8 / 44
第一章
第8話:豊穣の楽園
しおりを挟む
アバディーン王国歴100年9月24日、魔境、聖女深雪視点
「聖女深雪様、この世界の者が申し訳できない悪事を働いてしまいました。
深雪様を無理矢理この世界に連れてきてしまいました。
本当なら直ぐに元の世界、日本にお帰ししなければいけないのですが、重ねて申し訳ない事なのですが、星々の並びが悪く時間がかかってしまいます」
私は悪人に異世界に連れてこられたそうです。
この世界に連れてこられて初めて会ったカーツさんが教えてくれました。
カーツさんは、私を無理矢理この世界に連れて来た国の貴族だそうです。
日本には天皇陛下たちしか王侯貴族がいませんから、貴族と言われてもよく分かりませんが、国会議員のような偉い人のようです。
最初は驚きましたし怖くもありました。
ですが、カーツさんが優しく親切にしてくれましたので、直ぐに安心できました。
私はこう見えてどこでもやっていける性格なのです。
赤ちゃんポストに捨てられていた私は、児童養護施設で育ちました。
児童養護施設で幸せに暮らせる子もいれば、幸せに暮らせない子もいる。
血のつながった家族がいなくても平気な子もいれば、辛く思う子もいる。
私はどうしても日本に帰りたい訳ではありません。
飢える事なく安心して暮らせるなら、異世界でもかまわないのです。
もう1度会いたい子が全くいない訳ではありません。
かと言って、どうしてもと言うほどでもありません。
好き嫌いしないように生きてきたから、食べ物が粗末でも大丈夫だと思っていましたが、意外と食べ物には執着するようです。
異世界と言われたので、食べられる物が限られると思っていましたが、実際には養護施設にいた時よりも自由に食物を選べるようになりました。
カーツさんが毎日3度食べたい物を聞いて作ってくれるのです。
それも大雑把な聞き方ではなく、事細かに聞いてくれるのです。
児童養護施設にいた栄養士さんよりも色んな物を作ってくれました。
毎食肉を食べたいと言ってもその通り作ってくれました。
栄養バランスを取りなさいと、野菜や果物も食べるように言われたけれど、美味しい果物を毎食食べられるので文句なんてありません。
異世界だから、マヨネーズやとんかつソース、醤油や味噌はないと思っていたけれど、少し風味が違うだけのほぼ同じ物がありました。
メーカーによる違いだと言われれば、この程度ならしかたがないと思う程度の違いしかありませんでした。
洋菓子や和菓子は幾ら何でも食べられないと思っていたのに、簡単なモノならカーツさんが作ってくれるのです。
機械が無いから全部手作業で大変だと思って遠慮していたら、魔術があるから平気だと言われてしまいました。
魔術も、私が使いたいと言ったら教えてくれました。
火や水が自分の手の先から出て驚きました!
もっと魔術が上手くなりたい!
「ヒィイイイイイン!」
馬が私を呼んでいる、遊んで欲しいと呼んでいる!
「なに、何がしたいの?」
「ヒィイイイイイン!」
最初は100頭も馬がいるのにとても驚きました。
正直怖いと思ってしまいました。
でもカーツさんが叱ると涙を流して謝るので、可愛いと思うようになりました。
「馬車を引いてくれるの?」
「ヒィイイイイイン!」
私と遊びたい子は、馬車を引く子もいれば背中に乗せようとする子もいます。
自分が遊んでいる所を見ていて欲し子は、急に飛び跳ねたり横に飛んだりします。
私が拍手してあげると、とても喜んで、もっと激しく飛び跳ねます。
多くの子は、カーツさんが木々を伐採した後に、牧草を生やした場所にいます。
牧場と呼ぶべきなのでしょうが、先の景色が霞んで見えるほど広大です。
馬たちは、牧場で私と遊ぶ時以外はのんびりと牧草を食べています。
甘い物が好きな子は、果樹に実るリンゴやナシ、カキやバナナを食べています。
豆が好きな子もいて、牧場には多くの豆が植えられています。
とんでもなくたくさん育てているので、取り合いにならないです。
少し不思議に思ったのでカーツさんに聞いてみました。
日本ではハウス栽培や高地栽培などがあったし、輸入もあったから、季節に関係なく何時でも好きなものを食べる事ができました。
でも、異世界では季節の制限があると思ったのです。
旬、と言うモノがあって、限られた季節にしか食べられない物が多いはずです。
児童養護施設では、予算の都合で旬以外は食べられない果物がありました。
「ああ、それは大丈夫だ、この世界には魔術がある。
その気になれば、旬以外にも果物を実らせられる。
特にここは魔境だから、自分の魔力を使う事なく、地脈の魔力を利用するだけで果物を何時でも実らせられる。
食べたい果物があるなら言ってみなさい、今直ぐに実らせてあげる」
カーツさんがそう言ってくれたので、日本では食べられなかった、シャインマスカットが食べたいと言ってみました。
全く同じ物が食べられると思った訳ではありません。
マヨネーズやソースのように、とても近い物が食べられると思っていたのです。
色や形は違うと思っていたのですが……
確かに、テレビやスーパーで見た事のあるシャインマスカットでした。
不思議に思ったのは、何も説明しないのに、見た目が同じだった事です。
カーツさんは、どうやって日本の果物や調味料を再現しているのでしょうか?
