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第一章

第59話:半神

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 氏子代表衆が落胆しているのは、石姫皇女や俺を崇め続けるよりも、半分自分達の血が流れた半神を崇めたかったのだろう。
 いや、半神の力を使って、この国を征服したかったのかもしれない。
 だがそんな事は断じてやらせない。
 愛おしい我が子に危険が及ぶような真似は絶対にやらせない。

「はっきり言っておくぞ、俺の子供に危険が及ぶような事をしたら、氏子衆を皆殺しにして、この氏子村を滅ぼしてやるからな。
 ライラと子供をこの境内で育てて、他の者は皆殺しだ」

 俺は完全に本気だった、本気で怒っていた。
 こんなに怒ったのは十数年ぶりだ。
 日本では諦めた、愛する妻と子供を異世界で手に入れることができたのだ。
 その大切な妻子を危険に晒すようなモノは、絶対に許さない。
 そのモノが愛する妻の父親や兄だろうと、問答無用で殺す。

「これこれ、わらわを無視して話を進めるでない。
 主祭神はわらわで、広志は配祀神でしかないのじゃ。
 生れてくる子供は配祀神の半神でしかないのじゃ。
 過度な期待をしておると、他の神々に殺されてしまうぞ。
 わらわや広志が降臨したように、他の村の信じる神が降臨する事もある。
 その神が戦の神なら、半神など簡単に殺されてしまうのだぞ」

 石姫皇女の厳しい言葉を聞いて、氏子代表衆が真っ青な顔になった。
 特に村長の顔色は死人に近い色になっている。
 半神だと言っても自分の孫なのだ。
 その孫が他の神に殺される想像をしたのだろう。
 それにこの世界に来た当初から、石姫皇女も俺も戦いの苦手な神だと繰り返して言ってきたから、それを思い出したのだろう。

「申し訳ありませんでした、不遜な事を考えてしまっておりました。
 どうかこれまで通り我らを御守りください、伏してお願い奉ります」

 村長がそう言って土下座したら、周りの氏子代表衆も一斉に土下座した。
 冗談ではなく本気で俺の子を担いで国を支配しようとしていたのか。
 ここでどれだけ謝られても、もう信じるわけにはいかない。
 氏子衆全員を敵に回すことになっても、ライラと子供は護って見せる。
 最悪異世界から連れ出して日本に住ませる事も覚悟する。

 ライラは異世界人で言葉が話せないから戸籍をとるのは難しい。
 だが生まれていた子供は、俺の子供として出生届を出す事は可能だ。
 母親がいない状態で出生届を出すためには、捨て子を拾った事にするしかないか。
 俺が女なら、レイプされ父親の分からない子を、自分一人で自宅出産したと言い張って出生届を出すことができるが、男なので不可能だ。
 最悪の状況を考えて事前に調べておかなければいけないない。

「広志、日本に戻るのなら、今回のお礼としてフルーツと生クリームにカスタードプリンを買ってくるのじゃ、チョコレートも忘れるんじゃないぞ」
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