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宮廷抗争編

12話

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 嘘や冗談ならよかったのですが、ルーカス様の言葉は本当でした。
 私も第一王女として育てられましたから、自国の行儀作法は学んでいます。
 各王国共通の行儀作法は何の問題もありません。
 ですが、皇国の行儀作法は王国とは違うのです。
 皇太子妃に相応しい立ち振る舞いなどできません!

 ですが、だからといって、ルーカス様を諦める事はできません!
 傍系皇族令嬢や皇国上級貴族令嬢の敵意の籠った視線などに負けません!
 ルーカス様は私の夫です。
 側妃ならいくらでも置くことになっても平気です。
 皇国の後継者は絶対に必要ですから。
 私も大陸に戦乱を起こしたいわけではありません。
 皇国の後継者問題が戦乱呼ぶことくらい分かっています。

「ふむ、ルーカスにも困ったものよ。
 イザベラ女王、分かっているだろうが、一人目の子供には皇国を継承してもらう。
 否やは許さん!」

 身体が動きません!
 これが大陸一の強大国を長年指導されてこられた、皇帝陛下の威厳というモノなのでしょう。
 全く異論をはさむことができません。
 抗弁も嘆願も口にできません。
 ですが、このまま何も言えずに謁見を終えるわけにはいきません。
 弱年とはいえ私も女王なのですから!

「恐れながら皇帝陛下。
 私も一国の女王でございます。
 家臣もいれば国民もおります。
 彼らの生末に責任がございます。
 ヴェイン王国はどうなるのですか?」

「黙りなさい!
 皇帝陛下に反論するなど不遜ですぞ、イザベラ女王!」

「黙れ!
 不遜はお前だ、ゴンサロ!
 イザベラは皇太子の正妃でありヴェイン王国の女王だ。
 陛下の敬称抜きで呼んでいいのは朕と皇太子だけじゃ。
 そのような常識もわきまえぬものの顔など見たくない。
 謹慎を申し付けるゆえ、領地に戻っておれ!
 余が許可するまで皇都に戻ること許さん!」

「陛下、お許しください皇帝陛下!
 臣が分をわきまえておりませんでした!
 どうか、どうか、どうか御許し下さい!」

「謝るのなら、朕より先にイザベラに謝るのが先じゃ!
 親衛隊!
 ゴンサロをつまみ出せ!
 これ以上余計な口を利くようなら、舌を斬り落とせ。
 余は二度とこの者の声を聴きたくない」

「「「「「は!」」」」」

 アラゴン侯爵ゴンサロが顔面蒼白です。
 いえ、その程度ではすみません。
 高熱に冒されたように、全身がガタガタと震えています。
 謁見の間にいる全ての皇族と名門高位貴族が、雷に打たれたように硬直し、事の成り行きに茫然自失となっています。

 今まで私を蔑んだ目で見ていた者達が、今は恐怖の対象のように見ています。
 私が彼らが口にした悪口を皇帝陛下に告げ口したら、どういう結果になるのでしょうか?
 彼らが処断されるのでしょうか?
 それとも私が罰せられるのでしょうか?
 全く先が読めません!
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