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領都制圧

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「領民の生活を最優先するのだ」
「は!」
「捕虜の収容は大丈夫か?」
「今は陛下の魔法で大人しくしていますが、今後の事が心配です」
「城外に専用の牢獄を創り出すから、そこに収容しろ」
「承りました」
「陛下、領民の中に多数の困窮する者がおります」
「分かった。取りあえず魔獣と魔蟲の肉を放出するから、炊き出しを行わせろ」
「我々がやるのではなく、領民にやらせるのですか?」
「御前達には、いざという時に戦ってもらわなければならない。戦いが始まったからと言って、炊き出しを中止するわけにはいかないから、最初から領民に任せる体制を築いておけ」
「不正をする者が出てくるかもしれません」
「多少の不正は起こるだろうが、人間だから仕方がない事だ」
「では見逃すのですか?」
「いや、不正をした者は見つけ出し、理由を明らかにした上で、同情の余地がない場合は厳罰に処す」
「同情の余地がある場合は見逃されるのですか?!」
「一人で二人前受け取った場合は不正だが、家に病気の子供が寝ていたら仕方がないだろう」
「はい」
「少数の人間で、多数の人間を管理しようと思えば、多少の手落ちは出てくるだろう」
「はい」
「厳正にし過ぎて誰かを殺してしまうくらいなら、現場で多少の不正が起こっても仕方がない。後々調べて罰すればいい。まずは誰一人飢え死にする事のない体制を敷くのだ」
「はい!」
 バルテルス首長家の領都は簡単に制圧できた。
 麻痺魔法と睡眠魔法を数発放てば、簡単に無力化出できた。
 問題は占領後の治安活動だった。
 俺が占領したことで、誰かが死んだとあっては、一生胸を痛めることになる。
 混乱に乗じて誰かが傷つけられることのないように、ましては殺されたりすることのないように、一時的に敵対する可能性のある者を完全に無力化した。
 だが何より気を付けたのは、動けなくなったバルテルス首長家の家臣領民を、我が国の臣民が傷つけない事だ。
 それ以上に気を付けなければいけないのは、今回俺が率いている将兵が、バルテルス首長家の家臣領民を乱暴する事だ。
 これだけは絶対あってはいけない。
 特に女性を強姦する事だけはあってはいけな!
 だから将兵の選抜は慎重の上にも慎重を期した。
 奴隷兵の中でも、妻子がいて、何かあったら家族に類が及ぶと考える者。
 日頃の言動が極めて礼儀正しく、人柄のいい者を選び抜き、俺の直卒軍に配属していたが、実際従軍させて俺と近習の目で見て人柄を確認した者だ。
 そんな将兵だから、領都制圧後も率先して働いてくれた。
 特に奴隷等の虐げられた者達への支援は、精力的に取り組んでくれた。
 後はゼスト王国軍の攻撃が心配だが、捕虜収容所を兼ねた、ゼスト王国軍の侵攻に備える城を築けば、何とかなるだろう。
 問題はイブラヒム王家や他国の動きだが、密偵からの連絡が来ない限り動きようがない。
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