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第一章
与力株6
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俺達三人は、御奉行の前を辞して、急いで奉行所内を回った。
格之助の見習い辞任と俺の見習い着任と報告するためだ。
そこでも色々と事情を聞かれた。
内与力とは御奉行に挨拶した時に話したので、年番方与力から挨拶し、吟味方与力や例繰方与力と言った、奉行所内にいる与力には全員挨拶できた。
本所方与力や養生所見廻り与力と言った、奉行所にいない与力に対しては、後日また役所に挨拶に行くことにした。
奉行所内にいる与力と同心への挨拶が終ると、平八郎の務め場である赦帳撰要方人別帳掛の部屋に入った。
赦帳撰要方人別帳掛と言うのは、お白洲で判決を受けた囚人が執行を受ける前に、名簿と罪状書を作成する役目だ。
また恩赦が出たとき用に、恩赦該当者名簿を作成して、御奉行に提出しておく。
更に撰要類集という判例集を作ったり、江戸の名主達から提出された人別帳を保管管理しておく職務だ。
与力の定員は四名で、その内の一人が平八郎である。
七右衛門も今日からここで見習いとなるのだが、他にも二人見習い与力がいた。
八人の正規同心と四人の見習い同心にも挨拶して格之助は屋敷に戻ったが、七右衛門は平八郎から仕事を教わる予定だ。
そこで七右衛門は撰要類集に興味を持った。
撰要類集は江戸幕府の法令集で、江戸の町奉行所で取り扱った裁判と行政関係の判例と法令や,老中との間で上申したり指示を受けたりした事、評定所の決定を調査した先例などに、立法過程の詳しい記事を含めて分類編纂したものだ。
七右衛門は一目で撰要類集の重要さが理解できた。
これを完璧に覚える事ができたら、吟味方与力として活躍する事ができる。
そう判断した七右衛門は、養父の平八郎とその同僚与力に写本の許可を求めた。
だが平八郎も同僚与力も簡単に許可などできなかった。
そこで急いで御奉行に判断を委ねたが、勉強熱心と許された。
許可を受けた七右衛門は、周りの与力同心が驚くほどの速さで写本をした。
しかもその達筆さは、三筆と見まごうほどだった。
流れるように鮮やかな筆さばきは、周りの与力同心を感心させていた。
だが集中している七右衛門には周りが見えていなかった。
昼食までの時間に、数十冊の撰要類集が写本され積み上げられていた。
だが本当に驚くのは書の美しさと写本の速さではなかった。
戯れに先輩与力が七右衛門が写本した本を取り、内容を質問してみた。
最初はほんの戯れだったのだ。
だがその全てを七右衛門が正確に回答した事で、周りの与力同心が驚嘆した。
そしてその話は、瞬く間に御奉行にも伝わったのだった。
格之助の見習い辞任と俺の見習い着任と報告するためだ。
そこでも色々と事情を聞かれた。
内与力とは御奉行に挨拶した時に話したので、年番方与力から挨拶し、吟味方与力や例繰方与力と言った、奉行所内にいる与力には全員挨拶できた。
本所方与力や養生所見廻り与力と言った、奉行所にいない与力に対しては、後日また役所に挨拶に行くことにした。
奉行所内にいる与力と同心への挨拶が終ると、平八郎の務め場である赦帳撰要方人別帳掛の部屋に入った。
赦帳撰要方人別帳掛と言うのは、お白洲で判決を受けた囚人が執行を受ける前に、名簿と罪状書を作成する役目だ。
また恩赦が出たとき用に、恩赦該当者名簿を作成して、御奉行に提出しておく。
更に撰要類集という判例集を作ったり、江戸の名主達から提出された人別帳を保管管理しておく職務だ。
与力の定員は四名で、その内の一人が平八郎である。
七右衛門も今日からここで見習いとなるのだが、他にも二人見習い与力がいた。
八人の正規同心と四人の見習い同心にも挨拶して格之助は屋敷に戻ったが、七右衛門は平八郎から仕事を教わる予定だ。
そこで七右衛門は撰要類集に興味を持った。
撰要類集は江戸幕府の法令集で、江戸の町奉行所で取り扱った裁判と行政関係の判例と法令や,老中との間で上申したり指示を受けたりした事、評定所の決定を調査した先例などに、立法過程の詳しい記事を含めて分類編纂したものだ。
七右衛門は一目で撰要類集の重要さが理解できた。
これを完璧に覚える事ができたら、吟味方与力として活躍する事ができる。
そう判断した七右衛門は、養父の平八郎とその同僚与力に写本の許可を求めた。
だが平八郎も同僚与力も簡単に許可などできなかった。
そこで急いで御奉行に判断を委ねたが、勉強熱心と許された。
許可を受けた七右衛門は、周りの与力同心が驚くほどの速さで写本をした。
しかもその達筆さは、三筆と見まごうほどだった。
流れるように鮮やかな筆さばきは、周りの与力同心を感心させていた。
だが集中している七右衛門には周りが見えていなかった。
昼食までの時間に、数十冊の撰要類集が写本され積み上げられていた。
だが本当に驚くのは書の美しさと写本の速さではなかった。
戯れに先輩与力が七右衛門が写本した本を取り、内容を質問してみた。
最初はほんの戯れだったのだ。
だがその全てを七右衛門が正確に回答した事で、周りの与力同心が驚嘆した。
そしてその話は、瞬く間に御奉行にも伝わったのだった。
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