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復讐編
1話
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「可哀想だが、イザベラには王女の責任を果たしてもらわなければならなくなった」
嘘です。
国王陛下は悲しんでいる振りをしているだけです。
「本当に可哀想な子。
私が代われるものなら代わってあげたいわ」
大嘘です。
我が身が一番可愛い身勝手な王妃が、私の身代わりになる事は絶対にありません。
「民のためにその身を犠牲にされる御姉様は、私の誇りです。
後の事は心配されないでください」
最後に本音が見えましたね。
私を犠牲にした後で全てを手に入れるつもりなのでしょう。
強欲で冷酷、残忍で陰湿、美しい容姿からは想像できない極悪非道な王女です。
こんな人達が血の繋がった家族だなんて、信じたくありません。
「イザベラ王女殿下。
貴女の尊い犠牲は生涯忘れません。
気高い貴女の婚約者に選ばれていたことは、私の誇りです」
ああ、ダニエル!
貴男だけは私を庇ってくれると思っていたのに。
貴男までミアに誘惑されて私を見捨てるなんて。
全ては神の御心のままにという意味を込めて、先代ブレットソー公爵は貴男にダニエルという名をつけたと言っていたのに。
「ダニエル殿。
御姉様の御心を乱してはいけませんわ。
御姉様亡き後の国の生末が大変でございますから、あちらでゆっくりと相談いたしませんか?」
ミアがダニエル腕をとって自分の胸に押し付けています。
私を死地に追いやり、婚約者を奪ったことを勝ち誇っているのです。
ダニエルが満更でもない表情を浮かべています。
こんな人を愛していたかと思うと、情けなく、哀しく、悔しいです。
ミアの眼には私を陥れた満足感と優越感が込められています。
それを隠すことなく私に視線を向けています。
「あ~、我らは大魔境までイザベラを送ろうではないか」
「そうですわ!
民のために魔竜の生贄になってくれるイザベラを、最後まで送ってあげましょう」
もう父とも母とも思っていない国王と王妃が、貴族達のミアとダニエルに向けられた憎しみの籠った眼を気にして、私を急いで大魔境に追いやろうとします。
もしかしたら、心ある貴族が私を逃がそうとするのではないかと、心配しているのかもしれません。
そうですね。
そんな心ある貴族もいるかもしれません。
少なくとも先代ブレットソー公爵はそういう誇り高い貴族でした。
あの方が生きてくださっていた間は、ミアも好き勝手できませんでした。
国王も王妃も、極端にミアに依怙贔屓できませんでした。
でも、もう先代ブレットソー公爵はおられません。
第一王女である私を立ててくれていた貴族は、徐々に王宮から遠ざけられました。
不慮の死を遂げた者も少なくありません。
国王がやったのか王妃がやったのか?
ミアが直接手を下した可能性もありまます。
誰だって命は大切です。
私を立ててくれる者も庇ってくれる者もいなくなりました。
嘘です。
国王陛下は悲しんでいる振りをしているだけです。
「本当に可哀想な子。
私が代われるものなら代わってあげたいわ」
大嘘です。
我が身が一番可愛い身勝手な王妃が、私の身代わりになる事は絶対にありません。
「民のためにその身を犠牲にされる御姉様は、私の誇りです。
後の事は心配されないでください」
最後に本音が見えましたね。
私を犠牲にした後で全てを手に入れるつもりなのでしょう。
強欲で冷酷、残忍で陰湿、美しい容姿からは想像できない極悪非道な王女です。
こんな人達が血の繋がった家族だなんて、信じたくありません。
「イザベラ王女殿下。
貴女の尊い犠牲は生涯忘れません。
気高い貴女の婚約者に選ばれていたことは、私の誇りです」
ああ、ダニエル!
貴男だけは私を庇ってくれると思っていたのに。
貴男までミアに誘惑されて私を見捨てるなんて。
全ては神の御心のままにという意味を込めて、先代ブレットソー公爵は貴男にダニエルという名をつけたと言っていたのに。
「ダニエル殿。
御姉様の御心を乱してはいけませんわ。
御姉様亡き後の国の生末が大変でございますから、あちらでゆっくりと相談いたしませんか?」
ミアがダニエル腕をとって自分の胸に押し付けています。
私を死地に追いやり、婚約者を奪ったことを勝ち誇っているのです。
ダニエルが満更でもない表情を浮かべています。
こんな人を愛していたかと思うと、情けなく、哀しく、悔しいです。
ミアの眼には私を陥れた満足感と優越感が込められています。
それを隠すことなく私に視線を向けています。
「あ~、我らは大魔境までイザベラを送ろうではないか」
「そうですわ!
民のために魔竜の生贄になってくれるイザベラを、最後まで送ってあげましょう」
もう父とも母とも思っていない国王と王妃が、貴族達のミアとダニエルに向けられた憎しみの籠った眼を気にして、私を急いで大魔境に追いやろうとします。
もしかしたら、心ある貴族が私を逃がそうとするのではないかと、心配しているのかもしれません。
そうですね。
そんな心ある貴族もいるかもしれません。
少なくとも先代ブレットソー公爵はそういう誇り高い貴族でした。
あの方が生きてくださっていた間は、ミアも好き勝手できませんでした。
国王も王妃も、極端にミアに依怙贔屓できませんでした。
でも、もう先代ブレットソー公爵はおられません。
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不慮の死を遂げた者も少なくありません。
国王がやったのか王妃がやったのか?
ミアが直接手を下した可能性もありまます。
誰だって命は大切です。
私を立ててくれる者も庇ってくれる者もいなくなりました。
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