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第一章
第9話:弟ライアン
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「あっ、帰っていたのね、ライアン。
ねえ、聞いてよ、ライアン、今日はとても酷い一日だったのよ」
波乱と激動の一日についてライアンに聞いてもらっていたのですが、それがまた波乱の激動を呼んでしまうとは思ってもいませんでした。
そんな事になると分かっていたら、ライアンには何も話しませんでした。
ライアンは幼い頃から一本気な性格で、不出来な姉の私をずっと庇ってくれる心優しい性格なのです。
ただ、私を想うあまり、ちょっとやり過ぎる性格ではありました。
私の陰口を言っていた貴族令嬢に、私の代理として決闘を申し込み、同じく代理に出てきた大人の騎士を半殺しにして謝らせるほど姉思いなのです。
よく考えて見れば、そんな性格のライアンに、ヘンリー第三王子に婚約破棄されただけでなく、牢屋に入れられそうだった事を話すだけでも激怒するには当然です。
その裏にジェーン嬢とハンティンドン伯爵がいた事や、ロジャー第一王子に無理矢理王家医師にされた事を話したら、確実に決闘を申し込むのを失念していました。
「姉さんに恥をかかせたのはヘンリーとマージョリー、ジェーンとデイヴィッド、無理矢理したくもない役目をさせようとしているのがロジャーだね。
分かった、五人とも決闘を申し込んでぶちのめしてやる」
「待って、早まらないでライアン。
それに、相手は王族なのだから、幾ら決闘を申し込むほど怒っていると言っても、敬称を省いては駄目よ。
それに、四人にはロジャー第一王子が罰を与えて賠償金まで命じてくださったわ。
ロジャー第一王子には無理矢理重要な役目を与えられたけれど、それに見合うだけの独立した爵位と領地を下さるわ。
私はちょっと愚痴を言いたかっただけなのよ。
だから五人に決闘を申し込むなんて言わないで、お願い、ライアン」
「……四人をぶちのめすのは、父上が支援した金と物資、それと賠償金を受け取ってからやればいいか。
問題があるとすれば、姉さんに無理難題を言っているロジャー殿下か。
分かったよ、王城に乗り込んでロジャー殿下とキッチリと話し合う」
ライアンは話せば分かってくれる聞き分けのいい子なのです。
注意した通り、王家の方々に敬称をつけるようになっています。
ただ、私を大切に思う気持ちが強すぎて、周りが見えなくなる事があるだけです。
その僅かな欠点が、今回は命に係わる大問題になりかねないのです。
あの強烈な強さを誇るロジャー第一王子に文句を言うなんて、命知らずにもほどがあります。
「駄目よ、絶対に駄目、ライアン。
ロジャー殿下に文句を言うなんて、命が幾らあっても足りなくなるわ」
「姉さん、僕は文句を言いに行くわけではないよ、話し合いをするだけだよ」
「私がからんだ事で、ライアンが話し合いで済ませたことが一度でもありましたか。
必ず決闘に持ち込んで、相手を半殺しにしてきたではありませんか。
駄目です、絶対にロジャー殿下に会いに行くことは許しません」
「姉さん、僕ももう十五歳になったのですよ。
独立した騎士にも叙任されるくらい強くなっているのですよ。
十分に大人ですから、幼い頃のように暴れ回るだけではありません。
ちゃんと考えているからこそ、他の四人は後回しにしたのです。
ロジャー殿下がちゃんと義姉さんに配慮してくださったら、決闘を申し込んだりはしませんよ、安心してください」
全然安心できないではありませんか、ライアン。
今の言葉だと、ちゃんと配慮しなければ、相手がロジャー第一王子であろうと、決闘を申し込むという意味ではありませんか。
しかも、支援金と賠償金を回収したら、難癖をつけてでも四人に決闘を申し込むと言っているではありませんか。
「安心などできるはずがないでしょう。
どうしても王城に行くと言うのなら、私もついていきますよ。