「聖女深雪様、この世界の者が申し訳できない悪事を働いてしまいました。
深雪様を無理矢理この世界に連れてきてしまいました。
本当なら直ぐに元の世界、日本にお帰ししなければいけないのですが、重ねて申し訳ない事なのですが、星々の並びが悪く時間がかかってしまいます」
私は悪人に異世界に連れてこられたそうです。
この世界に連れてこられて初めて会ったカーツさんが教えてくれました。
カーツさんは、私を無理矢理この世界に連れて来た国の貴族だそうです。
日本には天皇陛下たちしか王侯貴族がいませんから、貴族と言われてもよく分かりませんが、国会議員のような偉い人のようです。
最初は驚きましたし怖くもありました。
ですが、カーツさんが優しく親切にしてくれましたので、直ぐに安心できました。
私はこう見えてどこでもやっていける性格なのです。
赤ちゃんポストに捨てられていた私は、児童養護施設で育ちました。
児童養護施設で幸せに暮らせる子もいれば、幸せに暮らせない子もいる。
血のつながった家族がいなくても平気な子もいれば、辛く思う子もいる。
私はどうしても日本に帰りたい訳ではありません。
飢える事なく安心して暮らせるなら、異世界でもかまわないのです。
もう1度会いたい子が全くいない訳ではありません。
かと言って、どうしてもと言うほどでもありません。
好き嫌いしないように生きてきたから、食べ物が粗末でも大丈夫だと思っていましたが、意外と食べ物には執着するようです。
異世界と言われたので、食べられる物が限られると思っていましたが、実際には養護施設にいた時よりも自由に食物を選べるようになりました。
カーツさんが毎日3度食べたい物を聞いて作ってくれるのです。
それも大雑把な聞き方ではなく、事細かに聞いてくれるのです。
児童養護施設にいた栄養士さんよりも色んな物を作ってくれました。
毎食肉を食べたいと言ってもその通り作ってくれました。
栄養バランスを取りなさいと、野菜や果物も食べるように言われたけれど、美味しい果物を毎食食べられるので文句なんてありません。
異世界だから、マヨネーズやとんかつソース、醤油や味噌はないと思っていたけれど、少し風味が違うだけのほぼ同じ物がありました。
メーカーによる違いだと言われれば、この程度ならしかたがないと思う程度の違いしかありませんでした。
洋菓子や和菓子は幾ら何でも食べられないと思っていたのに、簡単なモノならカーツさんが作ってくれるのです。
機械が無いから全部手作業で大変だと思って遠慮していたら、魔術があるから平気だと言われてしまいました。
魔術も、私が使いたいと言ったら教えてくれました。
火や水が自分の手の先から出て驚きました!
もっと魔術が上手くなりたい!
「ヒィイイイイイン!」
馬が私を呼んでいる、遊んで欲しいと呼んでいる!
「なに、何がしたいの?」
「ヒィイイイイイン!」
最初は100頭も馬がいるのにとても驚きました。
正直怖いと思ってしまいました。
でもカーツさんが叱ると涙を流して謝るので、可愛いと思うようになりました。
「馬車を引いてくれるの?」
「ヒィイイイイイン!」
私と遊びたい子は、馬車を引く子もいれば背中に乗せようとする子もいます。
自分が遊んでいる所を見ていて欲し子は、急に飛び跳ねたり横に飛んだりします。
私が拍手してあげると、とても喜んで、もっと激しく飛び跳ねます。
多くの子は、カーツさんが木々を伐採した後に、牧草を生やした場所にいます。
牧場と呼ぶべきなのでしょうが、先の景色が霞んで見えるほど広大です。
馬たちは、牧場で私と遊ぶ時以外はのんびりと牧草を食べています。
甘い物が好きな子は、果樹に実るリンゴやナシ、カキやバナナを食べています。
豆が好きな子もいて、牧場には多くの豆が植えられています。
とんでもなくたくさん育てているので、取り合いにならないです。
少し不思議に思ったのでカーツさんに聞いてみました。
日本ではハウス栽培や高地栽培などがあったし、輸入もあったから、季節に関係なく何時でも好きなものを食べる事ができました。
でも、異世界では季節の制限があると思ったのです。
旬、と言うモノがあって、限られた季節にしか食べられない物が多いはずです。
児童養護施設では、予算の都合で旬以外は食べられない果物がありました。
「ああ、それは大丈夫だ、この世界には魔術がある。
その気になれば、旬以外にも果物を実らせられる。
特にここは魔境だから、自分の魔力を使う事なく、地脈の魔力を利用するだけで果物を何時でも実らせられる。
食べたい果物があるなら言ってみなさい、今直ぐに実らせてあげる」
カーツさんがそう言ってくれたので、日本では食べられなかった、シャインマスカットが食べたいと言ってみました。
全く同じ物が食べられると思った訳ではありません。
マヨネーズやソースのように、とても近い物が食べられると思っていたのです。
色や形は違うと思っていたのですが……
確かに、テレビやスーパーで見た事のあるシャインマスカットでした。
不思議に思ったのは、何も説明しないのに、見た目が同じだった事です。
カーツさんは、どうやって日本の果物や調味料を再現しているのでしょうか?
119
お気に入りに追加
278
あなたにおすすめの小説
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる