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第1章

第28話:ゴブリンダンジョン2

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神歴1817年皇歴213年2月29日子爵家ゴブリンダンジョン
ロジャー皇子視点

 俺は、守役で騎士隊長のアントニオ、騎士長のウッディ、騎士だが血のつながった叔父であるスレッガーに部隊指揮をやらせてみた。

 アントニオは、まずまずの指揮能力をみせた。
 ウッディもアントニオには及ばなかったが、騎士長として最低限の能力があった。

 そんな2人でも、身分や地位を笠に着て指揮権を要求できないくらい、明らかに指揮能力高かったのはスレッガー叔父上だった。

 俺が教えたのもあるが、2歳や3歳の甥っ子に負けたくないという、叔父上の反骨心が良い方に現れた結果だ。

「この実戦訓練には大切な家臣の命がかかっている。
 2人の身分や地位のために、家臣の命を危険にさらす訳にはいかない。
 俺がいない間の指揮はスレッガーに取らせる。
 不服のある者はいるか?」

「ございません、スレッガー殿の指揮に従います」

 騎士隊長のアントニオが誰よりも先に自分の実力の低さを認めた。

「私もスレッガー殿の指揮に従います」

 騎士長のウッディも認めてくれたが、フォローをしておく方が良いだろう。

「スレッガー、ウッディ、2人の勇気ある判断をうれしく思う。
 それに、指揮能力も個人的な戦闘能力も、これから伸ばしていける。
 俺が命じた実戦訓練とは別に、自分の家臣を率いて実戦訓練すれば良い」

「はっ、有難き幸せでございます」
「私も家臣を率いて実戦訓練をさせていただきます」

 スレッガー叔父上への指示を終えてから、俺は地上に戻って休むと見せかけて、1人で地下5階に向かった。

 1体のヒュージゴブリンに率いられた1000体のゴブリン部隊だ。
 10体ビッグゴブリンに率いられた、地下4階に現れる100体のゴブリン部隊が、10個連携して襲って来る恐ろしい階層だ。

 子爵家の騎士や徒士が連携しても歯が立たないのも当然だ。
 領民1万人程度の領地だと、常時召し抱えられる騎士と徒士は100人少しだ。

 領内の冒険者を強制徴募しても500人が限界だろう。
 体力回復薬や魔力回復薬をたくさん使ってギリギリ勝てるか勝てないか。
 とてもではないが利益を出す狩りにはならない。

「テン・サゥザンド・マジカル・パワー」

 俺がやるのは、いつも肉ダンジョンでやっているのと同じだ。
 1万の魔力塊を常時周囲に展開させて攻防の力とする。
 1000程度が相手なら、その内の2割を叩きつければ瞬殺できる。

 ヒュージゴブリンを瞬殺するには100個必要だが、ビッグゴブリンが相手なら10個で十分で、ホブゴブリンなら1個でもお釣りがくる。

 というよりは、魔力を無駄にしないように、1個の魔力塊にはホブゴブリンを確実に倒せる魔力を込めている。

 地下6階からは、シャーマンヒュージゴブリン、プリーストヒュージゴブリン、ファイターヒュージゴブリンが現れるようになった。
 1番弱いゴブリンがビッグゴブリンなのが笑ってしまう。

 10個の100体部隊を、4体のファイターヒュージゴブリンと、3体ずつのシャーマンヒュージゴブリンとプリーストヒュージゴブリンが指揮を執る。

 100個の10体部隊は、1体のビッグゴブリンが指揮を執り、5体のファイタービッグゴブリンと、2体ずつのシャーマンビッグゴブリンとプリーストビッグゴブリンでなりたっている。

 1番小さな10体の部隊でも攻撃と回復の魔術が使えるという、並の人間軍では編制できない魔術編成だ。

 アステリア皇国貴族の中で最強と言われているハントリー侯爵家の軍でも、ゴブリンダンジョン地下6階では負けてしまう可能性がある。

 レベルの上がった騎士や徒士が味方にいない限り、惰弱になった皇国軍ではとても勝てないだろう。

 この世界の不条理な所は、圧倒的な力を持った者が味方にいたら、数の論理が簡単いひっくり返されてしまう事だ。
 僕が地下6階のゴブリン軍を瞬殺できるように。

 ハントリー侯爵家の軍にも僕と同じように戦える者がいるだろう。
 アストリア皇国譜代貴族最強と言われている、ダウンシャー辺境伯の軍にもいるだろうし、皇室に流れをくむアバコーン辺境伯家にもいるはずだ。

 全ての元凶は、皇父が智勇仁を兼ね備えた先代の皇太子殿下を暗殺してしまった事だが、過去に戻る事はできないから、今できる事をするしかない。

 特に急がなければいけないのは、外国の船が交易を求めて北の魔海にやってきている問題だ。

 アストリア皇国の船舶技術が極端に落ちている現状では、魔海で外国の船を迎え討つ事もできない。

 船舶を外国並みに発展させるだけでなく、失われた航海術まで復活させないといけないなんて、泣けてくるぜ!
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