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第一章

第5話:言い争い

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バレンシア王国暦243年4月14日:冒険者ギルド・ロアノーク支部

 俺は特に急ぐこともなく魔境に向かった。
 冒険者ギルド・ロアノーク支部からは二カ所の魔境に行ける。
 北西にあるエディン大魔境と南東にあるナンパ魔境だ。

 魔境は空間が圧縮されているので、周囲を図った広さよりも格段に広大だ。
 ダンジョンや魔山があるので、更に冒険する広さが増す。

 まあ、どれほど広くても、最外縁までしか入れない普通の人間にとっては、エディン大魔境もナンパ魔境も同じだ。

 だが、虚栄心がある者は、大と名のつくエディンを選びがちだ。
 大魔境の最外縁部でしか狩りをしないくせに、大に拘る。
 その典型がローソンズクランのようだ。

 先ほどから後をつけて様子を見ているが、最弱種しか狩っていない。
 憶病なクランリーダーのホセは、護衛と一緒に街に残ったようだ。
 魔境のクランメンバーは、さっき言い争ったブレイデンが指揮している。

 だが、ホブゴブリン程度の従魔しかいないD級にできる事など知れている。
 F級やE級なら簡単に狩れる灰牙兎や灰角兎ばかり狙っている。
 赤牙兎や赤角兎を相手にしたら怪我をする事すらある。

 そんな低級魔獣を狩った証なら、牙や角、クズ魔石や山のようにある。
 魔力と創造力で強引に創り出したアイテムボックスに全部蓄えてある。

 だが今回の条件だと、以前に狩った獲物だと難癖をつけられるかもしれない。
 解体する前の魔獣や半獣族でなければいけないかもしれない。
 それも魔法袋に蓄えているのだが……

 食料に成る美味しい魔獣を出すのはもったいない。
 どうしても食べる気に成れないオークやコボルト。
 人間を襲って喰う事しか考えていないゴブリンを出そうか?

 それとも連中の度肝を抜くようなオーガやジャイアントを出してやるか?
 だが魔法袋に蓄えているモノを提出するだけだと制限時間まで暇だよな。
 鍛錬して魔力を蓄えるのもいいが、新しく魔獣でも狩るか?

 ★★★★★★

「何時まで待っても帰ってこないさ。
 小僧は大口を叩いたのを後悔して逃げたのだよ!」

「何を言っているの、その小僧呼ばわりしているリアムに負けたのはあんた達よ!
 情けなくここで裸にされていたじゃないの!」

「なんだと、このアマ!
 ガタガタ言いやがるとこの場で輪姦してやるぞ!」

「ほう、それは私たち女に対する挑発か?
 だったらホセの憶病者とは別に、お前達とも命懸けで決闘してやるぞ!」

「これは家の下っ端が身の程も弁えずに大口を叩いてしまいました」

「ギャアアアアア!」

「全てはこの糞野郎の身の程も弁えない決闘騒動が始まりです。
 リアムとの勝負がついたら、キッチリと責任を取らせますので、ご容赦を」

「ふん、そこまでして私との決闘から逃げたいのか?!」

「逃げている訳ではありません。
 この国の習慣に従った決闘を望んでいるだけですよ。
 さあ、まずはリアムとの勝負をはっきりさせましょう。
 オリビア嬢の言う通り、時間まで待つのが筋ですが、こちらが先に計測していただく事に何の問題もないでしょう」

「よくそんな恥知らずで卑怯な事を言えますね!
 クーパーズパーティーだけでなくローソンズクラン全員で狩りをしたくせに!」

「オリビア嬢、ちゃんと他のクランから見届け人が来ていますよ。
 エマのいるダニエルズクランでは公平に欠けますからね」

「貴方達が脅かしたクランの身届け人の方が公平に欠けるでしょう!」

「それでいいと条件書に署名したのはリアムですよ。
 今更オリビア嬢が何を言っても意味はありませんよ。
 こちらが狩った灰牙兎137匹、灰角兎245匹。
 赤牙兎46匹と赤角兎51匹。
 更に100キロ級の赤牙鼠3匹、確かめてもらいましょうか!」

「200人総出で狩った割には大したことがないな。
 D級だE級だと偉そうに言っても、賄賂や脅迫で分不相応な昇級しているのだな」

「言いがかりは止めていただきましょうか。
 クランメンバーは荷運びに同行しただけですよ。
 実際に狩りをしたのはクーパーズパーティーだけですよ」
 
「そうかい、パーティーでその成果じゃ大した事ないな。 
 俺の獲物を確認してもらおうか」

「「「「「リアム!」」」」」
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