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第一章

第1話:悪役令嬢・キャメロン視点

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「どういう事だね、キャメロン嬢。
 病弱なブリトニー嬢を虐めているというではないか。
 そのような悪逆非道な事をしながらよくここに来られたな。
 恥を知れ恥を!」

 バッシャア!

 痛い、眼に入ったシャンパンが痛い。
 先程まで聞こえていた貴族達の楽しそうな会話が聞こえない。
 それどころか舞踏会の為に奏でられていた音楽まで止まっています。
 多分舞踏会場中の王侯貴族がこの場を注目しています。
 このままでは私にシャンパンをかけたオーガスト第一王子の立場が極端に悪くなってしまいますが、もうどうでもいいです。

「なにをなされるのですか、オーガスト第一王子殿下。
 先程から申されておられることには全く身に覚えがありません。
 何かの勘違いではありませんか。
 それとも、自分で何も確かめずに一方的に誰かの話を鵜呑みにされたのですか。
 まさかそのような愚かな真似はされていませんよね」

「だまれ、だまれ、黙れ!
 この性悪女が。
 お前のような極悪非道なモノと婚約などしてしていられるか。
 婚約破棄だ、破棄。
 いや、婚約を破棄するだけではお前の悪行の罰にはならん。
 追放だ、国外追放だ、お前をこの国から追放してやる。
 今直ぐこの国から出ていけ!」

 甘やかされて育った愚かな王子なら、少し挑発すればそう言うと思っていました。
 ここまで簡単に思い通りに動いてくれるとは、簡単すぎて笑ってしまいます。
 もう少し何度かやり取りしなければいけないと思っていたのですが、これでは簡単過ぎて気が抜けてしまいますね。
 いえ、ダメです、最後まで気を抜かずにやり遂げないといけません。
 でもこんなバカが相手ならブリトニーも簡単に操れた事でしょうね。

「お待ちください、オーガスト第一王子殿下。
 そのような愚かな事を口にされては、貴族家臣国民にバカにされてしまいます。
 今一度よくお考えください、オーガスト第一王子殿下。
 しっかりと調べられて間違いのないように判断されてくださいませ。
 女の色香に迷い、甘言に踊らされ、感情のままに行動されるなど、王位を継承される方とは思えない愚かな行いでございます」

 さあ、怒りなさいオーガスト。
 普通の人間なら、ここまで言われたら自分の言動を見つめ直して、何か間違っていないか確認する事でしょう。
 ですが貴男なら、私に恥をかかされたと怒り狂うことでしょうね。
 自分の感情のままに愚かな事をしでかしてくれるでしょう。

 バッシャーン!

 顔が痛い、冷たいモノが顔を流れる。
 ドクドクト心拍に併せた痛みと共に、熱いモノが頬から流れるのが分かります。
 バカなオーガスト。
 手に持っていたシャンパングラスを私に叩きつけましたね。
 私の顔はザックリと裂けて血が流れている事でしょう。
 この血塗れになった顔が、舞踏会に集まった多くの王侯貴族の記憶に留まるように、しっかりと見せつけないといけませんね。

「「「「「キャアアアアアアアア」」」」」
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