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第二章「恋愛」

57話

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「火竜がドラゴニュートとの間に子供を作り、スリークォーター火竜が産まれた。
 スリークォーター火竜は、ドラゴニュートより遥かに火竜に近い。
 火竜とスリークォーター火竜の間に生まれた子は、もっと火竜に近い。
 しかも最初のドラゴニュートが、身体強化した人間との間に出来たドラゴニュートだったら、もう水精霊でも太刀打ち出来ないのではないか。
 そうなってもいいのか。
 そうなると分かっても、今迄通り火竜と敵対すると言うのか!」

 アシュラムの言葉に、サライダオアシスの水精霊は激怒した。
 激怒したが、アシュラムを襲うことは出来なかった。
 偏狭偏屈な性格でも、馬鹿ではなかったのだ。
 アシュラムを殺したら、従者達もここを見捨ててしまう。
 そうなったら、自分達が火竜に干殺されると理解していた。

「それに、今のお前たちの言動を、水龍様が聞いたら激怒されるぞ。
 水龍様の御怒りを買いたいのか?
 ここは我の言う通りにして、カチュア姫を開放して、新たな水乙女を選んだらどうだ?!」

 偏狭偏屈なサライダの水精霊も、渋々折れることにした。
 人間ごときの言いなりになるのは悔しかったが、このままでは火竜に干殺されるのは確かだった。
 水龍様に助けを求めたくても、あの方は公平だ。
 自分達の方が悪いと言われ、見殺しにされるのが分かっていた。

 結局サライダの水精霊は、カチュア姫以外にも水乙女を選ぶことにした。
 一人の水乙女に全ての力を与えるのではなく、複数の水乙女に力を分け与える事にした。
 そしてカチュア姫は、酒を飲むことを許され、水乙女よりも女王としての仕事を優先させることになった。
 だが全ての水精霊がカチュア姫の元を離れたわけではなかった。

 自身の潔癖よりも、カチュア姫の側にいる事を優先した水精霊もいた。
 それと元々アシュラム達に付いてきた水精霊以外の、新たに砂漠地帯にやってきた水精霊が、カチュア姫の守護に付いた。
 だからカチュア姫の力はそれほど減らなかった。
 むしろ以前より多くの水精霊が集まっているので、力を合わせることさえ出来れば、莫大な力を発揮出来るようになっていた。

 サライダオアシスの水精霊以外は、力を合わせて砂漠地帯を変えていた。
 ゴライダオアシスを起点に、サライダオアシスを取り囲むように、小さなオアシスが点在するようになっていた。
 更に今までとは違って、水が蒸発しないようにした地下用水路ではなく、地上に小川が流れて全てのオアシスが繋がっていた。

 そこには急激に多くの水草が繁茂し、多くの魚が住みだした。
 それは結界でもあった。
 敵意の有る者がその結界の中に入ろうとしても、水精霊の攻撃を受けることになる。
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