上 下
10 / 20
復讐編

9話

しおりを挟む
「まずはこの森で実戦訓練します。
 生き物を殺すには慣れが必要になります。
 イザベラ嬢には復讐するという明確な意思がおありなので、躊躇いなどないかもしれませんが、一瞬の遅れが死につながります。
 躊躇いなどあってはいけないのです」

「はい!
 躊躇いません。
 ですが、その、罪の無い民を巻き込むのは……」

「分かっていますよ。
 そのような事は騎士の名にかけてさせませんよ。
 安心されて下さい。
 ですが、イザベラ嬢を陥れた貴族士族は別です。
 彼らに雇われてイザベラ嬢に剣を向ける者も同様です。
 身分は平民でも、金で人の命を奪おうとする者は良民とは言えません、
 そのような者は、人の形はしていても人ではありません。
 そんな人擬きは情け容赦なく殺してもらいます」

「分かりました。
 ルーカス様のお言葉に従います。
 相手の見た目が可愛い生き物でも、躊躇わずに殺します」

 そうは口にしましたが、実際には時々躊躇してしまいました。
 あまりにも人に似た鬼種がいたのです。
 全身毛だらけだったり、肌が鱗で覆われていたり、とても人とは思えない緑の肌だったりすると、人とは思わずに殺す事ができました。
 
 ですが人に似た鬼種の場合は、一瞬躊躇ってしまいます。
 そのたびに魔法の発動が遅れてしまい、ルーカス様から厳しい注意を受ける事になってしまいました。
 ですがその厳しい注意のなかに、温かい思いやりがるのが分かるので、叱られたいという想いが心の奥底に湧いてしまいます。

 魔竜境で斃したコボルトは、五十頭の群れを一瞬で全滅させられるようになり、同じように五十頭くらいの群れを作るゴブリンも、一瞬で全滅させられます。
 オークは二十頭くらいの群れしか作らないのですが、五十頭いたとして、いえ、百頭いたとしても同じ魔力で全滅させられます。

 生命力が強く、ケガした所を再生してしまうオーガやトロールも、急所に的確に魔法を叩き込めれば、同じ魔力で百頭同時に斃せるようになります。
 いえ、今以上に細やかな魔力調整が出来るようになれば、逃げたリ避けたりする百頭の急所を狙えるようになれば、もっと少ない魔力で百頭を同時に斃す事が出来るようになると、ルーカス様は教えてくださいました。

 実際にそれが可能だという事は、ルーカス様が手本を示してくださいました。
 その速さと強さは、眼を見張るモノがありました。
 最初に出会った時は、魔竜を斃すなんてどれほど強い方なのか、それとも自信過剰な方なのか、判断できませんでした。

 無償の愛で助けて頂き、自信過剰な方ではないと理解できましたが、どれほど強いのか分かっていませんでした。
 ですが手取り足取り魔法を教えていただいて、上級魔法使い並みだと言って頂けるようになって、ようやくルーカス様の強さに畏怖する事ができるようになりました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が王女だと婚約者は知らない ~平民の子供だと勘違いして妹を選んでももう遅い。私は公爵様に溺愛されます~

上下左右
恋愛
 クレアの婚約者であるルインは、彼女の妹と不自然なほどに仲が良かった。  疑いを持ったクレアが彼の部屋を訪れると、二人の逢瀬の現場を目撃する。だが彼は「平民の血を引く貴様のことが嫌いだった!」と居直った上に、婚約の破棄を宣言する。  絶望するクレアに、救いの手を差し伸べたのは、ギルフォード公爵だった。彼はクレアを溺愛しており、不義理を働いたルインを許せないと報復を誓う。  一方のルインは、後に彼女が王族だと知る。妹を捨ててでも、なんとか復縁しようと縋るが、後悔してももう遅い。クレアはその要求を冷たく跳ねのけるのだった。  本物語は平民の子だと誤解されて婚約破棄された令嬢が、公爵に溺愛され、幸せになるまでのハッピーエンドの物語である

どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら

風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」 伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。 男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。 それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。 何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。 そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。 学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに! これで死なずにすむのでは!? ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ―― あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?

正妃に選ばれましたが、妊娠しないのでいらないようです。

ララ
恋愛
正妃として選ばれた私。 しかし一向に妊娠しない私を見て、側妃が選ばれる。 最低最悪な悪女が。

前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。 老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。 そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。

元平民の義妹は私の婚約者を狙っている

カレイ
恋愛
 伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。  最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。 「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。  そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。  そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。

婚約破棄が成立したので遠慮はやめます

カレイ
恋愛
 婚約破棄を喰らった侯爵令嬢が、それを逆手に遠慮をやめ、思ったことをそのまま口に出していく話。

豹*獣人騎士の寵愛

yu-kie
恋愛
マナ国から連れてこられた人質の王女リシア・マナ。獣人の国クラにきてから図書館の管理を手伝う事に。白豹騎士は人間の少女リシアを美味しそうだと興味をいだきエスカレートしてゆくが、次第に気持ちは変化して…。二人はどうなるのか?

さっさと離婚したらどうですか?

杉本凪咲
恋愛
完璧な私を疎んだ妹は、ある日私を階段から突き落とした。 しかしそれが転機となり、私に幸運が舞い込んでくる……

処理中です...