32 / 46
第一章
第32話:ソフィアとピクニック
しおりを挟む
バレンシア王国暦243年10月21日:冒険者ギルド・エディン支部
「お兄ちゃん、今日は何を狩るの?」
「何でもいいよ、ソフィアが狩りたい魔獣を狩ればいいよ」
「私は殺したくないの……」
まだ幼いソフィアが哀しそうな顔をしている。
自分が殺されかけた事で、命の大切さを知っているのだ。
同時に、人を襲う魔獣を狩らなければいけない事も知っているのだ。
「いいよ、今日は何も狩らない日にしよう。
一緒に魔境を散歩して、お弁当を食べよう」
「うん、お兄ちゃん」
グレイソン副支部長は交渉のために王都に行っている。
その間にソフィアに何かあったらグレイソン副支部長に合わせる顔がない。
アレイナスライムが守護しているから、何か起こる事など絶対にない。
俺がソフィアと一緒にいたいから、見守ると言っているだけだ。
教会や王国の犠牲になった子供達の復讐は、どれほど時間がかかっても完璧にやり遂げてみせる。
教会を滅ぼし神官を皆殺しにする。
場合によったら王家を滅ぼし王国を解体するかもしれない。
だがそんな復讐ばかり考えていたら心がすさんでしまう。
心を癒す時間がどうしても必要になる。
ソフィアとのピクニックは最高の癒しだ。
「お母さんがお弁当を作ってくれたの?」
「ええ、ソフィアの大好きな果物と野菜、チーズとバターを使ったサンドイッチを沢山作ってありますよ」
「うれしい!」
俺が貸し与えてからずっと一緒にいるのに、未だに慕い慕われる溺愛の母娘にしか見えないが、実際には血のつながりがないどころか、スライムと人間だ。
現にソフィアを乗せているアレイナスライムの一部は強大なナメクジだ。
いや、スライムが魔境にあわせて長く身体を伸ばしているだけだ。
本体部分はソフィアの母親そっくりの姿に変化している。
アレイナスライムはできるだけスライム感を出さないように、ナメクジ型部分と完全に分離している。
普通は俺の命令がない限り分離などしないのだが、ソフィアの為なら俺の命令がなくても人間感を出そうとしている。
俺が従魔にして育てたから、人間味が出てしまったのだろうか?
ソフィアには悪いが、時間を無駄にするわけにはいかない。
ソフィアの前で魔獣を殺すわけにもいかないが、狩りはしなければいけない。
だからソフィアに見えない遠くで魔獣を狩る。
サクラは元々砦の周囲10キロメートル四方に探索網を広げている。
その気になれば一瞬で一点に集まる事ができる。
亜竜や属性竜ていどなら、身体の1万分の1を集めるだけで狩る事ができる。
まして今周辺にいる赤魔熊や赤魔蛇以下の魔獣なら、探索網のまま狩れる。
そんな簡単に狩れる赤魔熊や赤魔蛇程度でも、この国の冒険者には狩れない。
レベルの高い個体だと、エマでも狩るのが難しい。
「お兄ちゃん、あのお花きれい!」
ソフィアはとても眼が良いようで、高い木の上に咲いている赤い花を見つけた。
直ぐに採ろうとするアレイナスライムを目で抑えて俺がとる。
軽く跳ぶだけで三十メートルはジャンプできる。
「髪に飾ってあげるよ」
俺が前世の死んだ年齢のままだったら他人にはどう写るだろうか?
犯罪者に見られるだろろうか?
孫娘と爺さんに見てもらえるだろうか?
いや、曾孫と曾祖父と言った方が良いだろう。
だがこの世界では、俺はまだ十歳の子供だ。
ソフィアが八歳だから、誰が見ても子供が遊んでいるだけだ。
前世には『男女七歳にして席を同じゅうせず』という故事成語があった。
しかしいくら何でも早すぎるだろう。
「私もお兄ちゃんに花を飾ってあげる。
お母さんが花冠の作り方を教えてくれたの」
教えてくれたのは、幼い頃に死んだ本当のお母さんか?
それともアレイナスライムなのか?
サクラとは、俺が三歳児の頃から一緒に生活していたから。
そのせいで母性が強いのかもしれないが、いくら何でも花冠の作り方を教えるのは、守護の役目と関係なさ過ぎるだろう。
まあ、スライムでなくてもソフィアのかわいらしさには魅了される。
魅了されているから、恥ずかしいのを我慢して花冠を飾ってもらう。
相手が成人した海千山千の女性なら、絶対にさせない。
純真無垢な幼い子供だから、心を傷つけないようにしている。
大人には子供を助ける責任があるのだ!
