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第一章

第18話:危険な決断

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「女神様、配祀神、どうか御願いでございます。
 昔この村を出て行った者達を迎え入れることをお許しください」

 氏子総代の長老以下、見張り以外の村人が総出で頭を下げている。
 確かに、この村が豊かになっているのは俺達のお陰だし、機嫌を損ねて支援を断られたりしたら、餓死者が出る寸前の貧乏村に逆戻りだ。
 まあ、でも、廃鶏が4500羽もいる今なら、俺達を怒らせて支援を断られても、何とかなると思う。
 長老の話では、この世界にも似たような鶏がいるようだから、雄鶏を買ってきて有精卵を産ませてひよこから育てれば、高価な卵の名産地になるだろう。

「どうするのじゃ、広志、私はどちらでもいいのだぞ」

 さて、本当にどうするべきなのだろうか。
 この村の安全を考えたら、石姫皇女に対する敬いを失っているかもしれない者達を、村の中に迎え入れるのは危険だと思う。
 だが同時に、都市でそれなりの技術を習得した者を迎え入れた方が、村が発展する可能性が高いとも思う。
 ここがただの農村ではなく、小都市と呼ばれるような場所に発展する可能性も皆無ではないのだが、それにリスクが伴うのは当然だろう。

「女神様、配祀神様、私達巫女衆からもお願いします。
 村が飢えないように出て行ってくれた者達の中には、奴隷同然の状態で働かされている者もいるのです、どうか迎え入れることをお許しください」

 ライラはプライドが高い所もあるのに、必死で頼み込んでいる。
 もしかしたら、想い人が奴隷のような状態にされているのかもしれない。
 少々焼けるが、俺が女性にもてないのは今に始まった事ではないから、今更落ち込むような事でもない。
 誠心誠意仕えてくれているのは、俺に個人的な魅力があるからではなく、石姫皇女と違って村を助けようとしている配祀神だからだ。

「女神様……」

 石姫皇女に氏子衆の本心を確かめてもらおうとしたが、表情を見て諦めた。
 明らかにこの状態を愉しんでいて、ニタニタと笑っている。
 俺がどんな決断をして、その結果この村がどうなるのかを確かめる心算だ。
 嘘をついて騙そうとしたりはしないだろうが、絶対に本当の事は教えてくれない。
 以前の話を思い出せば、俺に冒険させてハラハラドキドキの展開にしたいのだ。
 絶対にそんな期待に応える気はないが、必死の表情の氏子衆を無碍にもできない。

「分かった、だがその者達が未だに女神様を敬っているのかは、絶対に確かめなければいけない。
 帰ってくる者全員を1人ずつ結界を通れるか確かめる。
 通れた者は村の中で暮らす事を許すが、通れなかった者は村の外で暮らしてもらわなければいけない。
 一度村を出て苦しい暮らしを経験したのだから、全く守ってくれなかった女神様への敬いを捨ててしまうのも仕方がない事だ。
 それを理由に追放するのは可哀想だから、村の外に新たの集落を設けて、村の護りを固める役になってもらう」

 どうだ石姫皇女、あんたの無関心と無力が氏子衆の敬いを失わせたかもしれないのだ、少しは反省くらいしろ。
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