とても疲れていて、直ぐに休みたい私が、もう一度王城に行かなければならないような事を、どうしてもすると言うのですか、ライアン」
ねえ、聞いてよ、ライアン、今日はとても酷い一日だったのよ」
波乱と激動の一日についてライアンに聞いてもらっていたのですが、それがまた波乱の激動を呼んでしまうとは思ってもいませんでした。
そんな事になると分かっていたら、ライアンには何も話しませんでした。
ライアンは幼い頃から一本気な性格で、不出来な姉の私をずっと庇ってくれる心優しい性格なのです。
ただ、私を想うあまり、ちょっとやり過ぎる性格ではありました。
私の陰口を言っていた貴族令嬢に、私の代理として決闘を申し込み、同じく代理に出てきた大人の騎士を半殺しにして謝らせるほど姉思いなのです。
よく考えて見れば、そんな性格のライアンに、ヘンリー第三王子に婚約破棄されただけでなく、牢屋に入れられそうだった事を話すだけでも激怒するには当然です。
その裏にジェーン嬢とハンティンドン伯爵がいた事や、ロジャー第一王子に無理矢理王家医師にされた事を話したら、確実に決闘を申し込むのを失念していました。
「姉さんに恥をかかせたのはヘンリーとマージョリー、ジェーンとデイヴィッド、無理矢理したくもない役目をさせようとしているのがロジャーだね。
分かった、五人とも決闘を申し込んでぶちのめしてやる」
「待って、早まらないでライアン。
それに、相手は王族なのだから、幾ら決闘を申し込むほど怒っていると言っても、敬称を省いては駄目よ。
それに、四人にはロジャー第一王子が罰を与えて賠償金まで命じてくださったわ。
ロジャー第一王子には無理矢理重要な役目を与えられたけれど、それに見合うだけの独立した爵位と領地を下さるわ。
私はちょっと愚痴を言いたかっただけなのよ。
だから五人に決闘を申し込むなんて言わないで、お願い、ライアン」
「……四人をぶちのめすのは、父上が支援した金と物資、それと賠償金を受け取ってからやればいいか。
問題があるとすれば、姉さんに無理難題を言っているロジャー殿下か。
分かったよ、王城に乗り込んでロジャー殿下とキッチリと話し合う」
ライアンは話せば分かってくれる聞き分けのいい子なのです。
注意した通り、王家の方々に敬称をつけるようになっています。
ただ、私を大切に思う気持ちが強すぎて、周りが見えなくなる事があるだけです。
その僅かな欠点が、今回は命に係わる大問題になりかねないのです。
あの強烈な強さを誇るロジャー第一王子に文句を言うなんて、命知らずにもほどがあります。
「駄目よ、絶対に駄目、ライアン。
ロジャー殿下に文句を言うなんて、命が幾らあっても足りなくなるわ」
「姉さん、僕は文句を言いに行くわけではないよ、話し合いをするだけだよ」
「私がからんだ事で、ライアンが話し合いで済ませたことが一度でもありましたか。
必ず決闘に持ち込んで、相手を半殺しにしてきたではありませんか。
駄目です、絶対にロジャー殿下に会いに行くことは許しません」
「姉さん、僕ももう十五歳になったのですよ。
独立した騎士にも叙任されるくらい強くなっているのですよ。
十分に大人ですから、幼い頃のように暴れ回るだけではありません。
ちゃんと考えているからこそ、他の四人は後回しにしたのです。
ロジャー殿下がちゃんと義姉さんに配慮してくださったら、決闘を申し込んだりはしませんよ、安心してください」
全然安心できないではありませんか、ライアン。
今の言葉だと、ちゃんと配慮しなければ、相手がロジャー第一王子であろうと、決闘を申し込むという意味ではありませんか。
しかも、支援金と賠償金を回収したら、難癖をつけてでも四人に決闘を申し込むと言っているではありませんか。
「安心などできるはずがないでしょう。
どうしても王城に行くと言うのなら、私もついていきますよ。
とても疲れていて、直ぐに休みたい私が、もう一度王城に行かなければならないような事を、どうしてもすると言うのですか、ライアン」
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