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第一章
第39話:騙し騙され
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アバディーン王国歴101年1月10日、新穀倉地帯、深雪視点
「本当に全ての村や街に山のような食糧があるのですね!」
カーツ様が私の願いを聞き入れてくださいました。
記憶が全て戻り、身体も救国の旅を終えた直後の姿になりました。
ただ、酷かった傷跡は全て直して頂きました。
私も女性ですから、顔にまである醜い傷跡は消したかったのです。
聞き届けていただけたのは姿形だけではありません。
村や街の民が安心して暮らしているのか、飢えていないのかを確かめる事も、許して頂けました。
「聖女深雪様、何とかギリギリ生きて行ける状態でございます。
今少し多くの食糧を頂けるように、カーツ様に御口添え願いえないでしょうか?」
私が聖女らしく街の人に何か困っている事は無いかと尋ねると、カーツ様がおられない時を選んで頼まれてしまいました。
カーツ様が言っておられた通り、少しでもスキを見せると、私を騙し利用して利益を得ようとする者が近づいてきます。
この世界に、そんな人間が数多くいるのは以前から分かっていました。
本心ではとても腹立たしく感じていましたが、カーツ様やベンジャミン王の付けた密偵に聖女らしくみせるために、騙され利用されるフリをしていました。
私は、小悪人に騙されて利用されていたのではありません。
小悪人を利用して、愚かな聖女に見せかけていたのです。
カーツ様に同情していただき、優しくしていただきたかったから。
ベンジャミン王たちには、私を殺して次の聖女を召喚させないために。
ずるいと言われるかもしれませんが、私も必死だったのです。
自分の命がかかっていましたし、恋しい人に優しくしてもらいたかったのです。
(聖女深雪様、この件は使い魔である私から御主人様に報告させていただきます)
「ヒィイイイイイ、なんだ、なんだ、なんだ」
急に頭と心に念話が響いたので、小悪人が驚き慌てています。
私が1人でいると思い込んでいたようです。
慎重で心優しいカーツ様が、私を1人にする訳がありません。
強力な使い魔が常に私を守ってくれています。
たくさんいるカーツ様の使い魔の中でも最強の者たちだそうです。
(下郎、これ以上聖女深雪様の耳に薄汚い言葉を入れるようなら、裁きを待たずにこの場で殺してくれるぞ!)
「ヒィイイイイイ、お許しください、お許しください、お許しください!」
そう謝っていた小悪人が、瞬きする間に消えていなくなりました。
「殺してしまったのですか?」
(いえ、正式な裁きも行わずに殺したりはしません。
小汚い下種が、聖女深雪様と御主人様が無償の愛で食糧を与えてくださっているのに、量が少ないとウソを言って他人よりも多くの食糧を手に入れようとしました。
聖女深雪様を騙そうとした罪は何よりも重いですが、厳しい罰を与える場合は正式な裁判を開く事になっております)
「そうなのですね、カーツ様の公平さはずっと変わりませんね」
(以前のお主人様の事は分かりませんが、恐らくそうだと思います)
「カーツ様の事をもっとたくさん知りたいですか?」
(はい、知りたいです、ですが、御主人様から教えていただいていません)
「もしできるのなら、私の記憶を見ても良いのですよ?」
(有り難いお言葉ですが、御主人様の許可なく聖女深雪様の記憶を見る事などできませんし、必要なら御主人様が教えてくださると思います)
「そうですか、使い魔はみんな忠誠心が高いのですね」
(はい、使い魔は御主人様の魔力を頂いて生み出されました。
中級以上の使い魔に至っては、御主人様の血までいただいています。
ある意味御主人様の血肉を分けた子供でございます。
忠誠心以前に、御主人様の意のままに動くのが当然でございます)
「……では、何があっても、命を捨ててでも、私を守ってくれるのも、カーツ様の意思だと思っていいのですね?」
(はい、御主人様は、自分の命を捨てる事になっても、聖女深雪様を守るお気持ちでございます)
「とてもうれしいですが、カーツ様に死んでもらいたくないです。
私を守るよりもカーツ様を守るのを優先してくれませんか?」
(それは無理でございます、カーツ様から自分よりも聖女深雪様を優先するように命じられております)
「優先しろと言われた私が、カーツ様を優先しろ、と言ってもですか?」
(はい、聖女深雪様が何を言われても、特に聖女深雪様が自分よりも他人を優先しろと言われた場合には、気絶させてでも、聖女深雪様を助けて逃げろと命じられておりますので、無理でございます)
カーツ様は、私が演じ続けてきた聖女のフリを本気で信じてくださっています。
少々胸が痛みますし、不安でもあります。
悪い女に簡単に騙されてしまわれるのではないでしょうか?
あ、でも、カミラ侯爵令嬢の仮面はしっかり見抜いておられました。
あれだけ多くの男性を騙し利用してきた、カミラ嬢の演技は見抜けて、私の演技を見抜けないとはおかしい気がします……
(聖女深雪様、カーツ様が来られます。
身嗜みを整えなくて良いのですか?
「ありがとうございます、直ぐに化粧を直しますね」
「本当に全ての村や街に山のような食糧があるのですね!」
カーツ様が私の願いを聞き入れてくださいました。
記憶が全て戻り、身体も救国の旅を終えた直後の姿になりました。
ただ、酷かった傷跡は全て直して頂きました。
私も女性ですから、顔にまである醜い傷跡は消したかったのです。
聞き届けていただけたのは姿形だけではありません。
村や街の民が安心して暮らしているのか、飢えていないのかを確かめる事も、許して頂けました。
「聖女深雪様、何とかギリギリ生きて行ける状態でございます。
今少し多くの食糧を頂けるように、カーツ様に御口添え願いえないでしょうか?」
私が聖女らしく街の人に何か困っている事は無いかと尋ねると、カーツ様がおられない時を選んで頼まれてしまいました。
カーツ様が言っておられた通り、少しでもスキを見せると、私を騙し利用して利益を得ようとする者が近づいてきます。
この世界に、そんな人間が数多くいるのは以前から分かっていました。
本心ではとても腹立たしく感じていましたが、カーツ様やベンジャミン王の付けた密偵に聖女らしくみせるために、騙され利用されるフリをしていました。
私は、小悪人に騙されて利用されていたのではありません。
小悪人を利用して、愚かな聖女に見せかけていたのです。
カーツ様に同情していただき、優しくしていただきたかったから。
ベンジャミン王たちには、私を殺して次の聖女を召喚させないために。
ずるいと言われるかもしれませんが、私も必死だったのです。
自分の命がかかっていましたし、恋しい人に優しくしてもらいたかったのです。
(聖女深雪様、この件は使い魔である私から御主人様に報告させていただきます)
「ヒィイイイイイ、なんだ、なんだ、なんだ」
急に頭と心に念話が響いたので、小悪人が驚き慌てています。
私が1人でいると思い込んでいたようです。
慎重で心優しいカーツ様が、私を1人にする訳がありません。
強力な使い魔が常に私を守ってくれています。
たくさんいるカーツ様の使い魔の中でも最強の者たちだそうです。
(下郎、これ以上聖女深雪様の耳に薄汚い言葉を入れるようなら、裁きを待たずにこの場で殺してくれるぞ!)
「ヒィイイイイイ、お許しください、お許しください、お許しください!」
そう謝っていた小悪人が、瞬きする間に消えていなくなりました。
「殺してしまったのですか?」
(いえ、正式な裁きも行わずに殺したりはしません。
小汚い下種が、聖女深雪様と御主人様が無償の愛で食糧を与えてくださっているのに、量が少ないとウソを言って他人よりも多くの食糧を手に入れようとしました。
聖女深雪様を騙そうとした罪は何よりも重いですが、厳しい罰を与える場合は正式な裁判を開く事になっております)
「そうなのですね、カーツ様の公平さはずっと変わりませんね」
(以前のお主人様の事は分かりませんが、恐らくそうだと思います)
「カーツ様の事をもっとたくさん知りたいですか?」
(はい、知りたいです、ですが、御主人様から教えていただいていません)
「もしできるのなら、私の記憶を見ても良いのですよ?」
(有り難いお言葉ですが、御主人様の許可なく聖女深雪様の記憶を見る事などできませんし、必要なら御主人様が教えてくださると思います)
「そうですか、使い魔はみんな忠誠心が高いのですね」
(はい、使い魔は御主人様の魔力を頂いて生み出されました。
中級以上の使い魔に至っては、御主人様の血までいただいています。
ある意味御主人様の血肉を分けた子供でございます。
忠誠心以前に、御主人様の意のままに動くのが当然でございます)
「……では、何があっても、命を捨ててでも、私を守ってくれるのも、カーツ様の意思だと思っていいのですね?」
(はい、御主人様は、自分の命を捨てる事になっても、聖女深雪様を守るお気持ちでございます)
「とてもうれしいですが、カーツ様に死んでもらいたくないです。
私を守るよりもカーツ様を守るのを優先してくれませんか?」
(それは無理でございます、カーツ様から自分よりも聖女深雪様を優先するように命じられております)
「優先しろと言われた私が、カーツ様を優先しろ、と言ってもですか?」
(はい、聖女深雪様が何を言われても、特に聖女深雪様が自分よりも他人を優先しろと言われた場合には、気絶させてでも、聖女深雪様を助けて逃げろと命じられておりますので、無理でございます)
カーツ様は、私が演じ続けてきた聖女のフリを本気で信じてくださっています。
少々胸が痛みますし、不安でもあります。
悪い女に簡単に騙されてしまわれるのではないでしょうか?
あ、でも、カミラ侯爵令嬢の仮面はしっかり見抜いておられました。
あれだけ多くの男性を騙し利用してきた、カミラ嬢の演技は見抜けて、私の演技を見抜けないとはおかしい気がします……
(聖女深雪様、カーツ様が来られます。
身嗜みを整えなくて良いのですか?
「ありがとうございます、直ぐに化粧を直しますね」
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