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9話ナウシカ視点

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「お替りです。
 このローストポークをもう一皿持ってきてください」

「あの、殿下。
 食べ過ぎは身体によくありません。
 もうおやめになった方がいいと思うのです」

「なんて残酷な事を言うのですか?
 これほどの美味しい料理を途中でやめろと言うのですか?
 それはあまりに情け知らずではありませんか!
 後生ですから、もう一皿。
 せめてもう一枚食べさせてください!」

 あれほど賢明でお優しく、時に強く厳格な王太子殿下が、泣きそうになってお替りを要求します。
 何か悪い事をしている気分です。
 でも、私の記憶には腹も身の内という言葉があるのです。
 これ以上食べたら本当に殿下の体に障ります。

 私は殿下についてきた侍従や護衛に視線をやります。
 止めて欲しいと懇願の視線を送ります。
 ですが、露骨に避けられてしまいました。
 知らべた事は本当だったのですね。
 将来の名君間違いなしと言われる殿下の弱点が、食欲と女性だという事は。

「殿下、本当にこれで最後ですよ。
 約束してくださいますね。
 それに食べ過ぎたら、明日の食事が美味しく食べられなくなりますよ。
 殿下は食べる事がお好きなのでしょ?
 だったら明日の朝の事も考えられてくださいね」

「おお、そうだ、そうだった!
 明日の朝も食事に来ればよいのだな!
 よくぞ言ってくれた!
 明日も楽しみにしておるぞ。
 うむ、そうと聞いたら最後の一枚を堪能させてもらおう」

「お待ちください殿下!
 明日までに殿下にお出しできるような料理を準備するのは不可能でございます。
 材料の準備できておりませんし、試作試食する時間もありません。
 それに、この程度の料理で満足していただいては困ります。
 これは時間が限られた中で、確実に手に入れられる豚肉を使って精一杯作った料理ですが、時間さえいただけたら、もっと美味しい素材を使った料理を試作研究できるのですよ」

「なに?
 もっと美味しい料理が作れると申すのか?」

「はい、時間をいただけたら、必ず作って見せます」

「……両立はできないのか?
 私に毎日料理を作りながら、新たな料理を試作研究する事はできんのか?」

「残念でございますが、我が家の力では不可能でございます。
 それに同じものばかり食べていては身体に悪うございます。
 王家の料理人が殿下の身体を想い、精魂込めた食事も食べていただかねば、殿下の健康を維持することができなくなります」

「四日、いや、三日だけ待つ。
 四日後にここに参る。
 試作中の不完全な料理で構わん。
 私に試食させるのだ!
 これは王太子としての命令である」

 困った方です。
 でもこれほど美味しく思ってくださるのは、正直うれしくもあります。
 これは不眠不休で試作しなければいけませんね。
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