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第一章
第17話:嘔吐
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私の言葉を聞いて、御義父上様がうれしそうに笑われています。
何とか嫁として合格点の受け答えができたようです。
御義父上様から見れば、普段は誰も評価してくれない、本当はとても大切な、裏方仕事を評価してもらったと思われたのかもしれません。
でも、主人が戦場に出ている領地の留守を預かるのも、何時奇襲があるかもしれない背後を守るのも、とても大切な役目です。
本当に心から信頼する相手にしか任せられない、重大な役目なのですから。
「うっぐっ!」
不意に、一気に吐き気がして、胃の中身が喉にせり上がってきます。
御義父上様の前で嘔吐するなど、絶対にできません!
本当ならちゃんと挨拶して席を外さないといけませんが、そんな余裕など全くありませんので、無礼を承知で人目のない所に向かいました。
私の予想外の行動に、侍女達もとても驚いた事でしょうが、流石に護衛も兼ねた戦闘侍女です、一瞬の遅滞もなく後に従ってくれました。
「奥方様、大丈夫でございますか?
直ぐに侍医を呼んでまいりますから、しばらくお待ちください」
侍女の一人が本当に心配そうにしてくれています。
背中を優しくさすってくれている侍女もいます。
ようやく落ち着いて振り返ると、侍女の一人がいません。
彼女が侍医を呼びに行ってくれたのでしょう。
少し吐き気がしただけで侍医を呼ぶのは大袈裟だと思うのです。
でも、そうしなければ、侍女達がルーカスに激しく叱責されるのが分かっていますから、そのままにしておくしかありません。
「奥方様、椅子に座られてください」
侍女の一人が手早く椅子を用意してくれています。
あまりに大袈裟に心配してくれるので、内心苦笑してしまいます。
ですが、彼女達に心配させたのは間違いないのですから、素直に好意に甘えます。
へんに逆らっては、彼女達の真心を踏み躙ることになります。
それに、確かに、大事にしなければいけない事かもしれません。
絶対とは限らないのですが、少し思い当たる事があるのです。
バッーン
「エルサ、エルサ、エルサ、あああ、無事だったかエルサ。
何をしている、直ぐに寝室に運ばないか!
いや、いい、俺が抱いて運ぶから、お前達はドアを開けろ」
家臣達と大切な軍議をしていたはずのルーカスが、大きな音を立てて自らドアを開け、血相を変えて部屋に入ってきました。
よくまあ、この速さでここまでこれたものです。
侍女達を叱ったかと思うと、有無を言わせず私をお姫様抱っこしてくれます。
このまま寝室に運んでくれるのでしょう。
侍医が大丈夫と言っても、軍議も謁見も放り出して、私の側につきっきりで看病してくれるのでしょうね。
愛されているのはうれしいのですが、愛され過ぎて少し重いです。
何とか嫁として合格点の受け答えができたようです。
御義父上様から見れば、普段は誰も評価してくれない、本当はとても大切な、裏方仕事を評価してもらったと思われたのかもしれません。
でも、主人が戦場に出ている領地の留守を預かるのも、何時奇襲があるかもしれない背後を守るのも、とても大切な役目です。
本当に心から信頼する相手にしか任せられない、重大な役目なのですから。
「うっぐっ!」
不意に、一気に吐き気がして、胃の中身が喉にせり上がってきます。
御義父上様の前で嘔吐するなど、絶対にできません!
本当ならちゃんと挨拶して席を外さないといけませんが、そんな余裕など全くありませんので、無礼を承知で人目のない所に向かいました。
私の予想外の行動に、侍女達もとても驚いた事でしょうが、流石に護衛も兼ねた戦闘侍女です、一瞬の遅滞もなく後に従ってくれました。
「奥方様、大丈夫でございますか?
直ぐに侍医を呼んでまいりますから、しばらくお待ちください」
侍女の一人が本当に心配そうにしてくれています。
背中を優しくさすってくれている侍女もいます。
ようやく落ち着いて振り返ると、侍女の一人がいません。
彼女が侍医を呼びに行ってくれたのでしょう。
少し吐き気がしただけで侍医を呼ぶのは大袈裟だと思うのです。
でも、そうしなければ、侍女達がルーカスに激しく叱責されるのが分かっていますから、そのままにしておくしかありません。
「奥方様、椅子に座られてください」
侍女の一人が手早く椅子を用意してくれています。
あまりに大袈裟に心配してくれるので、内心苦笑してしまいます。
ですが、彼女達に心配させたのは間違いないのですから、素直に好意に甘えます。
へんに逆らっては、彼女達の真心を踏み躙ることになります。
それに、確かに、大事にしなければいけない事かもしれません。
絶対とは限らないのですが、少し思い当たる事があるのです。
バッーン
「エルサ、エルサ、エルサ、あああ、無事だったかエルサ。
何をしている、直ぐに寝室に運ばないか!
いや、いい、俺が抱いて運ぶから、お前達はドアを開けろ」
家臣達と大切な軍議をしていたはずのルーカスが、大きな音を立てて自らドアを開け、血相を変えて部屋に入ってきました。
よくまあ、この速さでここまでこれたものです。
侍女達を叱ったかと思うと、有無を言わせず私をお姫様抱っこしてくれます。
このまま寝室に運んでくれるのでしょう。
侍医が大丈夫と言っても、軍議も謁見も放り出して、私の側につきっきりで看病してくれるのでしょうね。
愛されているのはうれしいのですが、愛され過ぎて少し重いです。
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