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第一章

第44話:決行

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バレンシア王国暦243年12月8日:冒険者ギルド・エディン支部

「教会幹部と王族を今皆殺しにしても大丈夫だな?」

「はい、今直ぐ変化して入れ替えさせられます」

 教皇を殺す事も国王も殺す事も難しい事ではない。
 その気になればいつでもやれたことだ。
 難しいのは、殺した後で内乱を引き起こす事なく、安定した国を創る事。

 後は俺が責任を背負わない方法だったのだが、これは諦めた。
 もう我慢の限界を超えたから、ぶち殺すのは確定だ。
 責任を背負う事になってもぶち殺す。

「膨大な経験値が増えて、ゴッドスライム2レベル分成長したのだな?」

「はい、海の方に1ゴッドスライム分のレベルを投入しても、まだ1ゴッドスライム分のレベルが余ります。
 王家王国や教会を牛耳る程度なら、最低で1ヒュージスライム分。
 安全確実に支配するおつもりなら、1キングスライム分もあれば十分です」

 サクラの言葉づかいが戻ってしまった。
 あの幼い頃を思い出す言葉遣いは、海上で2人きりの時だけか。

「これまで教会や王城に潜入して見張っていた、分身体に必要なレベル以外の新たな分身体をそれだけ送ればいいのだな」

「はい、以前送り込んだ分身体は、これまで通り見張りを続けさせます」

「分かった、それでは国王と王族と王国重臣を喰い殺して入れ替わってくれ。
 分かっているだろうが、善良な人間は食べるなよ」

「ご安心ください、国王の周りに善良な人間など1人もいません」

「そうか、ならば皆殺しにして後腐れなく入れ替わってくれ。
 教皇と枢機卿達、教会で力を持つ連中も全員喰い殺してくれ。
 そいつらも悪人ばかりなのか?」

「はい、ただの1人も善良な人間はおりません。
 教会に居ながら権力を欲する者が、善良な訳がありません。
 善良な神官が全くいない訳ではありませんが、そのような神官は、自給自足でやっと生きて行けるような僻地の神殿にいます」

「そのような神官で、教都の大神殿から忘れ去られている者はいるのか?」

「さて、調べてみなければ分かりませんが、どうされるのですか?」

「腐れ神官どもをぶち殺し、教会改革をする者が必要だ。
 サクラの分身体にやらせたいのだが、いきなりの新人では押しが弱い。
 長年清廉潔白に暮らしてきた実績が欲しい。
 何なら、亡くなった立派な神官を生きている事にしてもいい。
 死亡届などの書類は、いくらでも改竄できる」

「急ぎ調べさせていただきます。
 それまでの間は、教皇達を殺すのを止めますか?」

「いや、もうこれ以上連中に民を殺させるわけにはいかない。
 今直ぐぶち殺してくれ」

「分かりました、即座に殺します」

「あ、いや、待て、殺すな」

「拷問で生き地獄を味合わせるのですね」

「ああ、そうだ、あいつらがこれまでにやってきた事を考えれば、簡単に楽にするのでは不公平すぎる。
 生きてきた事を後悔するほど痛めつけろとは言わない。
 そんな不公平な、一方手に苦痛を与える事は誰にも許されない。
 あいつらが、これまで民に与えてきた苦しみと同じだけの苦痛を与えてやれ。
 それまでは絶対に殺すな。
 形だけ詫びても絶対に許すな」

「分かりました、連中の行いにふさわしい苦痛を与えてやります。
 王国の方はいかがなさいますか?」

「同じようにしてくれ。
 国王、王族、王国重臣、悪事に手を染めていた連中は、悪事にふさわしい苦痛を与え終えるまで絶対に殺さず、拷問を続けてくれ」

「リアム様、少々問題がございます」

「問題があるのか?」

「はい、重大な問題があります」

「どのような問題があるのだ?」

「寿命でございます。
 あの連中が繰り返してきた悪行を考えると、相応しい罰を与えるまで寿命が持たないのです」

「延命させないと、正しく罰を与えられないというのだな」

「はい、延命させて繰り返し苦痛を与えてもよろしいですか?」

「あの腐れ外道どものために延命の秘術を使うのか……
 秘術を使わずに延命させる方法となると……
 サクラ、あの連中を一気に若返らせて、万が一俺達が死ぬような事があってはいけないから、1年か2年ていどだけ若返らせてくれ。
 若返りホルモンとも呼ばれるDHEAを与えるか、強制的に自分の身体で作らせて、死なない程度にだけ若返らせてくれ」

「分かりました、決して死なさず、手心を加えず、必要以上に若返らせず、連中が犯してきた悪行にふさわしい苦痛を与えます」
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