85 / 142
本編
死闘
しおりを挟む
グギ!
爪長魔族の爪撃が、強固で一切の攻撃を受け付けないはずの属性竜の革鎧を貫き、ベン大将軍の心臓を 刺し貫いたと思われたその瞬間、鈍く大きな音を立て爪撃が受け止められた。
信じられないような表情を浮かべ、一瞬動きを止めた爪長魔族に向けて、ベン大将軍の長巻が一閃された!
驚愕の表情を浮かべたまま、一魔の爪長魔族が斜めに両断された。
続けざまに流れるような動きで、生き残りの高爪長魔族が次々と斬り捨てられていく。
その姿は洗練された舞踊のようで、香しい色気さえ匂うようだ。
だがその踊りの生み出すものは、毒々しい紫の血液をまき散らす、死屍累々たる凄惨な場面だった。
だが一方的に思われるベン大将軍の虐殺も、紙一重の勝負だと言える。
今迄エステ王国軍に放たれていた、大規模攻撃魔法が止んでいる。
さすがのベン大将軍もこの死闘に意識を集中しており、片手間に魔法を放つ余裕がないのだ。
上位種の高能力で生き残り、ベン大将軍を殺すべく反撃してきて来たはずの高爪長魔族が、一魔一魔斬り捨てられていく。
なかには竜革さえ切り裂く長く凶悪な爪を振るって、襲い掛かって来る爪長魔族もいたが、爪ごと一刀両断にされてしまう。
竜の革を切り裂く爪以上に強固な存在!
そんなものは、竜の爪・骨・角・牙しか存在しない。
ベン大将軍が若い頃に単独で狩った属性竜!
その属性竜の素材の中でも最も強固な竜牙!
その竜牙を、孤高の職人が一年以上の年月をかけて加工した、竜牙刀を刀身に使ったのが、ベン大将軍愛用の属性竜牙長巻なのだ!
だが実は、ベン大将軍は内心焦っていた。
本当は喉が渇きひりつくほどの危機感に苛まれていた。
何故なら、一旦消失していたはずのエステ王国軍陣内の魔力が、徐々に高まっていたのだ。
一方的に斬り殺されているように見える爪長魔族だが、実は味方の儀式魔法の時間を稼ぐために、命を投げ出していたのだ。
いや、爪長魔族達は犠牲になっている心算などなかった。
彼らは、自分達なら楽々勝てると思っていた。
一方的に人間を切り裂き殺す、遊びのような感覚で襲い掛かっていた。
だがそれが逆に五百を越える爪長魔族が、皆殺しにされそうになっている。
一般種ならともかく、いや、一般種の爪長魔族が人間に殺される事さえ、今までの魔生では考えられない事なのだが、高種の爪長魔族が人間に負けることなど認められることではなかったのだ。
人間界に出てきた爪長魔族が全て死に絶えることになったとしても、何としてでもベン大将軍を殺さずにはおれなかった。
だから頭では、不利だ勝てないと分かっていても、魔性が納得せず、攻撃を続けるのだった。
その爪長魔族の攻撃を、冷静に迎え撃って確実に斬り殺しているベン大将軍の内心は、危機感が頂点に達していた。
エステ王国軍陣内で高まっている魔力が、ついに頂点に達した事を、ベン大将軍の歴戦の感が捉えていたのだ。
その大魔力が自分に向かって放たれるのなら、とっさに防御して無効化することも可能だ。
だが幾つかに分けられて、広範囲に放たれたら、爪長魔族の攻撃に対応しながら防ぐのは不可能だ。
だが敵も馬鹿ではない。
ベン大将軍がとっさに防御する可能性は考えている。
だからベン大将軍が恐れていたように、百に分けてアリステラ王国王都騎士団に向けて放った!
爪長魔族の爪撃が、強固で一切の攻撃を受け付けないはずの属性竜の革鎧を貫き、ベン大将軍の心臓を 刺し貫いたと思われたその瞬間、鈍く大きな音を立て爪撃が受け止められた。
信じられないような表情を浮かべ、一瞬動きを止めた爪長魔族に向けて、ベン大将軍の長巻が一閃された!
驚愕の表情を浮かべたまま、一魔の爪長魔族が斜めに両断された。
続けざまに流れるような動きで、生き残りの高爪長魔族が次々と斬り捨てられていく。
その姿は洗練された舞踊のようで、香しい色気さえ匂うようだ。
だがその踊りの生み出すものは、毒々しい紫の血液をまき散らす、死屍累々たる凄惨な場面だった。
だが一方的に思われるベン大将軍の虐殺も、紙一重の勝負だと言える。
今迄エステ王国軍に放たれていた、大規模攻撃魔法が止んでいる。
さすがのベン大将軍もこの死闘に意識を集中しており、片手間に魔法を放つ余裕がないのだ。
上位種の高能力で生き残り、ベン大将軍を殺すべく反撃してきて来たはずの高爪長魔族が、一魔一魔斬り捨てられていく。
なかには竜革さえ切り裂く長く凶悪な爪を振るって、襲い掛かって来る爪長魔族もいたが、爪ごと一刀両断にされてしまう。
竜の革を切り裂く爪以上に強固な存在!
そんなものは、竜の爪・骨・角・牙しか存在しない。
ベン大将軍が若い頃に単独で狩った属性竜!
その属性竜の素材の中でも最も強固な竜牙!
その竜牙を、孤高の職人が一年以上の年月をかけて加工した、竜牙刀を刀身に使ったのが、ベン大将軍愛用の属性竜牙長巻なのだ!
だが実は、ベン大将軍は内心焦っていた。
本当は喉が渇きひりつくほどの危機感に苛まれていた。
何故なら、一旦消失していたはずのエステ王国軍陣内の魔力が、徐々に高まっていたのだ。
一方的に斬り殺されているように見える爪長魔族だが、実は味方の儀式魔法の時間を稼ぐために、命を投げ出していたのだ。
いや、爪長魔族達は犠牲になっている心算などなかった。
彼らは、自分達なら楽々勝てると思っていた。
一方的に人間を切り裂き殺す、遊びのような感覚で襲い掛かっていた。
だがそれが逆に五百を越える爪長魔族が、皆殺しにされそうになっている。
一般種ならともかく、いや、一般種の爪長魔族が人間に殺される事さえ、今までの魔生では考えられない事なのだが、高種の爪長魔族が人間に負けることなど認められることではなかったのだ。
人間界に出てきた爪長魔族が全て死に絶えることになったとしても、何としてでもベン大将軍を殺さずにはおれなかった。
だから頭では、不利だ勝てないと分かっていても、魔性が納得せず、攻撃を続けるのだった。
その爪長魔族の攻撃を、冷静に迎え撃って確実に斬り殺しているベン大将軍の内心は、危機感が頂点に達していた。
エステ王国軍陣内で高まっている魔力が、ついに頂点に達した事を、ベン大将軍の歴戦の感が捉えていたのだ。
その大魔力が自分に向かって放たれるのなら、とっさに防御して無効化することも可能だ。
だが幾つかに分けられて、広範囲に放たれたら、爪長魔族の攻撃に対応しながら防ぐのは不可能だ。
だが敵も馬鹿ではない。
ベン大将軍がとっさに防御する可能性は考えている。
だからベン大将軍が恐れていたように、百に分けてアリステラ王国王都騎士団に向けて放った!
0
お気に入りに追加
233
あなたにおすすめの小説
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
婚約破棄は誰が為の
瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。
宣言した王太子は気付いていなかった。
この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを……
10話程度の予定。1話約千文字です
10/9日HOTランキング5位
10/10HOTランキング1位になりました!
ありがとうございます!!
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる