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第一章

第11話:蛮族

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(城外に押し寄せてきているのは蛮族なのかな)

 私は心の中でイーシスに質問してみました。

(蛮族と言うのは、ミンスタ王国の人達が他の神を信じる人達を下に見た言葉よ。
 正しい言葉の使い方じゃないわ。
 そんな言葉を使う方が野蛮なのよ。
 もう二度と使うんじゃないわよ)

 イーシスから本気で怒っている気持ちが伝わってきます。
 心の底から恐怖がわき上がってきます。
 私一人の時でなかったら、簡単に他人に恐怖感を見抜かれていました。
 それくらい顔色が変わり身体中が震えています。

(ごめんなさい、イーシス)

 私は直ぐに心の中で謝りました。

(……アグネスが悪くない事は分かっているわよ。
 全部間違った事を教え込まれたせいよ。
 一生懸命努力して覚えたことが間違っていたのよ。
 ただ私は信じる神が違うからと言って相手を下に見る奴が大嫌いなの。
 特にそれを言い訳にして力尽くで相手の物を奪う奴が大嫌い。
 正直に言えば殺してやりたいくらい大嫌いなのよ)

 普段は少し意地悪な所はあっても心優しいイーシスが、本気で殺意を表に表しているのですから、この件に関しては冗談も通用しないでしょうね。

(だったら領民にもちゃんと布告しておいた方がいいんじゃない。
 私達の領民があの人達に失礼な事をしちゃったら、イーシスは自分が許せなくなっちゃうんじゃないの)

(……そうね、アグネスにしたらいい事を言うじゃない。
 褒めてあげるわ、アグネス)

 イーシスが私の私的を受けて落ち込んでいるのが伝わってきました。
 怒りのあまりやるべき事を自分で思いつけなかった事を恥じているのです。
 恥じている分、照れ隠しに私に軽く八つ当たりしているのです。
 そんなイーシスをちょっと可愛いと思ってしまいました。

(うっさいわね、領民を集めて訓示するわよ)

 イーシスがさっき以上に照れています。
 本当に可愛い所がありますね。

「よく集まってくれました。
 今日は貴方達に言って聞かせることがあります。
 それは蛮族と呼ばれている、あそこにいる人達への呼び方よ態度です」

 イーシスは城の城壁に民を集めて話しました。
 城壁から濠の向こう側に集結している人達の事を説明したのです。

「あの人達はミンスタ王国に貶められていますが、私達と同じ人間です。
 私はあの人達と対等に付き合って行きたいと思っています。
 だからあの人達を貶めた言葉、蛮族と呼ぶことを禁じます。
 今日には使者を送って対等の会談を行おうと思っています。
 その事を決して忘れないように」

「「「「「は」」」」」

 領民はイーシスの言葉に素直に従ってくれました。
 彼らがイーシスの魔術に驚き畏怖している事は明らかです。
 その魔術が自分達に向けられる事を本能的に畏れているのです。
 でも恐れで従うのはプライドが許さないのです。
 だから忠誠心で従っていると自分を騙しているのです。
 そんな風に考えてしまう私は性格が悪いですね。

(お、いい男がいるじゃない。
 アグネスにあれくらいの雄々しい漢が似合いじゃないかな)
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