浮気夫に平手打ち

克全

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27話

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「では行ってきます」

「「「「行ってきます」」」」

「ご無事のご帰還を願っております」

「「「「「願っています!」」」」」

 今日もルーカス様たちが邪竜を誘導に行かれます。
 他国を威圧するために。
 絶対の私を護れることを証明するために。
 私を女王にするために。

 まだ私の中には、怒りも戸惑いもあります。
 ルーカス様たちは、元々が現実主義の冒険者です。
 重症の仲間を見捨てる決断をしなければいけない場合もあります。
 必要ならば、仲間を囮にして逃げることも厭いません。
 
 つい最近も、王都の民を見殺しにしたばかりです。
 ルーカス様たちなら、王都の民が喰い殺される前に、邪竜を斃せました。
 ですがあえて斃されませんでした。
 王都の民を見殺しにする方が、より多くの民を助けられると判断されたのです。

 私にはできません。
 絶対にやりたくありません。
 でも女王になれば、やらなければいけなくなるのです。
 女王の責任として、より多くの人を助けるための、少ない人を見殺しにしなければいけなくなるのです。

「カチュア様!
 どうか、どうか、どうかお願いいたします。
 ルーカス様たちにおとりなし願えないでしょうか?!
 我が国の王は、カチュア様の戴冠を認めると申しております。
 これまでの無礼な態度も、正式に詫びると申しております。
 ですから、ですからどうか、邪竜を追い払ってください。
 せめて、邪竜を我が国の王都に追うのだけは、お止めくださるように、ルーカス様たちにおとりなし願えないでしょうか!」

「分かりました。
 使者殿の話は伝えさせていただきます。
 ですが私を攫おうとしたことで、ルーカス様たちは激怒されておられます。
 早急に王都から離れられることをお勧めします」

「ありがとうございます!
 王にはそのように申し伝えます。
 これはまことに些少ではございますが、取り急ぎご用意させていただいた宝石でございます。
 いえ、これは伝言のお礼でございます。
 誘拐しようといたことに対する詫びは、後日必ずお持ちさせていただきます」

「余計なことかもしれませんが、急がれた方がいいと思いますよ。
 他国の政治に口出しする気など全くありませんが、ルーカス様たちは本気で怒っておられましたから。
 必要とあれば、自国の王や王都の民ですら邪竜に食べさせる方々です。
 他国への警告のために、貴国の王侯貴族だけでなく、全ての民を邪竜に食べさせることすら厭わないと思いますよ」

「……貴重なご助言感謝したします」

 使者は真っ青な顔をして急ぎ自国に帰って行きました。
 それを見ていた多くの国の使者も、真っ青になっています。
 助言はしてあげましたが、役に立たないでしょうね。
 たぶん、もう手遅れです。
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