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第一章

第19話:刺客

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 カン、カン、カン、カン、カン。

「いやあ、いつ来ても活気がありますなぁ」

 大量の食糧を運んできた商人が感心しています。
 文官の家臣が商人の相手をしています。
 メイトランド方伯家に仕える家臣も多くなりました。

「キャメロンお嬢様、商人の言う通り領民が笑顔に満ちていますね」

「そうね、ブレンダ。
 領民が笑顔でいてくれて私もうれしいわ。
 でもこれもブレンダ達が頑張ってくれたお陰よ」

「いえ、いえ、私達の努力なんて大したことありませんよ。
 全部キャメロンお嬢様も宝石があっての話です。
 そもそもお金がないと私達にできる事なんて何もありませんから」

 ブレンダが本気で言ってくれている。
 うれしいし間違いではないけど、それが全てではありません。

「そうね、確かにお金がなかったら何もできなかったわね。
 だけどお金だけでも駄目よ。
 心から信じられる家臣がいてくれないと、利用されるだけよ。
 相手が馬鹿なら利用される事もなく殺されて奪われるだけよ。
 このやり方ができたのは、ブレンダ達がいてくれたからよ」

「そう言ってもらえるとうれしいです」

 ブレンダがとてもうれしそうに返事してくれます。

「……これからも役に立つ、安心していい」

 軍師役のカチュアが少し照れながら答えてくれます。
 カチュアは天才軍師だからかもしれませんが、とても感受性が強いです。
 傷つきやすいから人と話すのが苦手なのです。
 心から信頼できるようにならないと全く話してくれません。

「お互い様だよ、キャメロンお嬢様。
 お嬢様は約束通り私の動物が安心して住める領地を手に入れてくれた。
 その中から大きな森を私個人の領地にしてくれた。
 その領地を守るためなら何だってやるよ」

 ミリアムもうれしそうに返事してくれます。
 動物を操る能力があるミリアムには、支配下に置いている動物達のために、常に大量の食糧と遊び場が必要です。
 しかももリアムは動物を利用するのではなく友達としてあつかいます。

「私はちょっと不満だわ。
 キャメロンお嬢様についていけばもっと殺せると思ったいたのに。
 ぜんぜんものたらないわ、もっと殺させて欲しいわ」

 戦闘狂のレミーらしいですね。
 無理に我慢させると何をしでかすか分からないとブレンダから聞いています。
 ここは発散してもらう方法を考えないといけませんね。

「森で野生の獣や魔獣を狩るのではダメなの」

「ダメね、動物じゃ満足できないわ。
 人よ、人を殺させて欲しいわ」

「しかたないわね、レミーが護衛から外れるのは不安だけれど、貴女達が信用できる傭兵や冒険者を集めてくれたから、しばらくはだいじょうぶね。
 レミーにはベテューヌ王国に戻ってもらうわ。
 ブリトニーの手先になっている悪人を殺してきてちょうだい。
 ただ満足したら戻ってきてね」
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