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建国に向けて

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 父王陛下との会談を終えて、王宮を後にしながら色々と考えてみたのだが、どうにも納得できない。
 納得は出来ないが、親兄弟で争わないようにしようと思うのなら、言う通りにするしかないだろう。
 父王陛下は情に厚い方ではあるし、私達子供を愛してくださっているのも間違いない。
 だが同時に、冷徹な為政者と言う面も時折見せられる。
 今回がそうなのだが、父王陛下にとって私は数多い子供の一人でしかない。
 俺がしたことで、子供達が殺し合うような事態を引き起こすと判断したなら、容赦なく俺を殺すかもしれない。
 いや、殺さずに幽閉するにとどめて下さるかもしれないが、俺の好き放題にはさせて下さらないだろう。
 今回の会談は注意を超えて警告なのだと思う。
 この警告を無視すれば、良くて幽閉。
 悪くすれば暗殺だろう。
 そんな事になれば、俺に忠誠を尽くしてくれる者まで討伐対象になってしまう。
 爺は勿論、近習衆やその実家にまで罪が及ぶかもしれない。
 ブラッドリー先生が王家王国を裏切り、俺に味方してくれるとは思わないが、多少は心を痛めてくれるだろう。
 そんな状況に大切な家臣を追い込むなど、主君として失格だ。
 俺のやってきたことが間違いだったとは思わないが、根回しが不十分だったのは間違いない。
 ここは一旦自分の理想は諦めて、流れに身を任せてみよう。
 理想を追ったために親兄弟の殺し合いになり、王家王国に内乱を引き起こし、民が戦乱に巻き込まれて死傷するような事態になったら、俺の理想は我欲でしかなかったことになる。
 理想の世界を作るためなら、親兄弟を殺し家臣領民を戦争に犠牲にすることも、全て正義だと言えるほど馬鹿でも身勝手でもない。
「爺」
「はい!」
「ネッツェ王国に入り込む。アリステラ王国を捨て、他国に渡って一旗揚げようと思う」
「それが陛下の御意向なのですね」
「俺は遣り過ぎたそうだ。幽閉や暗殺を避けるには、国外に活路を探すしかない」
「承りました。殿下に付き従い、新たな国を興す気概の有る者を選びます」
「爺なら間違いはないと思うが、家族や恋人がおり、アリステラ王国で生活していける者は選ぶなよ」
「重々承知しております。しかしながら忠誠心を無下にするわけにもまいりませんので、恋人や家族がいても、殿下に付き従うと言う者は、その忠誠心を感謝して受け入れて下さい」
「分かった。家臣の忠誠心に報いられるように、出来る限りの事をしよう」
「それで、殿下が今まで狩られた魔獣の素材でございますが、陛下から新たな指示はございましたか?」
「いや、特に何も申されなかった」
「ならば税金分を王家王国に納め、残りは自由にしていいと言う事でございますね」
「恐らくそうだと思う」
「ではその素材を使って、新たな武器と防具を創り出しましょう」
「分かった。それでネッツェ王国の紛争に備えるのだな」
「はい」
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