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第一章
第5話:目には目を歯には歯を
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「ちゃんと理由を言わないか。
正当な理由があるのならこの頭を地につけて詫びるぞ。
どうしたのだ、まさかちゃんとした理由もなしに私を非難したのか。
その口は嘘偽りや悪口陰口しか喋れないのか。
そのような口は不要どころか迷惑しか生み出さないな。
舌を抜いて嘘偽りや悪口陰口を言えなくするのがこの世の為であろう」
アラステア王弟はそう言うと粉々に砕いた王太子の顎を開かせた。
何の躊躇いもなく王太子の舌を右手の親指と人差し指でつまんだ。
流れるような動作で王太子の舌を摘まみ潰して引き千切りやすくした。
その上で予備動作もなしに剛力に任せて王太子の舌を引き千切った。
「ウッグゥグギャウグオ」
悲鳴をあげることもできなかった。
情けない悲鳴を聞きたくない王弟の計算だった。
最初に舌を摘まみ潰す事で、大量の内出血を起こさせていいた。
その状態で舌を引き千切ったので、大量の出血が口の中に溢れていた。
その大量出血が邪魔して王太子は悲鳴が出せず噎せ返っていたのだ。
「本当に情けない奴だな。
それで魔獣から国民を護る王族の責任が果たせるのか。
アマーリエ嬢に難癖をつけて婚約を辞退させて、次女のアレグザンドラを婚約者に据えるなど長幼の序を無視している。
自分が長幼の序を無視したのだから、長年だから王太子だとはいえまい。
とっとと王太子の座を辞退して修道院でも入るのだな。
未練たらしく王太子の座に居座るようなら、私が毎日お前がやった事を想い知らせてやるから、その覚悟でいるのだな」
王太子が逃げられないように脅かした王弟は、今度は元凶を正すことにした。
そもそもの原因は、アレグザンドラが姉のアマーリエを押しのけて王太子妃の座を手に入れようとした事に始まる。
一番の悪人は王太子ではなくアレグザンドラなのだ。
「さて、この無責任な腐れ外道を操って長幼の序を無視させた雌豚にも責任がある。
本来女子供に手を出すのは騎士の道に反するのだが、相手が仕えるべき主筋を陥れたとなれば話は違ってくる。
姉とはいえアマーリエ嬢は王太子の婚約者に決まっていたのだ。
つまり仕えるべき主君だという事だ。
その主君を陥れて王太子妃に成り代わろうなど謀叛としか言えない。
今この場で断罪してくれる」
「ヒッィイイ、タスケテ、タスケテ、わたしはなにもしていない。
おうたいしがかってにぜんぶやったの。
私は何もしていないわ、だからゆるして、お願い」
王弟に睨まれた恐怖で大小便を垂れ流したアレグザンドラは、会場の床に黄色い汚れをこびり付かせながら、這いずって後ろに下がって逃げようとした。
立つことはもちろん視線を王弟から外す事もできず、ズリズリと這いずった。
「お待ちくださいアラステア王弟殿下。
どれほどの悪事を企んだといってもアレグザンドラは私の妹です。
いかに殿下といえども目の前で非道な断罪を行うのは許せません。
どのような罪を犯そうともアレグザンドラには公爵令嬢としての権利があります。
殿下も騎士ならば公爵令嬢の権利を守ってください」
アマーリエは、強大な相手に対する根源的な恐怖に萎える心身を叱咤激励して、アレグザンドラを護ろうと王弟の前に立ちふさがった。
正当な理由があるのならこの頭を地につけて詫びるぞ。
どうしたのだ、まさかちゃんとした理由もなしに私を非難したのか。
その口は嘘偽りや悪口陰口しか喋れないのか。
そのような口は不要どころか迷惑しか生み出さないな。
舌を抜いて嘘偽りや悪口陰口を言えなくするのがこの世の為であろう」
アラステア王弟はそう言うと粉々に砕いた王太子の顎を開かせた。
何の躊躇いもなく王太子の舌を右手の親指と人差し指でつまんだ。
流れるような動作で王太子の舌を摘まみ潰して引き千切りやすくした。
その上で予備動作もなしに剛力に任せて王太子の舌を引き千切った。
「ウッグゥグギャウグオ」
悲鳴をあげることもできなかった。
情けない悲鳴を聞きたくない王弟の計算だった。
最初に舌を摘まみ潰す事で、大量の内出血を起こさせていいた。
その状態で舌を引き千切ったので、大量の出血が口の中に溢れていた。
その大量出血が邪魔して王太子は悲鳴が出せず噎せ返っていたのだ。
「本当に情けない奴だな。
それで魔獣から国民を護る王族の責任が果たせるのか。
アマーリエ嬢に難癖をつけて婚約を辞退させて、次女のアレグザンドラを婚約者に据えるなど長幼の序を無視している。
自分が長幼の序を無視したのだから、長年だから王太子だとはいえまい。
とっとと王太子の座を辞退して修道院でも入るのだな。
未練たらしく王太子の座に居座るようなら、私が毎日お前がやった事を想い知らせてやるから、その覚悟でいるのだな」
王太子が逃げられないように脅かした王弟は、今度は元凶を正すことにした。
そもそもの原因は、アレグザンドラが姉のアマーリエを押しのけて王太子妃の座を手に入れようとした事に始まる。
一番の悪人は王太子ではなくアレグザンドラなのだ。
「さて、この無責任な腐れ外道を操って長幼の序を無視させた雌豚にも責任がある。
本来女子供に手を出すのは騎士の道に反するのだが、相手が仕えるべき主筋を陥れたとなれば話は違ってくる。
姉とはいえアマーリエ嬢は王太子の婚約者に決まっていたのだ。
つまり仕えるべき主君だという事だ。
その主君を陥れて王太子妃に成り代わろうなど謀叛としか言えない。
今この場で断罪してくれる」
「ヒッィイイ、タスケテ、タスケテ、わたしはなにもしていない。
おうたいしがかってにぜんぶやったの。
私は何もしていないわ、だからゆるして、お願い」
王弟に睨まれた恐怖で大小便を垂れ流したアレグザンドラは、会場の床に黄色い汚れをこびり付かせながら、這いずって後ろに下がって逃げようとした。
立つことはもちろん視線を王弟から外す事もできず、ズリズリと這いずった。
「お待ちくださいアラステア王弟殿下。
どれほどの悪事を企んだといってもアレグザンドラは私の妹です。
いかに殿下といえども目の前で非道な断罪を行うのは許せません。
どのような罪を犯そうともアレグザンドラには公爵令嬢としての権利があります。
殿下も騎士ならば公爵令嬢の権利を守ってください」
アマーリエは、強大な相手に対する根源的な恐怖に萎える心身を叱咤激励して、アレグザンドラを護ろうと王弟の前に立ちふさがった。
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