ、俺は静かに領地開拓をしたいのですがねぇ」
「残念ながら、愚か者が多いので、定期的にこのような事が起こると思われます」
「あの馬鹿商人を処刑して、後ろ盾になっていた貴族を処刑してもですか?」
「ウェストベリー侯爵を殺さなかった事で、甘く見られているようです。
何をやっても、殺される事も降爵される事もない。
現実の困窮を分かっていない愚かな貴族が多いようです」
「本当にこの国は駄目な貴族ばかりですね。
これでは直ぐに隣国に攻め滅ぼされるでしょうね」
「いえ、近隣諸国の貴族も馬鹿ばかりでございます」
「馬鹿がこの混乱の世を生き残ってきたというのですか?」
「戦国乱世だったからこそ、武力と生命力が優先されたのです。
少々知恵の回る者でも、圧倒的な武力の前には無力だったのです。
家臣領民も、知恵のある者よりも武力の有る者を頼ったのです」
そうかもしれませんね。
口にはできませんが、力こそが全てだったから、父上達は生き延びられた。
そうでなかったら、数の暴力で皆殺しにされていたかもしれません。
「分かりました、圧倒的な武力と生命力を見せつけてやります。
ですが、どうしてもやらなければいけない時までは好きにさせてもらいます」
「結構でございます。
炎竜砂漠と東竜山脈の緑化は我が家の悲願でございます。
それを可能とされた若には、できるだけ研究に時間を使っていただきたいです」
「よくそのような事が口にできますね。
今俺に王都経由でカルプルニウス連邦に行けと言ったのは、他の誰でもないフラヴィオ自身ですよ」
「愚かで身勝手な王侯貴族が、若の実力を見誤った所為で、我が家は大損です。
緑化に専念して頂きたい若に、余計な役目をして頂かねばなりません」
「まあ、そうですね、全部連中が悪いのであって、フラヴィオが悪い訳ではありませんでしたね」
「ご理解していただき、感謝の言葉もありません」
フラヴィオとじゃれ合いのようなやり取りをして、八の村に戻りました。
接ぎ木をした樹木の変化を観察記録しなければいけません。
村ごとに専任担当者を決めてやってもらっていますが、自分でやりたいのです。
塩分濃度が違うと思われる畑だけではなく、村の外でも実験しています。
どの台木を使うのが一番いいのか、確かめなければいけないのです。
優先順位は、我が家にとって必要かどうかです。
他家に優良であっても、我が家で使えなければ何の意味もありません。
条件によって優良さが違う事など分かっています。
畑で定期的に耕作するのに一番良い台木と接ぎ木の組み合わせ、村外の荒地に捨て播きして一番良い台木と接ぎ木の組み合わせは違います。
畑の使い方も、六圃輪栽式農法のどの段階で使うかによって良い組み合わせが違ってきますので、膨大な数の実験と記録が必要になります。
緑肥として最高の組み合わせを見つける事ができたら、この貧しい大地でも、クローバーを使わなければいけない期間を減らせるかもしれません。
ヘアリーベッチは、畑の窒素を固定してくれるだけでなく、畑の栄養分を奪う雑草が生えないようにしてくれます。
ヘアリーベッチをトマトやナス、ピーマンやキュウリなどの夏野菜を植える一カ月前にすき込めば、とても良い栄養になってくれます。
ヒマワリは、土壌に含まれる不溶性リン酸を可溶性リン酸に変えてくれるので、次に植える作物が吸収できるようになります。
寒暖の差が激しい東竜山脈三千メートル付近にある我が家の畑は、気温が低くリン酸が吸収され難いので、ヒマワリはとても役に立つのです。
ライ麦は、根野菜の大敵であるキタネグサレセンチュウやキタネコブセンチュウなどの害虫を抑制してくれます。
根菜を植えた後にライ麦を作付けすれば、緑肥を植えた後で再び根菜を植える事ができるので、六圃輪栽式農法で収穫できる食物量を増やせるのです。
マリーゴールドも、葉茎に含まれる成分が、サツマイモネコブセンチュウやキタネグサレセンチュウを抑制してくれます。
花も美しいので、領民の心を癒してくれます。
花が美しい緑肥にはレンゲもあります。
レンゲは窒素含有量が非常に多く、すき込むと化学肥料使用に匹敵する窒素を畑に与えてくれます。
チャガラシは、辛味成分であるグルコシノレートを多く含んでいるので、土壌殺菌効果が高いです。
チャガラシをすき込むとガスを発生させてくれます。
そのガスが土壌中の病原菌や害虫を減らし、ジャガイモなら黒あざ病、ホウレンソウなら萎凋病、トマトなら青枯病を減らしてくれるのです。
緑肥用のトウモロコシは、吸肥力がとても強力で、すき込んだ後の肥料としては最適なのです。
我が領に最適な点は、日光があれば場所を選ばず生育できる事です。
今は我が領地の気候土壌条件に合わなくても、台木と接ぎ木を利用したら、栽培できるようになるかもしれません。
ですが、俺は欲深いので、一石二鳥を狙っています。
台木と接ぎ木の両方の成分、効果を表してくれる新品種の開発を目指しています。
地中を殺菌して病害虫を抑制する効果があって、不溶性リン酸を可溶性リン酸に変え、化学肥料使用に匹敵する窒素を畑に与えてくれたら最高です。
その上で、耐塩性に優れ、土壌の塩分を吸収してくれたらいう事ありませんが、俺もそこまで欲張りではありません。
まずは台木と接ぎ木の二特徴を有した新品種を創り出す事が目標です!
誤解や思い違いで間違った事をしてしまうと、大切な人を死なせてしまう事もあるのですよ!」
「分かっております、若。
今回は、若が思い上がっておられないのかを確かめさせていただきました。
強大な力を持たれているうえに、叙爵までされたのです。
私に確認されることなく、想いのままに振舞われるか確かめたかったのです」
「……性格が悪いというか、慎重というか」
「お褒めに預かり光栄でございます」
「後は、俺がフラヴィオに気を使うかどうかも確かめたかったのですか?」
「はい、あのような行商人に添え状を書いた事は、私の明らかな失態です。
それを叱責しないようでは、身贔屓が過ぎますから」
「俺が罰を与えなければいけない状況を作るなんて!
引退したいとでも言うのですか?」
「引退したくないとは言いませんが、残念ながら後進が育っておりません。
今回は、若と私の立場を明確に知らせるためでございます。
あとは、愚か者を誘いだす為でもあります」
「家臣領民の中に、俺とフラヴィオの上下を誤解するような馬鹿はいません。
他家に知らしめるためなのは分かっています。
八歳児に二番手を奪われたフラヴィオが謀叛するかもしれないと思って近寄ってくる、愚者を炙り出す為でしょう?」
「はい、丁度いい機会だと思いましたので」
「これでは、本当に俺がフラヴィオを叱責して罰を与えなければいけないではありませんか!
なんてことをさせるのですか!」
「これも次期当主の務めでございます。
それに、これだけではありません。
まだまだやっていただかなければいけない事があります」
「フラヴィオは本当に鬼ですね」
「何度も褒めていただき、お礼の言葉もありません」
「今思いつくのは、もう一度王都に行って脅す事。
今回の件で後ろ盾のなっていた貴族を殺す事。
カルプルニウス連邦まで家畜を届け、冷酷なだけでなく、慈愛の心も持っている事を広める事。
それくらいですが、他にもありますか?」
「慈愛の心を広めるのは、伯国の次期統治者、次期伯王だと知らしめるためです。
その事を自覚したうえで行動していただきたいです」
「偉ぶるのは苦手なのですが、やらなければいけませんか?」
「ぜひお願いいたします」
「それで、何時頃ここを立たなければいけません?
挿し木と接ぎ木は順調ですが、気を抜くと全て駄目になってしまいます。
今はとても大切な時期なのです」
「根回しをするのに、それなりの時間は必要でございます。
今回の件を王に知らせて糾弾しなければいけません。
仮にも我が家は独立した準王国なのでございます。
一貴族が商人を使って騙そうとしてよい軽い存在ではございません」
「王に、あいつの後ろ盾になっていた貴族の処分を要求するのですか?」
「はい、ですが、ただ要求するだけではありません。
王の処分が納得できなければ、伯国の威信にかけて自ら処罰する。
そう強く脅かすのでございます」
「やれやれ、俺は静かに領地開拓をしたいのですがねぇ」
「残念ながら、愚か者が多いので、定期的にこのような事が起こると思われます」
「あの馬鹿商人を処刑して、後ろ盾になっていた貴族を処刑してもですか?」
「ウェストベリー侯爵を殺さなかった事で、甘く見られているようです。
何をやっても、殺される事も降爵される事もない。
現実の困窮を分かっていない愚かな貴族が多いようです」
「本当にこの国は駄目な貴族ばかりですね。
これでは直ぐに隣国に攻め滅ぼされるでしょうね」
「いえ、近隣諸国の貴族も馬鹿ばかりでございます」
「馬鹿がこの混乱の世を生き残ってきたというのですか?」
「戦国乱世だったからこそ、武力と生命力が優先されたのです。
少々知恵の回る者でも、圧倒的な武力の前には無力だったのです。
家臣領民も、知恵のある者よりも武力の有る者を頼ったのです」
そうかもしれませんね。
口にはできませんが、力こそが全てだったから、父上達は生き延びられた。
そうでなかったら、数の暴力で皆殺しにされていたかもしれません。
「分かりました、圧倒的な武力と生命力を見せつけてやります。
ですが、どうしてもやらなければいけない時までは好きにさせてもらいます」
「結構でございます。
炎竜砂漠と東竜山脈の緑化は我が家の悲願でございます。
それを可能とされた若には、できるだけ研究に時間を使っていただきたいです」
「よくそのような事が口にできますね。
今俺に王都経由でカルプルニウス連邦に行けと言ったのは、他の誰でもないフラヴィオ自身ですよ」
「愚かで身勝手な王侯貴族が、若の実力を見誤った所為で、我が家は大損です。
緑化に専念して頂きたい若に、余計な役目をして頂かねばなりません」
「まあ、そうですね、全部連中が悪いのであって、フラヴィオが悪い訳ではありませんでしたね」
「ご理解していただき、感謝の言葉もありません」
フラヴィオとじゃれ合いのようなやり取りをして、八の村に戻りました。
接ぎ木をした樹木の変化を観察記録しなければいけません。
村ごとに専任担当者を決めてやってもらっていますが、自分でやりたいのです。
塩分濃度が違うと思われる畑だけではなく、村の外でも実験しています。
どの台木を使うのが一番いいのか、確かめなければいけないのです。
優先順位は、我が家にとって必要かどうかです。
他家に優良であっても、我が家で使えなければ何の意味もありません。
条件によって優良さが違う事など分かっています。
畑で定期的に耕作するのに一番良い台木と接ぎ木の組み合わせ、村外の荒地に捨て播きして一番良い台木と接ぎ木の組み合わせは違います。
畑の使い方も、六圃輪栽式農法のどの段階で使うかによって良い組み合わせが違ってきますので、膨大な数の実験と記録が必要になります。
緑肥として最高の組み合わせを見つける事ができたら、この貧しい大地でも、クローバーを使わなければいけない期間を減らせるかもしれません。
ヘアリーベッチは、畑の窒素を固定してくれるだけでなく、畑の栄養分を奪う雑草が生えないようにしてくれます。
ヘアリーベッチをトマトやナス、ピーマンやキュウリなどの夏野菜を植える一カ月前にすき込めば、とても良い栄養になってくれます。
ヒマワリは、土壌に含まれる不溶性リン酸を可溶性リン酸に変えてくれるので、次に植える作物が吸収できるようになります。
寒暖の差が激しい東竜山脈三千メートル付近にある我が家の畑は、気温が低くリン酸が吸収され難いので、ヒマワリはとても役に立つのです。
ライ麦は、根野菜の大敵であるキタネグサレセンチュウやキタネコブセンチュウなどの害虫を抑制してくれます。
根菜を植えた後にライ麦を作付けすれば、緑肥を植えた後で再び根菜を植える事ができるので、六圃輪栽式農法で収穫できる食物量を増やせるのです。
マリーゴールドも、葉茎に含まれる成分が、サツマイモネコブセンチュウやキタネグサレセンチュウを抑制してくれます。
花も美しいので、領民の心を癒してくれます。
花が美しい緑肥にはレンゲもあります。
レンゲは窒素含有量が非常に多く、すき込むと化学肥料使用に匹敵する窒素を畑に与えてくれます。
チャガラシは、辛味成分であるグルコシノレートを多く含んでいるので、土壌殺菌効果が高いです。
チャガラシをすき込むとガスを発生させてくれます。
そのガスが土壌中の病原菌や害虫を減らし、ジャガイモなら黒あざ病、ホウレンソウなら萎凋病、トマトなら青枯病を減らしてくれるのです。
緑肥用のトウモロコシは、吸肥力がとても強力で、すき込んだ後の肥料としては最適なのです。
我が領に最適な点は、日光があれば場所を選ばず生育できる事です。
今は我が領地の気候土壌条件に合わなくても、台木と接ぎ木を利用したら、栽培できるようになるかもしれません。
ですが、俺は欲深いので、一石二鳥を狙っています。
台木と接ぎ木の両方の成分、効果を表してくれる新品種の開発を目指しています。
地中を殺菌して病害虫を抑制する効果があって、不溶性リン酸を可溶性リン酸に変え、化学肥料使用に匹敵する窒素を畑に与えてくれたら最高です。
その上で、耐塩性に優れ、土壌の塩分を吸収してくれたらいう事ありませんが、俺もそこまで欲張りではありません。
まずは台木と接ぎ木の二特徴を有した新品種を創り出す事が目標です!
5
お気に入りに追加
375
あなたにおすすめの小説
神に愛されたちびっ子賢者はモフモフと共に魔法学院へ通うようです
ケンノジ
ファンタジー
魔法のすべてを極めた男がいた。
賢者と呼ばれた彼は病床で、「次の人生は自分の技術や知識を魔法界に広め世界に貢献しよう」と決め、死に際に魔法を使い転生する。
神すらも認める存在である賢者に、神はその志の助けとなるよう特別な力を与えた。
能力がさらに強化された賢者は、五〇〇年後の世界で新しい人生をスタートさせる。
だが現代は、貴族の血筋でなければ魔法は使えないことになっていた。
その常識を否定するため、自分の技術や知識を広めるために、たった5歳の村人の子供は王立魔法学院に入学する。
ところが、魔法技術は発展するどころか退化しており、当時では常識とされる知識すらなく
逆に非常識扱いされる賢者は、劣等生と認定されてしまう。
だが他人の評価をまったく気にしない。
気ままに力を行使し、規格外の魔法能力で周囲を圧倒するのだった。
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです
矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。
それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。
本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。
しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。
『シャロンと申します、お姉様』
彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。
家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。
自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。
『……今更見つかるなんて……』
ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。
これ以上、傷つくのは嫌だから……。
けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。
――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。
◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです(_ _)
※感想欄のネタバレ配慮はありません。
※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっておりますm(_ _;)m
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
妹のせいで婚約破棄になりました。が、今や妹は金をせびり、元婚約者が復縁を迫ります。
百谷シカ
恋愛
妹イアサントは王子と婚約している身でありながら騎士と駆け落ちした。
おかげでドルイユ伯爵家は王侯貴族から無視され、孤立無援。
「ふしだらで浅はかな血筋の女など、息子に相応しくない!」
姉の私も煽りをうけ、ルベーグ伯爵家から婚約破棄を言い渡された。
愛するジェルマンは駆け落ちしようと言ってくれた。
でも、妹の不祥事があった後で、私まで駆け落ちなんてできない。
「ずっと愛しているよ、バルバラ。君と結ばれないなら僕は……!」
祖父母と両親を相次いで亡くし、遺された私は爵位を継いだ。
若い女伯爵の統治する没落寸前のドルイユを救ってくれたのは、
私が冤罪から助けた貿易商の青年カジミール・デュモン。
「あなたは命の恩人です。俺は一生、あなたの犬ですよ」
時は経ち、大商人となったデュモンと私は美しい友情を築いていた。
海の交易権を握ったドルイユ伯爵家は、再び社交界に返り咲いた。
そして、婚期を逃したはずの私に、求婚が舞い込んだ。
「強く美しく気高いレディ・ドルイユ。私の妻になってほしい」
ラファラン伯爵オーブリー・ルノー。
彼の求婚以来、デュモンの様子が少しおかしい。
そんな折、手紙が届いた。
今ではルベーグ伯爵となった元婚約者、ジェルマン・ジリベールから。
「会いたい、ですって……?」
=======================================
(他「エブリスタ」様に投稿)
『下品注意』URAGAWAのOMOTE。
MEIRO
大衆娯楽
※タグを見てのとおり、下品な描写があるので、注意して読んでいただけたらと思います。──法外な金を扱う賭け事が、行われているらしい。あるところに、そんな噂が流れている洋館があった。だというのに、その洋館に足を運ぶ者といえば、そのほとんどが、なぜかお金に困ったものたちだと囁かれているだから、不穏な話である。噂の真偽はさておき、それが本当だったとして、そういった者たちはいったい、どのような末路をたどっていくのだろうか。それは、館を訪れたものしか知らないのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる