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第一章

第31話:昼夜連戦

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 村長が考えていた最悪の状況になってしまった
 朝になって死体漁りを始めたら、森に隠れていた盗賊が襲ってきた。
 村長の話では、防塁の外に出た氏子衆を殺して村の戦力を減らすためだという。
 だがこの世界を生き延びてきた村長は、この程度の事はお見通しだった。
 敵が襲ってきそうな場所には、狙撃ができる猟師とクロスボウ隊が配置されていて、敵が氏子衆に近づく前に皆殺しにしてしまった。

 俺には正視に耐えないような惨状だが、氏子衆には勝利の現場だった。
 氏子衆全員で雄たけびをあげて勝利を喜んでいた。
 厳重に警戒したうえで、死体漁りを再開していた。
 もう盗賊団は襲ってこなかったが、多くの矢を使った事に違いはなかった。
 特に朝の襲撃には森の近くに矢を射たので、回収に危険を伴う場所にも数多くの矢が散乱していた。

「矢の回収は諦めるが、敵が矢を回収しないように見張らなければいけない。
 夜襲に備えて交代で休憩してもらうが、当番は全員大弓かクロスボウを準備しろ。
 絶対に敵に矢を渡すんじゃない、渡した分だけこちらが射られるぞ」

 村長の言う通りなのだろうが、厳しい命令だと思う。
 敵は盗賊団だから、隠れて行動するのは得意中の得意だろう。
 日中はともかく、日が暮れてから回収されたら手の打ちようがない。
 敵も馬鹿じゃないから、矢がそれほど大切な戦力なら、矢を手に入れてから襲撃を再開するだろうから、氏子衆も少しは休めると思ってしまっていた。

「敵襲、敵が攻めてきたぞ、直ぐに迎え討て」

 日が暮れて氏子衆が早い晩飯を食べてから八時間ほど経って、日本人の感覚では草木も眠る丑三つ時と呼ばれる深夜2時ごろ、見張りをしていた氏子衆が警戒用の太鼓を叩いて氏子衆を総動員する。
 俺は相変わらず安全な境内にいるのだが、太鼓の知らせを聞いて跳び起きた。
 最初とても眠れないと思っていたのだが、心身が消耗していていつの間にか眠ってしまっていたようだ。

「敵の矢に気をつけろ、敵は戦場の矢を回収して使っているぞ」

 俺には誰の言葉か分からないが、氏子衆の誰かが警戒を呼び掛けている。
 どやら新集落に多くの矢が射かけられていて、その中には俺の買い与えたアーチェリー用の矢も混じっているようだ。
 俺が矢を買い与えたから襲撃を撃退できたのは確かだが、今度はその矢が氏子衆を傷つけることになり、忸怩たる想いでいた。

 だが村長の話では、俺の買い与えたアーチェリー用の矢は、比較的殺傷能力が低いらしく、敵の死体からはぎ取った革鎧とチェインメイルと板金鎧を上手く組み合わせて装備すれば、致命傷になる事はないらしい。
 戦場を眼の前にして、胸が一杯になるような不安に苛まれている俺に、石姫皇女がとんでもないことを口にして、俺を怒らせる。

「広志、今日は百貨店に行って最高級のフルーツを買ってくるのじゃ。
 生クリームもいつもの安物ではなく百貨店で買ってまいれ。
 専門店のプリンアラモードも美味いが、量が少なすぎる。
 広志が大皿一杯のプリンアラモードを作るのじゃ」
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