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第一章
第27話:3人の話合い
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刀鍛冶との相談が終わると昼になっていました。
大切な、命を預ける剣を造ってくれる刀鍛冶です。
多少の接待をするのは当然の事です。
いえ、彼が持っている情報を教えてもらうための賄賂です。
騎士や冒険者が必要とする剣の造り手です。
その情報を持っていてもおかしくありません。
刀鍛冶が教えてくれたのは王国の権力争いでした。
王家の大半が誇り高いままなのですが、領地持ち騎士と商人が徐々に堕落して来ていると言うのです。
更にピアソン王国が、我が国を占領した後でも領地の所有を認める条件で、王家に謀叛を起こせと扇動していると言うのです。
領地持ち騎士が裏切り易いように、ピアソン王家とポーウィス王家の血を受け継ぐ、グラハム伯爵家のアーロンを傀儡の王にするそうです。
完全に併合するのではなく、属国にすると言うのです。
この企みが成功してしまったら、王家に残されるのは首都とその周辺にある直轄領だけになってしまいます。
ダンジョンに頼って籠城するにしても、商人が全て裏切ってしまったら、食糧を確保できなくなってしまいます。
籠城の主戦力となるのはダンジョン騎士と王都の民ですが、ダンジョン騎士のほとんどが王家の対する忠誠を持ち続けています。
極一部の者だけが、実力に応じた領地をもらえないことに不満を持ち、裏切ったらピアソン王国内に領地を与えるという言葉を信じているそうです。
ただ、国民に対する扇動は行われていないそうです。
そもそも、出来損ないと忌み嫌われているジャスパーの父親がアーロンです。
アーロンもジャスパー同様嫌われ者なのだそうです。
平民女性に対する悪行が激しく、蛇蝎の如く嫌われているそうです。
そんな奴を王にするような計画は、金さえ儲けられれば良いという、悪徳商人以外は味方しません。
そのような沢山の情報を教えてもらえた昼食会は、とても有意義でした。
今後どのように動くべきか、考える参考になりました。
「ハリーはどうする気なの?」
ソフィアがあまり心配している様子もなく聞いてきます。
「戦って国を守れるのならそれが1番なのですが、今の状況では絶対に守れるとは言えませんから、迷っています」
「わたしは王家なんか見捨てて逃げた方が良いと思うよ」
「僕もハリー様にはその方が良いと思うのですが、ジャック様とオリバー様がどのような決断をされるかによっては、逆らえないのではありませんか?」
「確かに父上とお爺様の判断によっては、僕の考える余地はないかもしれない。
だけど、刀鍛冶にまで広がっている噂を、父上とお爺様が知らないはずがない。
私たちに何も話さなかったのは、自分たちで考えろという事だと思う」
「だったらわたしは逃げの一手よ。
わたしたち領民の事なんて考えずに、もっと仕え甲斐のある王家に移るべきよ」
「僕たちがジャック様とオリバー様に試されているのでしたら、最後までポーウィス王家に忠誠を尽くすべきだと言わなければいけません。
ですが、アメリア様も加わっておられるのでしたら、ソフィアの言うように、他国に仕えるべきだと手紙を送られた方が良いです」
「アーサーの言う通りだろうね。
誰が私を試しているかによって、答えが変わってくるかもしれない。
母上が試しているのなら『絶対に領民を見捨てない』と言わないといけない」
「そうね、ギネビア様にはそう言わないと叱られてしまうわ」
ソフィアであろうと母上の慈愛には逆らえないようだ。
「ただ、私の答えは誰に試されているにしても、もう決まっているよ」
「なんて答えるの?」
「ハリー様、母を助けていただけるのなら、どこまでもお供します」
「私は何があっても領民を見捨てない。
王家に謀叛する事になろうと、領民の幸せを1番に考えます」
「ハリーらしいね」
「流石ハリー様です」
「ただ、ピアソン王家の言う事は信用できないです。
1度主君を裏切るような奴は、2度3度と裏切ります。
自分たちを裏切る可能性のある者を、ピアソン王家が許すとは思えません。
この国を占領した後で、領地持ち騎士家は根絶やしにされるでしょう」
「わたしももう思うわ」
「僕もそう思います」
「ポーウィス王家が勝てる確証がなく、ピアソン王家に寝返る気にもなりません。
その上で領民を絶対に見捨てないとなれば、私たちの手でポーウィス王家が勝てるようにするか、領民を連れて全く関係のない国に逃げるかです」
「ハリーらしいね」
「はい、ハリー様らしいです」
「父上もお爺様も、私がそんな手紙を書くのを期待しているのではりませんか?」
「多分そうだね」
「僕もそう思います」
「ではそのように手紙を書いて送りましょう」
「任せたわ」
「お任せいたします」
「駄目ですよ、2人にも同じように手紙を書いてもらいます」
「ぶっぶ~、メンドクサイ~」
「僕も書かなければいけませんか?」
「ソフィアには家にも手紙を送ってもらわないといけないです。
領民が素直に移住に応じてくれるように、説得してもらわないといけません」
「説得なんてしなくてもいいじゃん。
ご領主様達を信じられなくて、侵略者が支配する国に残りたい奴らなんて、さっさと見捨てちゃえばいいんだよ」
「僕もそう思いますが、ご領主家の方々は領民を見捨てたりされません」
「ソフィアの言う事も分かるけれど、グリフィス家には先祖代々領民を守って来た誇りがあるから、そう簡単に領民を見捨てられないのですよ。
できるだけ状況を説明して、それでも残るという者まで無理に連れて行こうとは思いませんが、現実が分からなくて残ると言う者は助けてあげたいのです。
そんな領民を少しでも減らすために、事情だけは正確に知らせないといけません。
それも、領主家だけの視点だけでなく、領民であるソフィアの視点からも、使用人であるアーサーの視点からもです」
「分かった、分かった、分かりました。
めんどくさいけど、できるだけ詳しく手紙を書くわよ」
「僕もできるだけ詳しい手紙を書かせていただきます。
宿の支配人やコンシェルジュ、刀鍛冶や組合の受付嬢にも、同じ様にくわしい手紙を書いてもらった方が良いのではありませんか?」
「良い事を言ってくれました!
僕たちだけでなく、何の関係のない人たちからも、王都の状況が伝えられたら、頑固な人や憶病な人も、領地を離れる気になってくれるかもしれません」
大切な、命を預ける剣を造ってくれる刀鍛冶です。
多少の接待をするのは当然の事です。
いえ、彼が持っている情報を教えてもらうための賄賂です。
騎士や冒険者が必要とする剣の造り手です。
その情報を持っていてもおかしくありません。
刀鍛冶が教えてくれたのは王国の権力争いでした。
王家の大半が誇り高いままなのですが、領地持ち騎士と商人が徐々に堕落して来ていると言うのです。
更にピアソン王国が、我が国を占領した後でも領地の所有を認める条件で、王家に謀叛を起こせと扇動していると言うのです。
領地持ち騎士が裏切り易いように、ピアソン王家とポーウィス王家の血を受け継ぐ、グラハム伯爵家のアーロンを傀儡の王にするそうです。
完全に併合するのではなく、属国にすると言うのです。
この企みが成功してしまったら、王家に残されるのは首都とその周辺にある直轄領だけになってしまいます。
ダンジョンに頼って籠城するにしても、商人が全て裏切ってしまったら、食糧を確保できなくなってしまいます。
籠城の主戦力となるのはダンジョン騎士と王都の民ですが、ダンジョン騎士のほとんどが王家の対する忠誠を持ち続けています。
極一部の者だけが、実力に応じた領地をもらえないことに不満を持ち、裏切ったらピアソン王国内に領地を与えるという言葉を信じているそうです。
ただ、国民に対する扇動は行われていないそうです。
そもそも、出来損ないと忌み嫌われているジャスパーの父親がアーロンです。
アーロンもジャスパー同様嫌われ者なのだそうです。
平民女性に対する悪行が激しく、蛇蝎の如く嫌われているそうです。
そんな奴を王にするような計画は、金さえ儲けられれば良いという、悪徳商人以外は味方しません。
そのような沢山の情報を教えてもらえた昼食会は、とても有意義でした。
今後どのように動くべきか、考える参考になりました。
「ハリーはどうする気なの?」
ソフィアがあまり心配している様子もなく聞いてきます。
「戦って国を守れるのならそれが1番なのですが、今の状況では絶対に守れるとは言えませんから、迷っています」
「わたしは王家なんか見捨てて逃げた方が良いと思うよ」
「僕もハリー様にはその方が良いと思うのですが、ジャック様とオリバー様がどのような決断をされるかによっては、逆らえないのではありませんか?」
「確かに父上とお爺様の判断によっては、僕の考える余地はないかもしれない。
だけど、刀鍛冶にまで広がっている噂を、父上とお爺様が知らないはずがない。
私たちに何も話さなかったのは、自分たちで考えろという事だと思う」
「だったらわたしは逃げの一手よ。
わたしたち領民の事なんて考えずに、もっと仕え甲斐のある王家に移るべきよ」
「僕たちがジャック様とオリバー様に試されているのでしたら、最後までポーウィス王家に忠誠を尽くすべきだと言わなければいけません。
ですが、アメリア様も加わっておられるのでしたら、ソフィアの言うように、他国に仕えるべきだと手紙を送られた方が良いです」
「アーサーの言う通りだろうね。
誰が私を試しているかによって、答えが変わってくるかもしれない。
母上が試しているのなら『絶対に領民を見捨てない』と言わないといけない」
「そうね、ギネビア様にはそう言わないと叱られてしまうわ」
ソフィアであろうと母上の慈愛には逆らえないようだ。
「ただ、私の答えは誰に試されているにしても、もう決まっているよ」
「なんて答えるの?」
「ハリー様、母を助けていただけるのなら、どこまでもお供します」
「私は何があっても領民を見捨てない。
王家に謀叛する事になろうと、領民の幸せを1番に考えます」
「ハリーらしいね」
「流石ハリー様です」
「ただ、ピアソン王家の言う事は信用できないです。
1度主君を裏切るような奴は、2度3度と裏切ります。
自分たちを裏切る可能性のある者を、ピアソン王家が許すとは思えません。
この国を占領した後で、領地持ち騎士家は根絶やしにされるでしょう」
「わたしももう思うわ」
「僕もそう思います」
「ポーウィス王家が勝てる確証がなく、ピアソン王家に寝返る気にもなりません。
その上で領民を絶対に見捨てないとなれば、私たちの手でポーウィス王家が勝てるようにするか、領民を連れて全く関係のない国に逃げるかです」
「ハリーらしいね」
「はい、ハリー様らしいです」
「父上もお爺様も、私がそんな手紙を書くのを期待しているのではりませんか?」
「多分そうだね」
「僕もそう思います」
「ではそのように手紙を書いて送りましょう」
「任せたわ」
「お任せいたします」
「駄目ですよ、2人にも同じように手紙を書いてもらいます」
「ぶっぶ~、メンドクサイ~」
「僕も書かなければいけませんか?」
「ソフィアには家にも手紙を送ってもらわないといけないです。
領民が素直に移住に応じてくれるように、説得してもらわないといけません」
「説得なんてしなくてもいいじゃん。
ご領主様達を信じられなくて、侵略者が支配する国に残りたい奴らなんて、さっさと見捨てちゃえばいいんだよ」
「僕もそう思いますが、ご領主家の方々は領民を見捨てたりされません」
「ソフィアの言う事も分かるけれど、グリフィス家には先祖代々領民を守って来た誇りがあるから、そう簡単に領民を見捨てられないのですよ。
できるだけ状況を説明して、それでも残るという者まで無理に連れて行こうとは思いませんが、現実が分からなくて残ると言う者は助けてあげたいのです。
そんな領民を少しでも減らすために、事情だけは正確に知らせないといけません。
それも、領主家だけの視点だけでなく、領民であるソフィアの視点からも、使用人であるアーサーの視点からもです」
「分かった、分かった、分かりました。
めんどくさいけど、できるだけ詳しく手紙を書くわよ」
「僕もできるだけ詳しい手紙を書かせていただきます。
宿の支配人やコンシェルジュ、刀鍛冶や組合の受付嬢にも、同じ様にくわしい手紙を書いてもらった方が良いのではありませんか?」
「良い事を言ってくれました!
僕たちだけでなく、何の関係のない人たちからも、王都の状況が伝えられたら、頑固な人や憶病な人も、領地を離れる気になってくれるかもしれません」
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