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戦勝

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「これ以上奴隷を死なせるのは可哀想だな」
「助けてやるのですか」
「ああ、さっさと片づけて、他の城も見て回らないと、どれほどの被害が出ているか分からんからな」
 俺はラボック城でネッツェ王国軍を迎え討ったのだが、やはり最前線に投入されるのは奴隷兵だった。
 一番死ぬ確率が高く、魔法や矢の盾代わりにされている。
 でも無理矢理戦わされる奴隷を殺すのも嫌だし、攻めるに任せていたら、水濠に飛び込み溺れる奴隷が現れた。
 仕方ないので、水濠に辿り着く前の奴隷に魔法を叩きつけた。
 片っ端から手当たり次第に、麻痺の魔法と睡眠の魔法を放った。
 そしたら騎馬に乗った騎士と思われる者が、倒れた奴隷兵を罵り出した。
 それを聞いていた騎士付きらしい正規兵士達が、鞭や剣で奴隷兵を叩いて起こそうとした。
 正直イラッとした。
 いや、相当腹が立った。
 問答無用で攻撃魔法を放ってやった。
 銅級の火魔法だが、指一本で百の火矢を創り出し、合計千の火矢を操ってやった。
 少々残酷だが、あいつらが今迄やってきたであろうことを考えたら、憐憫の情をかけてやる必要などない。
 千の騎士と従兵に眼に向けて、火矢を叩きつけてやった。
「うぎゃ!」
 あちらこちらで、頭だった騎士が落馬する。
 たかだか銅級の火矢一発である。
 しかも急所は狙っていない。
 即死するようなモノはほとんどいない。
 中にはどれほど怠惰な生活をしていたのか、落馬して死んでしまう貴族がいた。
 確かにフルアーマープレートを装備してしまうと、落馬するとその重みに耐えかねて、首の骨を折る可能性もある。
 だがある程度鍛えた戦士なら、落馬したとしても死なないように受け身くらいはとれるものだ。
 それが受け身もとれずに死んでしまうのだから、士道不覚悟も甚だしい。
 星形要塞内を駆けまわり、攻め寄せてくるネッツェ王国軍に魔法を放った。
 奴隷兵に対しては、麻痺と睡眠の魔法を使った。
 騎士や正規兵士に対しては、眼を狙って火矢魔法を使った。
 多くの騎士や正規兵は失明した。
 権力も金もあるのだから、治癒魔法の使い手に治してもらえばいい。
 騎士と正規兵を併せて一万人ほど失明させたところで、ネッツェ王国軍が撤退していった。
 これは仕方がないだろう。
 大体五千人の貴族や騎士が失明したのだ。
 その治療と世話に最低五千人、恐らく二万人は戦えなくなる。
 これ以上戦うのは不可能だ。
 だが問題は、俺が麻痺させたり眠らせたりした奴隷兵を放置し撤退していったことだ。
 新たに五万人の捕虜を養えと言うのか!
 幾人かは溺死してしまっただろうが、それは多くても数千人だ。
 恐らく四万八千人は生き残っている。
 十万人近い人間を養うのは大変だ!
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