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第2章

第17話:見積り

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 普段23時に寝ているので、3時まで起きているのは辛かった。
 家電量販店が開店する10時に合わせて、9時前に起きたので寝起きは良かった。
 普段よりも睡眠時間がずれたので、ほんの少しだけだるかった。

 家電量販店に行く前に、見落としや勘違いが無いかネットで再確認した。
 軒下に取り付けて伸ばせる、雨でもオープンテラスで飲食できるテントを中心に調べて、無料見積もりをお願いした。

 刺客に襲われた時に車を失っているし、今の立場で交通事故を起こす訳にはいかないので、タクシーを呼んで家電量販店に向かった。
 家電量販店が仲介しているリフォーム会社に、無料見積もりもお願いしてみた。

 間口4000mm×出巾8000mmが最大だったので、リョクリュウの身体を全部雨風から守る事はできないが、アルミの支柱とアルミ屋根骨格が853300円、テント生地が414400円で買える事が分かった。

 色んな大きさの説明をしてもらったが、丈夫なのはアルミ支柱を多くする方法で、割高にはなるが、支柱を多くしたオーニングテントを数多く並べる事だった。
 だがそれでは、支柱が邪魔になってリョクリュウの巨体がテントの下に入れない。

 最小の支柱で間口と出巾が1番広くとれるタイプ、方法を探した。
 それが、間口4000mm×出巾8000mmを5つ並べて、間口2000mm×出巾8000mmにする事だった。

 見方を変えれば、間口20m×奥行8m×高さ4・5mの空間を確保できる。
 アルミの支柱を固定するコンクリート基礎を高くすれば、もっと高くできる。
 5つのオーニングテントに少しだけ高低差をつければ、雨も奇麗に流れる。

 即決しようかとも思ったが、リョクリュウと相談してからの方が良いと思って、税理士や秘書と相談してから返事すると言って帰ってきた。

 これでも国会議員だから、東京の議員会館には秘書がいる。
 政策担当秘書、公設第一秘書・公設第二秘書の3人だ。
 連立を組む事になった政権与党第一党から、優秀な人材を紹介してもらった。

 権力を握りたい奴なら、与党第一党のスパイだと警戒するだろう。
 野党第一党からも秘書を紹介してもらって、何時でも連立を解消して、新たな政権与党を結成するぞと脅しをかけるだろう。

 ただ、俺にそんな野心は全く無い、権力争いなど面倒なだけだ。
 そう言う動きをしている党員もいるが、勝手にすればいい。
 ただ1つの公約、テレビの放映権を入札制にできれば良い。

 次の選挙で立候補する気もないので、党員には好きにやってもらっている。
 俺を党首から引きずり下ろそうと画策している奴もいるが、好きにすればいい。

 野党と組んで自分が党首になる気の奴もいるが、愚かすぎて笑える。
 党を大きくして政権与党第一党を目指す奴もいる。
 井戸の中の蛙、自分の能力を知らないのにも程がある。

 大人しい奴でも、今の政権与党第一党に近づいて次の選挙に備えている。
 俺が次の選挙に出ないと分かっているから、当然の行動だろう。
 頑張って再就職の準備をしていてくれ、罪悪感がなくなって助かる。

 借家に戻ってから、音声入力でパソコンを操作できるようにした。
 何度もやり直して、ようやくうまく動くようになった。
 安心できたからか、いつのまにか寝てしまっていた。

「キヨシ、きたぞ」

「うっおっ、リョクリュウか?」

 寝ている所に声をかけられて飛び起きてしまった。
 リョクリュウがいつ来てもいいように、山側の大窓は開けたままだ。
 盗撮者はもちろん、刺客も入り放題だった。

「ぶようじんだぞ、すこしはけいかいしろ」

「リョクリュウが何時でも入って来られるようにしているんだ。
 文句を言われると腹が立つぞ」

「ありがとう、だが、ちゃんとそとからおこす。
 カギをかけていないとしんぱいだ」

 少ししゃがれているが、普通に日本語を話している。
 機械を使って音声翻訳しているようには見えない。
 まあ、イグアナ星人だったら、翻訳機を身体に埋め込んでいる可能性もある。

「分かった、次からはちゃんとカギを閉めておく」

 確かに、1度殺されかけた人間とは思えない不用心だった。
 山側の大窓だけではなく、トイレや台所の小窓も開けてある。
 
 山側の大窓だけ開けておくと、台風規模の強風が入り込んだ時に、家が吹き飛んでしまう可能性があるので、風の抜け場所として開けてあったのだ。

「きのういっていた、おんせいにゅうりょくをためしたい」

「分かった、これだ、リョクリュウの声で操作できるか試してくれ」

 俺は1台目の75型テレビの画面に音声コマンド一覧表を出した。
 音声でパソコンを操作するなら音声コマンドを覚えて使いこなさないといけない。
 リョクリュウなら直ぐに覚えると思うが、多少は時間が必要だろう。

「ふむ、わかった、やってみる」

 ビックリするくらい短時間で音声コマンドを覚えやがった。
 日々衰えていく自分と比べて嫉妬しそうになるが、直ぐに諦められた。
 根本的な種族差ならどうしよもない。

 それに、種族差などなくても、何の努力もしてこなかった人間が、ずっと努力をしてきた人間より劣るのは当然の事だ。

「もう大丈夫か、手伝わなくても使えそうか?」

「ああ、だいじょうぶだ、もうキヨシによふかしさせなくてすむ」

「夜更かしくらい大したことじゃない、気にするな。
 俺は見損ねたアニメを観るから、好きにやっていてくれ。
 アニメを観たら先に寝るから、山に戻る時に起こしてくれ」

「しょうせつをかかなくてもいいのか?」

「しばらくは投稿頻度が下がると言ってあるから大丈夫だ」

「かねはだいじょうぶなのか?」

「もともと金を使わない生活をしていたから心配いらない。
 立て続けに有料電子書籍を出して、支援者に負担をかけたくない。
 金ならもう十分あるから、無料のサイトにだけ投稿してもいいが、まずは約束した事をやり遂げる」

「そうか、かねがあるなら、むりにかくこともない。
 だが、ここに、つづきをかいてほしいとあるぞ」

「そうだな、続きを読みたいと言ってもらえるなら、書かないといけないな。
 だが、面白い小説を書かないといけない、そう思えば思うほど書けなくなる。
 だから、アニメを観ながらアイデアを探しているんだ」

「そうか、だったら、がんばってみろ」

「分かっている、言われなくても頑張って観る。
 何時寝てしまうか分かららないから、さっき言った事を忘れるなよ」

「わかっている、やまにもどるときにおこす。
 ふしんなけはいをかんじてもおこす、あんしんしろ」

「頼んだぞ」

「たのまれたぞ」

「おやすみ」

「おやすみ」
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