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第二章

第51話:有難迷惑

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「アグネスお嬢様、またお詫びの品と招待状が届いておりますが、どうすればよろしいでしょうか」

「これまでと同じように、お詫びの品は受け取ってお礼状を出すわ。
 お茶会や晩餐会、舞踏会の招待状は心身の疲労を理由にお断わりしてちょうだい」

 お詫びの品は、受け取らないと貴族達がロジャー第一王子やビゴッド第二王子に処罰されてしまいます。
 でも行きたくもない社交の招待状にまで応じる義務はありません。
 彼らを許しはしますが、とても心許す気にはなれません。
 ましてロジャー第一王子やビゴッド第二王子との関係を改善するために、利用される気など毛頭ありません。

「承りました、アグネスお嬢様。
 受け取ったお詫びの品は、いつも通り両殿下に検分していただきます。
 偽物やつまらぬ物を送ってきた貴族や騎士は、その日のうちに討伐されるでしょう、いい気味でございます」

 ジョアンナがとても物騒な事を言っていますが、嘘ではありません。
 私は戦勝会の翌日から心身の不調を言い立てて王都屋敷に籠っていますが、その日のうちに届いたお詫びの品を両殿下に検分していただきました。
 中には、この期に及んで、私やデヴォン伯爵を舐めているとしか思えない、程度の悪い品を詫びに送ってくる者がいました。
 その品を見た両殿下は激怒され、その者の王都屋敷を襲撃され、主従共々皆殺しにされましたが、とても止める気にはなれませんでした。

 もう私の慈悲も枯れてしまいました。
 それに、心身の不調で屋敷で寝込んでいて、両殿下の見舞いまでお断わりしている私が、諫めに行く事などできません。
 使者を送るという方法もありますが、使者が愚か者に八つ当たりされて死傷する可能性もあるので、止めました。
 私を陥れようとした者達よりも、ずっと忠誠を尽くしてくれてきた家臣達の方が遥かに大切ですから。

「いい気味とは言わないけれど、同情はできないわね。
 何時何をしなければ家を護れないかくらいの判断ができないようでは、貴族としては失格ですからね。
 父上と母上はお人好し過ぎますが、それでも家を滅ぼしたりはされませんでした。
 マージョリー王妃やヘンリー王子の要求に、表立って抵抗するのは危険だと思われたのだと考えるのは、子の欲目でしょうか、ジョアンナ」

「そんな事はございません、アグネスお嬢様。
 伯爵閣下と奥方様は、王家の権力を持つ謀叛人共を相手にしながら、付け入る隙を与えられませんでした。
 王命に逆らうことなく陥れられなかったのは、閣下と奥方様のお力でございます。
 それに、一時的に財産を減らされはしましたが、アグネスお嬢様の魅力で三倍以上になって帰ってくるのです。
 先見の明があられたのだと思います」
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