身体だけでなく、心も守ってあげなければいけない。
まあ、俺も見た目は子供だが、中身は糞爺だからな。
魔境で花の咲く場所まで移動して、完成するまで大人しく待たなければいけない。
「はい、お兄ちゃん、にあっているよ」
「お兄ちゃん、今日は何を狩るの?」
「何でもいいよ、ソフィアが狩りたい魔獣を狩ればいいよ」
「私は殺したくないの……」
まだ幼いソフィアが哀しそうな顔をしている。
自分が殺されかけた事で、命の大切さを知っているのだ。
同時に、人を襲う魔獣を狩らなければいけない事も知っているのだ。
「いいよ、今日は何も狩らない日にしよう。
一緒に魔境を散歩して、お弁当を食べよう」
「うん、お兄ちゃん」
グレイソン副支部長は交渉のために王都に行っている。
その間にソフィアに何かあったらグレイソン副支部長に合わせる顔がない。
アレイナスライムが守護しているから、何か起こる事など絶対にない。
俺がソフィアと一緒にいたいから、見守ると言っているだけだ。
教会や王国の犠牲になった子供達の復讐は、どれほど時間がかかっても完璧にやり遂げてみせる。
教会を滅ぼし神官を皆殺しにする。
場合によったら王家を滅ぼし王国を解体するかもしれない。
だがそんな復讐ばかり考えていたら心がすさんでしまう。
心を癒す時間がどうしても必要になる。
ソフィアとのピクニックは最高の癒しだ。
「お母さんがお弁当を作ってくれたの?」
「ええ、ソフィアの大好きな果物と野菜、チーズとバターを使ったサンドイッチを沢山作ってありますよ」
「うれしい!」
俺が貸し与えてからずっと一緒にいるのに、未だに慕い慕われる溺愛の母娘にしか見えないが、実際には血のつながりがないどころか、スライムと人間だ。
現にソフィアを乗せているアレイナスライムの一部は強大なナメクジだ。
いや、スライムが魔境にあわせて長く身体を伸ばしているだけだ。
本体部分はソフィアの母親そっくりの姿に変化している。
アレイナスライムはできるだけスライム感を出さないように、ナメクジ型部分と完全に分離している。
普通は俺の命令がない限り分離などしないのだが、ソフィアの為なら俺の命令がなくても人間感を出そうとしている。
俺が従魔にして育てたから、人間味が出てしまったのだろうか?
ソフィアには悪いが、時間を無駄にするわけにはいかない。
ソフィアの前で魔獣を殺すわけにもいかないが、狩りはしなければいけない。
だからソフィアに見えない遠くで魔獣を狩る。
サクラは元々砦の周囲10キロメートル四方に探索網を広げている。
その気になれば一瞬で一点に集まる事ができる。
亜竜や属性竜ていどなら、身体の1万分の1を集めるだけで狩る事ができる。
まして今周辺にいる赤魔熊や赤魔蛇以下の魔獣なら、探索網のまま狩れる。
そんな簡単に狩れる赤魔熊や赤魔蛇程度でも、この国の冒険者には狩れない。
レベルの高い個体だと、エマでも狩るのが難しい。
「お兄ちゃん、あのお花きれい!」
ソフィアはとても眼が良いようで、高い木の上に咲いている赤い花を見つけた。
直ぐに採ろうとするアレイナスライムを目で抑えて俺がとる。
軽く跳ぶだけで三十メートルはジャンプできる。
「髪に飾ってあげるよ」
俺が前世の死んだ年齢のままだったら他人にはどう写るだろうか?
犯罪者に見られるだろろうか?
孫娘と爺さんに見てもらえるだろうか?
いや、曾孫と曾祖父と言った方が良いだろう。
だがこの世界では、俺はまだ十歳の子供だ。
ソフィアが八歳だから、誰が見ても子供が遊んでいるだけだ。
前世には『男女七歳にして席を同じゅうせず』という故事成語があった。
しかしいくら何でも早すぎるだろう。
「私もお兄ちゃんに花を飾ってあげる。
お母さんが花冠の作り方を教えてくれたの」
教えてくれたのは、幼い頃に死んだ本当のお母さんか?
それともアレイナスライムなのか?
サクラとは、俺が三歳児の頃から一緒に生活していたから。
そのせいで母性が強いのかもしれないが、いくら何でも花冠の作り方を教えるのは、守護の役目と関係なさ過ぎるだろう。
まあ、スライムでなくてもソフィアのかわいらしさには魅了される。
魅了されているから、恥ずかしいのを我慢して花冠を飾ってもらう。
相手が成人した海千山千の女性なら、絶対にさせない。
純真無垢な幼い子供だから、心を傷つけないようにしている。
大人には子供を助ける責任があるのだ!
身体だけでなく、心も守ってあげなければいけない。
まあ、俺も見た目は子供だが、中身は糞爺だからな。
魔境で花の咲く場所まで移動して、完成するまで大人しく待たなければいけない。
「はい、お兄ちゃん、にあっているよ」
0
お気に入りに追加
244
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました
平山和人
ファンタジー
事故で死んだはずの俺は、生前やりこんでいたゲーム『エリシオンサーガ』の世界に転生していた。
しかし、転生先は不細工、クズ、無能、と負の三拍子が揃った悪役貴族、ゲルドフ・インペラートルであり、このままでは破滅は避けられない。
だが、前世の記憶とゲームの知識を活かせば、俺は『エリシオンサーガ』の世界で成り上がることができる! そう考えた俺は早速行動を開始する。
まずは強くなるために魔物を倒しまくってレベルを上げまくる。そうしていたら痩せたイケメンになり、なぜか美少女からモテまくることに。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
【完結】家庭菜園士の強野菜無双!俺の野菜は激強い、魔王も勇者もチート野菜で一捻り!
鏑木 うりこ
ファンタジー
幸田と向田はトラックにドン☆されて異世界転生した。
勇者チートハーレムモノのラノベが好きな幸田は勇者に、まったりスローライフモノのラノベが好きな向田には……「家庭菜園士」が女神様より授けられた!
「家庭菜園だけかよーー!」
元向田、現タトは叫ぶがまあ念願のスローライフは叶いそうである?
大変!第2回次世代ファンタジーカップのタグをつけたはずなのに、ついてないぞ……。あまりに衝撃すぎて倒れた……(;´Д`)もうだめだー
来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。
克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。
究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった
盛平
ファンタジー
パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。
神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。
パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。
ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる