9 / 47
第一章
第9話:賞賛
しおりを挟む
「受付お願いします」
僕たちは12時間ダンジョンに潜ってから地上に戻りました。
29階まで潜る時間と戻って来る時間も必要なので、12時間ずっと29階で狩りができたわけではありませんが、1番長く狩ったのは29階でした。
「たった3人で2日目なのに、こんなに狩ってこられたのですか?」
昨日と同じ受付のお姉さんが手放しでほめてくれます。
少々照れ臭いですが、素直に受け入れます。
ここで変な謙遜したら反感を買うかもしれません。
「僕たちは魔境に接する村の出なので、小さな頃から畑を荒らす鳥を追い、狩りの手伝いをしてきました。
12歳の義務があるので、11歳から魔境で狩りの練習をしてきました。
教えてもらえる機会のない子供たちよりも恵まれて育ちましたから」
「それは分かっていましたが、これほどとは思っていませんでした。
これまでも魔境に接する村から来た子はいましたが、その子たちでも2日目から地下10階よりも深く潜った子はいませんでした」
流石冒険者組合で受付をするお姉さんだけの事はあります。
僕たちが提出した宝物を見ただけで、何階まで潜ったか想像がつくようです。
12時間の内3時間は食事と休憩、移動時間に使ったと思います。
狩りの実働は9時間ですが、1分間に2回は戦ったと思います。
1時間で120回、9時間で1080回くらいです。
ただ、モンスターが6体ずつ現れるようになったのと、戦う階層が深くなった分、手に入る宝物が3倍くらいになっています。
今日3人で手に入れた宝物は、水晶189、小銭貨336、小鉄貨243、大銭貨90、大鉄貨36、岩塩6です。
もう石材とレンガは宝物の数には入れません。
「それは僕が領主の子供だからでしょう。
騎士道精神を守らなければいけないと、幼い頃から鍛えられてきました。
ここにいる2人もですが、領民にはできる限りの教育を行っています。
12歳の義務で死ぬ事の無いように、武術も魔術も教えるようになっています」
「羨ましい、そのような領地があるのですね。
領民をそのように大切にするなんて、王都はもちろん、他の領地でも聞いた事がりません」
「僕には当たり前の事なのですが、他の領地は違うのですね」
「我が国は他国に比べれば領民に優しい国ではありますが、それは搾取する領主が少ないと言うだけで、技術や知識を与えてくれる訳ではありません。
本来なら王侯貴族が独占する技術や知識を領民に与えてくださるご領主は、貴方様の御父君以外聞いた事がありません」
「そこまでほめていただけると少々恥ずかしくなります。
予約していた部屋で休みたいのですが、良いですか?」
「はい、昨日と同じ部屋を空けてありますから、そのまま使ってください」
「では明日の予約分と合わせて小銭貨か小鉄貨で払いたいのですが、良いですか?」
「今日の分は昨日いただいていますから、小銭貨なら90枚、小鉄貨なら45枚いただきますね」
僕は小銭を処分したくて全て小銭貨で支払いました。
今日の部屋代を、昨日予約で支払った際も小銭貨でした。
「ふう、今日は疲れたね」
何故か2畳しかない狭苦しい僕の部屋に3人で集まる。
3階の奥まった場所に続けて取った3部屋です。
奥は美少女のソフィアが使って、真ん中を僕が使っています。
真ん中なので、建物の外からも中からも盗み聞きされ難いかもしれません。
ですが、壁が物凄く薄いので、少し大きな声をだしただけで筒抜けです。
どうせ聞かれるのなら、広い食堂に行くべきだと思うのですが?
「そうですね、僕は初めての階で緊張してしまいました。
ハリー様はどうですか、疲れられましたか?」
「正直あまり疲れませんでした。
父上やお爺様、お婆様に鍛錬をつけていただくよりは楽でした。
特に魔力を全く使いませんでしたから、その点が楽でしたね」
「あ、それ分かるわ、私も魔力を使わなくて楽だったもの」
「明日も魔力を使わないですよね?」
「そうですね、29階までなら剣だけで十分だと思いますよ」
「でしたら魔力を売りませんか?
