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第一章
第18話:舞踏会5
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やはりダンジョンを攻略するような人間は性格が捻じ曲がっています。
私の事前交渉に素直に引き下がってくれる事なく、思わず絶句し赤面してしまうような事を平気で口にするのです。
それも、冗談と分かるような表情と目で言ってくれればいいのに、引き込まれそうなくらい美しい、叡智を宿したような深い緑の瞳で言われてしまうと……
「姉上、さっさと一曲踊って終わらせてしまってください。
リチャードの奴は質の悪い遊び人ですから、姉上に変な噂が立っては困ります」
ライアンがこれほど無礼な言葉を口にできて、しかもファーストネームを呼び捨てにすると言う事は、先ほどの予想が当たっていたのでしょう。
二人の王子を中心にしたパーティーメンバーなのですね。
それにしても、質の悪い遊び人と言うのはどういう意味なのでしょうか。
知識だけでしか知りませんが、家の浮沈にかかわるような情報を得るために、平気で愛人関係になる貴族や貴婦人がいると言う事ですが、ウィンダム子爵がそういう貴族だと言う事なのでしょうか。
「おい、おい、おい、ボリングブルック女子爵に誤解されるような事を言わないでくれよ、ライアン」
「何を言っているのですリチャード、誤解でも何でもないでしょう。
来る者拒まず去る者追わず、が信条だと何度も言っていたではありませんか。
僕はその通りに言っただけで、誤解されるような事は言っていません」
「俺は困っている夫人に頼まれてお相手しているだけだ。
男が手慣れていないと、何も知らない令嬢を傷つけてしまう事があるからな。
か弱い令嬢の心も身体も大切に扱うには、経験が必要なのだよ。
お前も固い事を言っていないで、色々と経験しておく事だな」
「僕を子ども扱いするな、リチャード。
もう一度同じことを言ったら、この場で決闘する事になるぞ」
「怖い、怖い、天才ライアンと決闘など怖くてできないね。
それよりも、さっさと嫉妬の視線を向けてきている令嬢方と踊ってこい。
ボリングブルック女子爵を護りたいのなら、余計な嫉妬を消しておいた方がいい。
お前との芽が僅かでもあると思っている間は、おの女共も親の貴族も、ボリングブルック女子爵を狙わない事くらい分かっているだろう」
「……分かった、一時的に姉上をお前に預けてやる。
だが一曲だ、一曲踊ったら姉上を護って壁際にいろよ」
「分かっているよ、俺は王子方様ほどがっついちゃいないよ、安心しな」
あまり考えたくもない事を口にして、ライアンは私に刺すような嫉妬の視線を向けてくる令嬢方の方に歩いていきました。
まさかとは思いますが、私がロジャー第一王子とビゴッド第二王子に好かれているという事なのでしょうか……
ありえません、絶対にありえません。
ブスとまでは言いませんが、さして美しくもなく、誇れるような才能もなく、よくいる平凡な貴族令嬢でしかない私を、好きになるわけがありません。
「そろそろ踊っていただいてもいいでしょうか、ボリングブルック女子爵」
私の事前交渉に素直に引き下がってくれる事なく、思わず絶句し赤面してしまうような事を平気で口にするのです。
それも、冗談と分かるような表情と目で言ってくれればいいのに、引き込まれそうなくらい美しい、叡智を宿したような深い緑の瞳で言われてしまうと……
「姉上、さっさと一曲踊って終わらせてしまってください。
リチャードの奴は質の悪い遊び人ですから、姉上に変な噂が立っては困ります」
ライアンがこれほど無礼な言葉を口にできて、しかもファーストネームを呼び捨てにすると言う事は、先ほどの予想が当たっていたのでしょう。
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それにしても、質の悪い遊び人と言うのはどういう意味なのでしょうか。
知識だけでしか知りませんが、家の浮沈にかかわるような情報を得るために、平気で愛人関係になる貴族や貴婦人がいると言う事ですが、ウィンダム子爵がそういう貴族だと言う事なのでしょうか。
「おい、おい、おい、ボリングブルック女子爵に誤解されるような事を言わないでくれよ、ライアン」
「何を言っているのですリチャード、誤解でも何でもないでしょう。
来る者拒まず去る者追わず、が信条だと何度も言っていたではありませんか。
僕はその通りに言っただけで、誤解されるような事は言っていません」
「俺は困っている夫人に頼まれてお相手しているだけだ。
男が手慣れていないと、何も知らない令嬢を傷つけてしまう事があるからな。
か弱い令嬢の心も身体も大切に扱うには、経験が必要なのだよ。
お前も固い事を言っていないで、色々と経験しておく事だな」
「僕を子ども扱いするな、リチャード。
もう一度同じことを言ったら、この場で決闘する事になるぞ」
「怖い、怖い、天才ライアンと決闘など怖くてできないね。
それよりも、さっさと嫉妬の視線を向けてきている令嬢方と踊ってこい。
ボリングブルック女子爵を護りたいのなら、余計な嫉妬を消しておいた方がいい。
お前との芽が僅かでもあると思っている間は、おの女共も親の貴族も、ボリングブルック女子爵を狙わない事くらい分かっているだろう」
「……分かった、一時的に姉上をお前に預けてやる。
だが一曲だ、一曲踊ったら姉上を護って壁際にいろよ」
「分かっているよ、俺は王子方様ほどがっついちゃいないよ、安心しな」
あまり考えたくもない事を口にして、ライアンは私に刺すような嫉妬の視線を向けてくる令嬢方の方に歩いていきました。
まさかとは思いますが、私がロジャー第一王子とビゴッド第二王子に好かれているという事なのでしょうか……
ありえません、絶対にありえません。
ブスとまでは言いませんが、さして美しくもなく、誇れるような才能もなく、よくいる平凡な貴族令嬢でしかない私を、好きになるわけがありません。
「そろそろ踊っていただいてもいいでしょうか、ボリングブルック女子爵」
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