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13話ナウシカ視点

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 王太子殿下が内臓料理を美味しいそうに食べてくれています。
 今は庶民的な店でしか食べられていない内臓料理ですが、王太子殿下が美味しいと言ってくれれば、私の店でも提供できるようになります。
 家臣たちには以前から美味しいと評判なのですから、ようは先入観さえ取り除ければいいのです。

「こちらが豚の腎臓、マメでございます。
 普通に料理すると臭みが強いのですが、丁寧に皮と白い筋を取ると臭みがなくなり、とても美味しく食べられます。
 香草と塩で漬け込んだ後で料理すると、特に美味しくなります」

 また毒見役のジャンが恐々です。
 本当はパイ生地だけ食べて毒見をすましたいのでしょうが、それでは大切な毒見の役目が果たせません。
 王太子殿下は肉好きですから、臭いと言われている腎臓を食べる必要があります。
 ああ、美味しかったようですね。
 また目を白黒させています。
 だからといって腎臓ばかり食べていたら、また殿下に睨まれますよ。
 そら、言わないこっちゃない。

「次は豚の小腸、ヒモと、豚の舌、タンのシチューでございます」

「おお、タンシチューであるか。
 私の大好物だ。
 だがなぜ今回はヒモとやら一緒に煮ているのだ?」

「色々と組み合わせてみたのですが、この組み合わせが一番美味しくなります。
 タンと野菜だけで作るよりも、各段に美味しくなったと自負しております」

 王太子殿下が期待に顔を輝かせています。
 以前にもタンシチューは何度か食べていただいていますから、その美味しさは経験済みですからね。
 毒見役のジャンも安心して食べています。
 ここまで成功するとは思っていませんでしたから、安全策に最後にはなじみのある料理をひとひねりして用意していたのです。

「もちろんお替りはあるのだろうな?」

「はい、ご用意しておりますが、最後に殿下の大好きな首の肉、トントロを塩と香草で焼いたものをご用意しております。
 お替りはトントロを食べられてからにしてください」

「おお、トントロまで用意してくれているのか。
 それは楽しみだ。
 ジャン。
 さっさと毒見をすませるのだ。
 熱いうちにこちらん回すのだ」

「分かっております王太子殿下。
 そのように睨むのは止めてください」

 さて、後は殿下の周囲にいる侍従や護衛を味方につける事です。
 殿下だけでなく、周囲の者も美味しいと言ってくれたら、内臓料理を高値で提供できるようになります。
 なにより頑張って美味しくしようと試行錯誤をする者が現れるでしょう。
 そうなれば、命の糧を不味いと思いながら食べる事がなくなります。
 生き物の命をいただくのです。
 美味しくいただくのが最低限のルールです。

「ナウシカ。
 タンとヒモのシチューをお替りだ。
 トントロのもう一皿焼いてくれ」
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