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第一章

第23話:謀略

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「はなせ、離さないか、下郎。
 俺様を誰だと思っている。
 俺様はゲーンズバラ伯爵家の者だぞ。
 ゲーンズバラ伯爵はアレクシス皇太子殿下の側近なのだぞ。
 このような真似をしてただですむと思っているのか」

 馬鹿が騒いでいますね。
 こいつの不正が分かってからたった一カ月で処分できました。
 全部カチュアのお陰です。

「よくやってくれたわね、カチュア。
 貴女のお陰で不正をしていた役人を全員処分できるわ。
 商人も全員捕らえて代金と損害額を賠償させたから、莫大な利益が出たわ。
 半分はカチュアに差し上げるわね」

「いい、ちゃんと報酬はもらっている。
 これも仕事のうち」

「そうわいかないわよ、カチュア。
 やってくれた仕事に応じて報酬を払わないと私の評判が悪くなるわ。
 絶対に半分受取ってもらうからね」

「だったらチームに渡して。
 私はチームで雇われている。
 私だけがもらうのはおかしい」

 確かにそれはそうよね。

「ブレンダはそれでいいの」

「ああ、そうしてくれ。
 前衛も後衛も軍師も報酬は公平に分けるのがチームの決まりだ。
 今回はカチュアだけが働いたが、時には他の者だけが働くこともある。
 だがそれでも公平に分けるのがチームだ。
 まあ、全員と相談して配分を変えることはあるがな」

 どうやら今回は一旦チームでもらって大半をカチュアに渡す気ですね。

「それにしても、今回は痛快だったな。
 皇太子殿下の側近のうち半数が不正に加担していたとはな。
 国費を横領していたんだから、全員家族ともども処刑されるのは当然だけど、皇国も大混乱だよな」

 ブレンダの言う通りです。
 私もこれには正直驚きました。
 あれほど真面目な殿下の側近に、不正をする者が多いとは思っていませんでした。

「信じすぎてはダメ。
 人は弱い。
 上に立つ者は部下に厳しくする。
 それが一番優しい」

 カチュアの言う通りかもしれませんね。
 主人がちゃんと見張っていないと、誘惑に負けてしまうのでしょうね。
 
「分かったは、カチュア。
 私も手を抜かずに部下に目を配るわ」

「お嬢様はだいじょうぶ。
 今回もちゃんと見つけた」

 カチュアはほめてくれますが、全部魔力と魔術のお陰なんですよね。
 莫大な魔力があるからこそ、探索魔術を常時稼働できるのです。
 でも、そんな覗きのような魔術を常時稼働しているなんて、さすがにこの子達にも言えないのよね。

「ありがとう、それでね、これからの事なんだけど。
 みんなはどうすればいいと思う。
 資金的にはなんの問題もないんだけど、お金を使い過ぎると物の値が上がり過ぎてしまって、多くの人が困るのよね。
 それに、ベテューヌ王国の事も気になるのよ。
 王家や実家の事はどうでもいいんだけど、何の罪もない民が困るのがねぇ」
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