第十六王子の建国記

克全

文字の大きさ
上 下
104 / 142
本編

死闘

しおりを挟む
「これを、喰らえ」
デイヴィット筆頭魔導師と一緒にいた近衛騎士達が、次々と魔法を放った。
個人で会得した魔法ではなく、魔法道具による攻撃だ。
「その程度の攻撃が、我に通じると思っているのか」
「通じるか通じないかは、やってみなかれば分からんよ」
 中列と後列にいた近衛騎士が、次々と魔道具を使った魔法を放つが、全てが補助魔法であった。
「この程度の補助魔法で、我の動きを押しとどめられると思っているのか」
「王口を叩くのなら、儂の首を刎ねてからにするのだな」
「ならば、そうさせてもらおう」
 正妃殿下に憑依した魔族は、魔力で剣を創り出して、デイヴィット筆頭魔導師の首を刎ね飛ばそうとしたが、事前に何重にも重ね掛けしてあった防御魔法と、ドラゴンダンジョン産のドラゴン革鎧の所為で、成し遂げることは出来なかった。
 だがそれでも、デイヴィット筆頭魔導師の想定をはるかに超え、全ての防護魔法を切り破り、ドラゴン革鎧のネックガードさえ、魔力でボロボロにされてしまっていた。
「御下がり下さい」
 この場で最先任の近衛騎士隊長が、デイヴィット筆頭魔導師を庇って前に出た。
「御前から先に死ね」
 魔族は、魔力剣を振るって、近衛騎士隊長を斬り殺そうとしたが、がっちりと受け止められてしまった。
 こんなことは、人間界に来て初めての事なので、魔族は内心大きく驚いていた。
 アリステラ王国には、多くの魔境やダンジョンが存在し、そこから採取される素材を利用して、各種の魔道具はもちろん、魔剣や魔槍、魔鎧が創り出されていた。
 ドラゴンの素材から造られた魔法具と魔法武器の中には、魔族にすら通じるモノがあった。
 アンドルー王子と共に殺されたドラゴンダンジョン騎士団員も、万全の体制であったら、あのような殺され方はしなかっただろう。
 愛用の鎧を装備出来ていたら、例え相手が魔族であっても、一撃で絶命させられる事はなかっただろう。
 だが哀しい事に、ドラゴンダンジョン騎士団は、奇襲を許してしまった。
 そしてこの場でも、哀しい現実があった。
 近衛騎士団であろうと、貴重なドラゴン素材の武器と防具は、最先任隊長しか装備していなかった。
 鍛え抜かれた騎士隊長ではあるが、二カ国を支配下に置くほどの魔族に対抗するには、少々力が足らなかった。
 単に正面から戦うだけならば、背後にいる配下や、デイヴィット筆頭魔導師が支援魔法を放ってくれるので、互角に渡り合えただろう。
 だが魔族は、そんな戦い方をしてくれなかった。
「正体が露見した以上、魔力の衰えたこの身体よりは、貴男の身体の方が役に立ちそうですね」
事もあろうに、魔族は正妃殿下の身体を捨てて、騎士隊長の身体に憑依しようとしたのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

婚約破棄が成立したので遠慮はやめます

カレイ
恋愛
 婚約破棄を喰らった侯爵令嬢が、それを逆手に遠慮をやめ、思ったことをそのまま口に出していく話。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

婚約破棄は誰が為の

瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。 宣言した王太子は気付いていなかった。 この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを…… 10話程度の予定。1話約千文字です 10/9日HOTランキング5位 10/10HOTランキング1位になりました! ありがとうございます!!

処理中です...