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第一章

第26話:閑話・ブランドン皇帝

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「本当に放置してよろしいのですか、陛下」

「構わぬ、それともお前が領主軍を率いて攻め込むか、朕は別に止めぬぞ。
 六十万の民が籠城をする離宮に攻め込んで勝てたのなら、あの地はくれてやろう。
 その代わり、今メイトランド方伯が朕や大臣どもに献納しておる宝石は、お前に献納してもらうからな」

「滅相もございません。
 そのようなつもりで申したわけではありません」

「だったらその汚く臭い口を閉じて下がれ。
 もう二度と朕の前に顔を出すな。
 侍従、分かっているな、なにがあろうと取り次ぐな。
 取り次いだ侍従の首を刎ねるぞ」

「陛下、陛下、どうかお許しください、陛下」

「騒ぐな愚か者、陛下の御前でこれ以上騒ぐのならこの場で斬るぞ」

「愚か者がいなくなったところお前達に問う。
 皇太子が提案してきた、皇国の備蓄食糧を市場に放出して食糧高騰を抑えると話をどう思うか」

「内務大臣として申し上げさせていただきます。
 今のまま食糧の高騰が続けば、食糧を買えない飢えた民が生きるために犯罪に走り治安が極端に悪化してしまいます。
 皇太子殿下の提案通り備蓄食糧を放出すべきだと思われます」

「商務大臣として申し上げさせていただきます。
 今の状態で備蓄食糧を放出いたしましても、食糧高騰を商売の好機と考える商人どもが買い占めて売り惜しみをしてしまいいます。
 大切な備蓄食糧を放出しても無駄だと思われます」

「王都警備総長として申し上げさせていたできます。
 食糧の買い占めを行っているのは商人だけではありません。
 有力貴族が商人に力を貸しております。
 その者を逮捕処刑すれば商人どもは直ぐに大人しくなります」

「いや、いや、いや、そのような事をすれば最悪内戦が始まります。
 内戦など始まっては、食糧の買い占めどころではない価格の高騰が、全ての商品で引き起こされてしまいます。
 有力貴族を逮捕処刑するなどとんでもない事ですぞ」

「軍務大臣として申し上げさせていただきます。
 今商務大臣が言ったのは自分が逮捕処刑されないための言い訳ですぞ、陛下。
 商人どもを裏から操ってあくどく利を得ているのは商務大臣です。
 陛下が聖断をくだされれば臣が全軍を率いて討伐してみせます」

「さて、商務大臣。
 軍務大臣はこう申しているが、どう身を処すのかな。
 領地では息子たちが領軍を率いているようだが、皇国軍を迎え討って戦う気構えがあるのかな。
 それともこの場で家族の命乞いをして領地を放棄するか。
 朕はどちらでも構わぬぞ」

「陛下のお情けはありがたいですが、私も由緒ある侯爵家の当主です。
 自分や家族の命を惜しんで戦いもせずに領地を失う気はありません。
 お手向かいさせていただきます」
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