浮気夫に平手打ち

克全

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10話

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「……ママ」

「どうしたの、エマちゃん。
 ミアちゃんも隠れていないで出てきなさい」

「ギュッとして」
「ギュッとしてほしいの」

 怖い夢でも見たのでしょうか?
 お昼寝の後は、よくこうして私の顔を見に来ます。
 ルーカス様の方針で、小さい子にはお昼寝させていますが、その後でこういう事がよくおきるのです。

 本当は全ての子供に優しくしてあげたいのですが、私も暇ではありません。
 団員全員の料理を作らなければいけないのです。
 依怙贔屓するわけにもいきません。
 特定の子だけを可愛がれば、その子が虐められる結果につながると、ルーカス様から教えられました。
 だったら依怙贔屓しない方法を考えればいいことです。
 私はエマとミアの二人同時にギュッと抱きしめてあげました。

「ハーパー、後を任せていいかしら?」

「お任せください、カチュア様。
 こちらに来て手伝うのです、エマ、ミア」

「「はい!」」

 私はハーパーに後を任せて、小さな子供たちが集団生活をしている小屋に向かいました。

「何事でございますか、奥様?」

「起きている子供たちに手伝いをしてもらいます。
 寝ている子供たちは起こさないようにしてください」

「承りました、奥様」

 私の言葉を受けて、世話係の老女が静かに起きている子供たちを集めます。
 寝ている子供を起こすと泣き出してうるさいからです。
 私も子供の事はまだまだ勉強中ですが、毎日色々学んでいるのです。
 集まってきた子供たちを順番に抱きしめてあげます。
 これでエマとミアがこれ以上虐められることはないでしょう。

 それでなくても双子という事で虐められているのです。
 私たちがどれほど教え諭しても、元の性格はなかなか治らないのです。
 世間の噂話を鵜呑みにして、双子は畜生腹だと悪口を言う子がいるのです。
 悪口を言ったからといって、今さら追い出すわけにもいきません。
 本質が悪だと分かたからといって、孤児を追い出すわけにはいかないのです。

「さあ、今日も手伝ってもらいますよ。
 最初に野草の選別です。
 いつも通り、食べられるモノと食べられないモノを分けてください。
 薬草が混じっていたら別にしてくださいね」

「「「「「はい!」」」」」

 子供たちが元気に返事してくれます。
 後で大人たちが再度見直しますが、今からここで練習しておけば、魔境やダンジョンで採集するようになっても、短時間で集めることができるようになるでしょう。

「洗い物ができる者はこっちですよ」

「掃除が上手な子はこちに来な」

「野菜の皮むきが上手な子はこっちだぞ。
 たくさんむけたら自分たちの料理に使っていいぞ」

 見習料理人たちが、子供を集めて教えようとしてくれています。
 彼らも自分たちの事で精一杯なのに、子供たちのために余計な手間を引き受けてくれています。
 私ももっと頑張らないといけません。
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