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イマーン王国
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「アーサー殿、我が国の庇護を受けてはどうか?」
「アードリアン陛下の御厚情はありがたいが、それでは私の信義が失われてしまいます」
「しかしアーサー殿だけで、ネッツェ王国を撃退するのは難しいであろう」
「そんな事はありませんよ」
「しかし相手は十万の軍勢で攻めてきているではないか」
「確かに私が貴国から切り取った領地に攻め込んできてはいますが、城内には一兵も入り込ませていません」
「だが籠城してばかりでは、兵糧が尽きてしまうのではないか?」
「その心配は不要ですよ」
「しかし」
「論より証拠です。私がネッツェ王国に仕えていた頃、ネッツェ王国に略奪に入っていた貴国の民を捕虜にして奴隷とした民が数多くいます。その者達がどんな食事をしているか見てもらえれば、兵糧の心配がない事分かって頂けますよ」
「はてさて何の事でしょうか? 我が国の民がネッツェ王国に略奪に入った事などありません。暴虐なネッツェ王国が、不法に我が国の領地に侵攻し、不当に領地に居座り民を拘束しているだけだ」
「だとしたら私はその尖兵ですよ」
「そう、そこなのです。正義の心を持つアレクサンダー殿は悔い改められて、卑怯で下劣なケンジー王に反旗を翻された。賢明で寛容な我がアードリアン陛下は、そんなアーサー殿に憐憫の情を感じられ、救いの手を差し伸べられたのです」
「それは真に有難い事ではありますが、先程も申し上げましたが、それでは我が名誉が傷つきます」
「アーサー殿! 恐れ多くもアードリアン陛下は、アーサー殿の侵略と拉致の罪を許され、領地と民を返すのなら、一時的に領地と民を貸し与え、戦が終わったら子爵の爵位と領地の一部を与えると申されておられるのですぞ」
「この領地は我が武勇で切り取ったモノ。例え相手がアードリアン陛下でおられようと、ケンジー陛下でおられようと、不当に取り上げようとなされるようなら、剣を持って御相手いたす」
俺の言葉にイマーン王国の特使が絶句している。
「特使殿に元イマーン国民の現状を見てもらえ」
「御待ち下さい、アーサー殿」
「さあ! こちらへどうぞ!」
近習が力づくで特使を謁見の間から引き出してくれた。
「やれやれ、ケンジー王と言うのは噂通りのケチであったな」
「はい。しかしながら、このような貧しい国土を預かる国王ならば、それも致し方ないのではありませんか」
「そうだな。与えられた条件が厳しく可哀想ではあるな。だがそれにしても、民を飢えさせ、盗賊にしたてて棄民するのは許せんぞ」
「それはそうでございますが、それでは殿ならどうなされました?」
「魔境やダンジョンを攻略する。ある程度まで民を訓練し、魔境で狩りが出来るようにする」
「アリステラ王国のように魔境やダンジョンに恵まれた国は少ないのですが、それはどうお考えなのですか?」
「アリステラ王国に頭を下げて、民を冒険者として受け入れてもらうさ」
「殿」
「民を飢えさせない為なら、頭くらいいくらでも下げるさ」
「アードリアン陛下の御厚情はありがたいが、それでは私の信義が失われてしまいます」
「しかしアーサー殿だけで、ネッツェ王国を撃退するのは難しいであろう」
「そんな事はありませんよ」
「しかし相手は十万の軍勢で攻めてきているではないか」
「確かに私が貴国から切り取った領地に攻め込んできてはいますが、城内には一兵も入り込ませていません」
「だが籠城してばかりでは、兵糧が尽きてしまうのではないか?」
「その心配は不要ですよ」
「しかし」
「論より証拠です。私がネッツェ王国に仕えていた頃、ネッツェ王国に略奪に入っていた貴国の民を捕虜にして奴隷とした民が数多くいます。その者達がどんな食事をしているか見てもらえれば、兵糧の心配がない事分かって頂けますよ」
「はてさて何の事でしょうか? 我が国の民がネッツェ王国に略奪に入った事などありません。暴虐なネッツェ王国が、不法に我が国の領地に侵攻し、不当に領地に居座り民を拘束しているだけだ」
「だとしたら私はその尖兵ですよ」
「そう、そこなのです。正義の心を持つアレクサンダー殿は悔い改められて、卑怯で下劣なケンジー王に反旗を翻された。賢明で寛容な我がアードリアン陛下は、そんなアーサー殿に憐憫の情を感じられ、救いの手を差し伸べられたのです」
「それは真に有難い事ではありますが、先程も申し上げましたが、それでは我が名誉が傷つきます」
「アーサー殿! 恐れ多くもアードリアン陛下は、アーサー殿の侵略と拉致の罪を許され、領地と民を返すのなら、一時的に領地と民を貸し与え、戦が終わったら子爵の爵位と領地の一部を与えると申されておられるのですぞ」
「この領地は我が武勇で切り取ったモノ。例え相手がアードリアン陛下でおられようと、ケンジー陛下でおられようと、不当に取り上げようとなされるようなら、剣を持って御相手いたす」
俺の言葉にイマーン王国の特使が絶句している。
「特使殿に元イマーン国民の現状を見てもらえ」
「御待ち下さい、アーサー殿」
「さあ! こちらへどうぞ!」
近習が力づくで特使を謁見の間から引き出してくれた。
「やれやれ、ケンジー王と言うのは噂通りのケチであったな」
「はい。しかしながら、このような貧しい国土を預かる国王ならば、それも致し方ないのではありませんか」
「そうだな。与えられた条件が厳しく可哀想ではあるな。だがそれにしても、民を飢えさせ、盗賊にしたてて棄民するのは許せんぞ」
「それはそうでございますが、それでは殿ならどうなされました?」
「魔境やダンジョンを攻略する。ある程度まで民を訓練し、魔境で狩りが出来るようにする」
「アリステラ王国のように魔境やダンジョンに恵まれた国は少ないのですが、それはどうお考えなのですか?」
「アリステラ王国に頭を下げて、民を冒険者として受け入れてもらうさ」
「殿」
「民を飢えさせない為なら、頭くらいいくらでも下げるさ」
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