7 / 8
第一章
第7話:疑念
しおりを挟む
私が声のする方に視線を向けると、そこには昼間大量のパンを買ってくれた、壮年の男性が立っています。
壮年男性だけでなく、私から買ったパンを抱える使用人らしき男一人と、護衛役らしい男が十数人います。
「やあ、店主、随分と気前がいいんだね。
でもそんなに気前よくパンやお金を配ってしまっていたら、店が潰れてしまうのではないかい?
それに、そんなにたくさんの貧民を手懐けてどうする心算だい?」
どうやら、私の行動を誤解した役所の手先のようです。
私が貧民を手懐けて、反政府運動や犯罪を起こすと勘違いしているようです。
金虎ちゃんが犯罪者ギルドを壊滅させたので、裏家業の者達による勢力争いだと思っているのかもしれません。
これは早く誤解を解いた方がいいですね。
「どうもしませんよ。
私は自分が不当に虐げられたので、苦しんでいる人を見逃せないだけです。
大した事はできませんが、飢え死にするような事だけは防ぎたいのです。
その為にこうして働いてもらった分の対価をお支払いしているのです」
「ふむ、働いた分の対価にしては多すぎる報酬ではないかな?
何か他に目的があるのではないかな?」
しつこく確かめてきますが、何に疑念を抱いているのでしょうか?
それが分からないと、適切な返事ができません。
話ながら探っていくしかありませんね。
「確かに一般的な報酬よりもとても多いでしょうが、そうしなければこの方達が飢えてしまいますから、仕方のない事です。
何度も申しますが、私はこの方々が飢える姿を見たくないのです」
「その言葉が本当ならば、聖女に相応しい言動だが、復讐のために準備をしているのではないのかね?
レジネル王国は、聖女である君を追い出してから、天変地異に襲われて大混乱しているから、ある程度の兵を率いて救国に戻って来たと言えば、君が女王となり新たな王国を建国するのも不可能ではないだろう?」
なんと、私の素性も全て調べ上げていたのですね。
その上で、皇国の政府は、私が皇国の貧民で軍隊を組織して故国に戻り、建国するかもしれないなどという、おとぎ話のような想像をしていたようです。
これくらい想像逞しくして先手を打たなければ、皇国のような平和な国は、維持する事もできないのでしょうか?
まあ、平和とはいっても、多くの貧民がいる現実がありますが。
「よく調べられてられるようですが、それは想像力が豊か過ぎますね。
現実をよく見てくださいますか。
ここに集まっている方々で軍隊作って、実際に戦えると思われますか?
天変地異で荒れ果てた国に行って、残された民に満足な食糧を与えられますか?
神の怒りを買った国では、聖女であろうと無力なのです。
もうあの国は滅ぶしかないのです」
壮年男性だけでなく、私から買ったパンを抱える使用人らしき男一人と、護衛役らしい男が十数人います。
「やあ、店主、随分と気前がいいんだね。
でもそんなに気前よくパンやお金を配ってしまっていたら、店が潰れてしまうのではないかい?
それに、そんなにたくさんの貧民を手懐けてどうする心算だい?」
どうやら、私の行動を誤解した役所の手先のようです。
私が貧民を手懐けて、反政府運動や犯罪を起こすと勘違いしているようです。
金虎ちゃんが犯罪者ギルドを壊滅させたので、裏家業の者達による勢力争いだと思っているのかもしれません。
これは早く誤解を解いた方がいいですね。
「どうもしませんよ。
私は自分が不当に虐げられたので、苦しんでいる人を見逃せないだけです。
大した事はできませんが、飢え死にするような事だけは防ぎたいのです。
その為にこうして働いてもらった分の対価をお支払いしているのです」
「ふむ、働いた分の対価にしては多すぎる報酬ではないかな?
何か他に目的があるのではないかな?」
しつこく確かめてきますが、何に疑念を抱いているのでしょうか?
それが分からないと、適切な返事ができません。
話ながら探っていくしかありませんね。
「確かに一般的な報酬よりもとても多いでしょうが、そうしなければこの方達が飢えてしまいますから、仕方のない事です。
何度も申しますが、私はこの方々が飢える姿を見たくないのです」
「その言葉が本当ならば、聖女に相応しい言動だが、復讐のために準備をしているのではないのかね?
レジネル王国は、聖女である君を追い出してから、天変地異に襲われて大混乱しているから、ある程度の兵を率いて救国に戻って来たと言えば、君が女王となり新たな王国を建国するのも不可能ではないだろう?」
なんと、私の素性も全て調べ上げていたのですね。
その上で、皇国の政府は、私が皇国の貧民で軍隊を組織して故国に戻り、建国するかもしれないなどという、おとぎ話のような想像をしていたようです。
これくらい想像逞しくして先手を打たなければ、皇国のような平和な国は、維持する事もできないのでしょうか?
まあ、平和とはいっても、多くの貧民がいる現実がありますが。
「よく調べられてられるようですが、それは想像力が豊か過ぎますね。
現実をよく見てくださいますか。
ここに集まっている方々で軍隊作って、実際に戦えると思われますか?
天変地異で荒れ果てた国に行って、残された民に満足な食糧を与えられますか?
神の怒りを買った国では、聖女であろうと無力なのです。
もうあの国は滅ぶしかないのです」
0
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
大公家を追放されて奈落に落とされたけど、以前よりずっと幸せだ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
大公家を追放されて奈落に落とされたけど、奈落のモンスターの方が人間よりも優しくて、今の方がずっと幸せだ。
転生聖女は、つがいではないと王太子に婚約破棄追放されました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
コロンビア公爵家令嬢フラウは王太子のつがいだと分かり婚約者に選ばれていた。だが王妃の座を狙うチャンシ侯爵家の双子の悪女、ミネバとクシリアによって毒殺されてしまった。普通ならそのまま死ぬのだが、魂のなくなった身体に別の人間が入り込み蘇った。魂が代わったためか、一度毒殺されて体質が変わったのか、フラウは王太子のつがいではなくなっていた。そこに付け込んだ双子の悪女は、王太子を籠絡してフラウとの婚約破棄させ、追放刑にさせようとしていた。
【完結】 ご存知なかったのですね。聖女は愛されて力を発揮するのです
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
本当の聖女だと知っているのにも関わらずリンリーとの婚約を破棄し、リンリーの妹のリンナールと婚約すると言い出した王太子のヘルーラド。陛下が承諾したのなら仕方がないと身を引いたリンリー。
リンナールとヘルーラドの婚約発表の時、リンリーにとって追放ととれる発表までされて……。
婚約破棄は旅のはじまり
青空一夏
恋愛
腹違いの妹に偽りの罪をきさせられて皇太子に婚約破棄されたサマンサは実はこうなることを6歳の時から知っていた。
元聖女様に幼い頃からその未来を予言されていたのだ。魔法と聖女の癒やしの力を身につけたサマンサが旅をしながら愛をさがしていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる