上 下
4 / 8
第一章

第4話:遠縁

しおりを挟む
 大きな声とともに入って来た男性を見てびっくりしました。
 まるで巨人族のような大きな体だったのです。
 しかも護身術しか学んでいない私でもわかるほど強い人です。

「おおよく戻ったな、アンソニー国王陛下のご機嫌はいかがだった」

「はっ、皇帝陛下からのご命令に従う準備はできているそうです」

「それはよかった。
 いかに皇帝陛下からの命令であろうと、全部我らが勝手にはできんからな」
 
「はい、皇帝陛下の温情で属国の王に送り込まれた人とはいえ、皇族の方を無視するわけにはいきません。
 それと元々カーク王家に仕えていた貴族の感情も無視するわけにもいきません」

 最初はなに話しているのか分かりませんでした。
 ですが話しを聞いているうちに徐々に分かってきました。
 アストリア帝国がカーク王国に皇族を婿を送り込んで属国化したわけです。
 テンプル方伯家は、送り込んだ皇族とカーク王家の見張りなのですね。

「おお、もしかして貴女がソフィア嬢かな。
 よく来てくださった。
 これで皇帝陛下の命令をはたすことができる」

 えええええ、私を助けたのは皇帝陛下の命令なのですか。

「これ、ランスロット。
 まだ自己紹介もしていないではないか」

「おお、そうであった、申し訳ないソフィア嬢。
 私がテンプル方伯家の当主を務めるランスロットだ。
 以後よろしく願いたい」

「いえ、とんでもございません、テンプル方伯閣下。
 私の方こそあのような家から救い出していただき感謝の言葉もございません。
 モンタギュー様にもお伝えさせていただきましたが、今の私には何のお礼もできませんが、受けたご恩は必ず返させていただきます」

「おお、そのようにへりくだったあいさつ痛み入る。
 父上、まだ何も説明されておられないのですか?」

「ああ、まだ何も話せていないよ」

「では私から話させていただきましょう。
 ソフィア嬢は遠い昔に皇室から別れた高貴な血筋なのですよ。
 そして我がテンプル方伯家とも遠い親戚になる。
 私もそろそろ結婚を考える歳になり、妻を迎えようと思ったのだが、皇帝陛下からソフィア嬢を妻に迎えるように命じられましてな」

 まって、まって、ちょっと待って。
 あまりに話が急すぎて理解できません。
 適齢期を迎えられたテンプル方伯が結婚を考えるのは分かります。
 方伯家ほどの家柄なら皇帝陛下が結婚相手を決めるのも分かります。

「どうしてテンプル方伯閣下の結婚相手が私なのですか。
 なぜ皇帝陛下が私を指名されたのですか。
 帝国の皇帝陛下ともあろう御方が、遠い小国の嫌われ子爵令嬢の事を知っておられるとはとうてい思えません」

「ああ、それは帝国の守護神様のお告げなのだよ。
 その事で重大な話がある。
 皇帝陛下の命令で急いで帝都に向かわなければならない。
 今日屋敷に着いたばかりで疲れているだろうが、明日の朝には帝都に向かって出発したいのだ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。

BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。 だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。 女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね? けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

〖完結〗いつ私があなたの婚約者を好きだと言いました?

藍川みいな
恋愛
「メーガン様は、私の婚約者のグレン様がお好きみたいですね。どういうおつもりなんですか!? 」 伯爵令嬢のシルビア様から話があると呼び出され、身に覚えのないことを言われた。 誤解だと何度言っても信じてもらえず、偶然その場にメーガンの婚約者ダリルが現れ、 「メーガン、お前との婚約は破棄する! 浮気する女など、妻に迎えることは出来ない!」 と、婚約を破棄されてしまう。だがそれは、仕組まれた罠だった。 設定ゆるゆるの架空の世界のお話です。 全10話で完結になります。

二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです

矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。 それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。 本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。 しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。 『シャロンと申します、お姉様』 彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。 家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。 自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。 『……今更見つかるなんて……』 ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。  これ以上、傷つくのは嫌だから……。 けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。 ――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。 ◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです。 ※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっております。……本当に申し訳ございませんm(_ _;)m

国外脱出を計画していた侯爵令嬢は大嫌いな王子に断罪されたので予定を前倒しして修道院(の傍の隣国)へと旅立った。見物の為に半年で帰国しましたが

竹井ゴールド
恋愛
 卒業パーティーで婚約破棄された侯爵令嬢は心の中で婚約者を奪ってくれた男爵令嬢に感謝した。  婚約者の王子の事を心の中でナルシストクズと呼ぶくらい大嫌いだったからだ。  だが、重要なのはここからだ。  何故なら、この婚約破棄は王子の独断なのだから。  国王がひっくり返すに決まってる。  なので侯爵令嬢は国王が帰国する前に・・・ 【2022/10/26、出版申請、11/11、慰めメール】 【2022/10/28、24hポイント1万2400pt突破】 【2023/3/17、しおり数110突破】

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

婚約者を妹に盗られました。むしろチャンスなので、妹を追い出します。

Hibah
恋愛
妹にくらべ冴えない人生を送ってきた私でしたが、幸いにも社交界の花形であるクリストフ様と婚約しました。しかし、今まで恵まれてきたはずの妹エミリーが私の甘い日々をぶち壊したのです。落ち込む暇なんてありません。私は小さい頃からエミリーに恨みを抱いてきたので、ちょうどよい機会です。憎い妹を社交界からも、家からも追い出そうと思います。

捨てたのは、そちら

夏笆(なつは)
恋愛
 トルッツィ伯爵家の跡取り娘であるアダルジーザには、前世、前々世の記憶がある。  そして、その二回とも婚約者であったイラーリオ・サリーニ伯爵令息に、婚約を解消されていた。   理由は、イラーリオが、トルッツィ家よりも格上の家に婿入りを望まれたから。 「だったら、今回は最初から婚約しなければいいのよ!」  そう思い、イラーリオとの顔合わせに臨んだアダルジーザは、先手を取られ叫ばれる。 「トルッツィ伯爵令嬢。どうせ最後に捨てるのなら、最初から婚約などしないでいただきたい!」 「は?何を言っているの?サリーニ伯爵令息。捨てるのは、貴方の方じゃない!」  さて、この顔合わせ、どうなる?

処理中です...