館を出る前にアメリア様が教えてくださったのですが、王都なら魔力を売る事ができるそうなのです」
「ああ、確かに、お婆様がそのような事を言われていましたね」
「私も思い出した、魔力が売れたら狩りの成果に関係なく美味しい者が食べられる。
もうここの不味いご飯を食べるのは嫌よ」
「ソフィア、贅沢を言ってはいけませんよ。
足らない分を買い足すのは良いですが、宿代についてくるパンとスープはちゃんと食べなければいけません」
「ぶぅ~、あんな不味いモノ毎日食べるのは嫌。
もったいないのなら、駆け出しの子にあげたらいいじゃない」
「それは駄目だよ、施しは気をつけないと反感を買うよ」
「アーサーの言う通りだよ。
もし乞食や浮浪児がいるのなら、パンは施しても大丈夫だけれど、12歳の子に施すのは危険だよ。
それに、持ち運べないスープは水代わりに飲みなさい」
「分かったわよ、スープは水代わりに飲むわよ。
でもパンを食べるのは嫌よ。
王侯貴族のように白パンが食べたいとは言わないわ。
黒パンやライ麦パンでもいいから、焼き立てを食べさせてよ!」
「わかりました、パンは焼きたてを食べましょう。
正直に言えば、僕もここの腐りかけのパンは食べたくありませんでした。
部屋を軽く掃除してから受付に行きましょう。
水くらい出して少しは魔力を使わないと、回復する魔力がもったいないですから」
僕たちは12時間ダンジョンに潜ってから地上に戻りました。
29階まで潜る時間と戻って来る時間も必要なので、12時間ずっと29階で狩りができたわけではありませんが、1番長く狩ったのは29階でした。
「たった3人で2日目なのに、こんなに狩ってこられたのですか?」
昨日と同じ受付のお姉さんが手放しでほめてくれます。
少々照れ臭いですが、素直に受け入れます。
ここで変な謙遜したら反感を買うかもしれません。
「僕たちは魔境に接する村の出なので、小さな頃から畑を荒らす鳥を追い、狩りの手伝いをしてきました。
12歳の義務があるので、11歳から魔境で狩りの練習をしてきました。
教えてもらえる機会のない子供たちよりも恵まれて育ちましたから」
「それは分かっていましたが、これほどとは思っていませんでした。
これまでも魔境に接する村から来た子はいましたが、その子たちでも2日目から地下10階よりも深く潜った子はいませんでした」
流石冒険者組合で受付をするお姉さんだけの事はあります。
僕たちが提出した宝物を見ただけで、何階まで潜ったか想像がつくようです。
12時間の内3時間は食事と休憩、移動時間に使ったと思います。
狩りの実働は9時間ですが、1分間に2回は戦ったと思います。
1時間で120回、9時間で1080回くらいです。
ただ、モンスターが6体ずつ現れるようになったのと、戦う階層が深くなった分、手に入る宝物が3倍くらいになっています。
今日3人で手に入れた宝物は、水晶189、小銭貨336、小鉄貨243、大銭貨90、大鉄貨36、岩塩6です。
もう石材とレンガは宝物の数には入れません。
「それは僕が領主の子供だからでしょう。
騎士道精神を守らなければいけないと、幼い頃から鍛えられてきました。
ここにいる2人もですが、領民にはできる限りの教育を行っています。
12歳の義務で死ぬ事の無いように、武術も魔術も教えるようになっています」
「羨ましい、そのような領地があるのですね。
領民をそのように大切にするなんて、王都はもちろん、他の領地でも聞いた事がりません」
「僕には当たり前の事なのですが、他の領地は違うのですね」
「我が国は他国に比べれば領民に優しい国ではありますが、それは搾取する領主が少ないと言うだけで、技術や知識を与えてくれる訳ではありません。
本来なら王侯貴族が独占する技術や知識を領民に与えてくださるご領主は、貴方様の御父君以外聞いた事がありません」
「そこまでほめていただけると少々恥ずかしくなります。
予約していた部屋で休みたいのですが、良いですか?」
「はい、昨日と同じ部屋を空けてありますから、そのまま使ってください」
「では明日の予約分と合わせて小銭貨か小鉄貨で払いたいのですが、良いですか?」
「今日の分は昨日いただいていますから、小銭貨なら90枚、小鉄貨なら45枚いただきますね」
僕は小銭を処分したくて全て小銭貨で支払いました。
今日の部屋代を、昨日予約で支払った際も小銭貨でした。
「ふう、今日は疲れたね」
何故か2畳しかない狭苦しい僕の部屋に3人で集まる。
3階の奥まった場所に続けて取った3部屋です。
奥は美少女のソフィアが使って、真ん中を僕が使っています。
真ん中なので、建物の外からも中からも盗み聞きされ難いかもしれません。
ですが、壁が物凄く薄いので、少し大きな声をだしただけで筒抜けです。
どうせ聞かれるのなら、広い食堂に行くべきだと思うのですが?
「そうですね、僕は初めての階で緊張してしまいました。
ハリー様はどうですか、疲れられましたか?」
「正直あまり疲れませんでした。
父上やお爺様、お婆様に鍛錬をつけていただくよりは楽でした。
特に魔力を全く使いませんでしたから、その点が楽でしたね」
「あ、それ分かるわ、私も魔力を使わなくて楽だったもの」
「明日も魔力を使わないですよね?」
「そうですね、29階までなら剣だけで十分だと思いますよ」
「でしたら魔力を売りませんか?
館を出る前にアメリア様が教えてくださったのですが、王都なら魔力を売る事ができるそうなのです」
「ああ、確かに、お婆様がそのような事を言われていましたね」
「私も思い出した、魔力が売れたら狩りの成果に関係なく美味しい者が食べられる。
もうここの不味いご飯を食べるのは嫌よ」
「ソフィア、贅沢を言ってはいけませんよ。
足らない分を買い足すのは良いですが、宿代についてくるパンとスープはちゃんと食べなければいけません」
「ぶぅ~、あんな不味いモノ毎日食べるのは嫌。
もったいないのなら、駆け出しの子にあげたらいいじゃない」
「それは駄目だよ、施しは気をつけないと反感を買うよ」
「アーサーの言う通りだよ。
もし乞食や浮浪児がいるのなら、パンは施しても大丈夫だけれど、12歳の子に施すのは危険だよ。
それに、持ち運べないスープは水代わりに飲みなさい」
「分かったわよ、スープは水代わりに飲むわよ。
でもパンを食べるのは嫌よ。
王侯貴族のように白パンが食べたいとは言わないわ。
黒パンやライ麦パンでもいいから、焼き立てを食べさせてよ!」
「わかりました、パンは焼きたてを食べましょう。
正直に言えば、僕もここの腐りかけのパンは食べたくありませんでした。
部屋を軽く掃除してから受付に行きましょう。
水くらい出して少しは魔力を使わないと、回復する魔力がもったいないですから」
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!
克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる