武田義信に転生したので、父親の武田信玄に殺されないように、努力してみた。

克全

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武田義信

情勢判断・兵力増強

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 『諏訪上原城 大広間』

 板垣信方の討ち死にを受けて、俺が諏訪方面の総代官と成った、思惑通りだが少し心が痛い。

 「若殿、和田城・中山城・矢ヶ崎城からの伝言を申し上げます、村上・小笠原ともに城に兵を集めるも攻め寄せる気配なしとのことです。」

 ふむ、やはり攻勢に出て後背を突かれるのが怖いのだな。躑躅ヶ崎館には信玄がいて、下手に出陣して隙を見せれば葛尾城を攻められる恐れがある。上原城には俺がいる、噂では名将ということになっているから、小笠原も林城を留守にして城攻めに出るのは怖いだろう。一方自分の城や、敵味方勢力の境目の城には兵を集めておかないといけない、いつ奇襲や略奪に武田が来るかもしれない、まあ俺の夜襲癖はすっかり有名になってしまったから、これからは楽に城取はできないが、常時夜襲に備える敵も大変だろう。

 「伝令御苦労、湯茶と雑炊を用意しておる。案内してやれ。」
 小姓が伝令を別室に案内していった。

 湯茶は最近熊笹茶を領民の為に普及させた。桑の葉茶も薬効があっていいのだが、桑の葉は人間よりも御蚕様に食べて戴かないといけない。耕作適応地は穀物生産が優先だ、茶の為に使うわけにはいかない。
で、御茶は耕作不適応な山奥に自生する熊笹を使い普及させることにした。麦焼酎と米麦の物々交換を強行した御蔭で兵糧に余裕ができた、主食と副食が安定してやっと湯茶に目を向ける余裕が出てきた。最近家族の食生活が贅沢になった、俺の所為なのだが。。。。。。。反省!

 問題は、信玄がヘシコや塩鯖が大好物で毎夜麦焼酎で晩酌していることだ。塩分摂取量の増加が恐ろしい、最低でも史実通りの寿命までは生きて貰わなければ困る。でだ、糖尿病の予防・高血圧の予防・毒消し・胃炎・口臭・口内炎の薬効が有ると記憶していた熊笹茶を普及させた。領民の好い小遣い稼ぎに成ってると報告も受けてるし、まずまず成功だな。

 「若殿、関東の情勢ですが。」

 おっといかん、また前世の様に夢想癖が出てしまった、家臣の前では集中しないと。

 「うむ、黒影どうなっておる。」

 「12月に太田資正が、兄が死に当主不在になった岩槻城を攻め、実力で家督を奪い取りました。」

 「兄は太田資顕と言ったか? 嫡男はいなかったのか?」

 「は、娘と孫娘だけだったようです。娘は遠山綱景の嫡子藤九郎に嫁いでいましたが、藤九郎が死んでしまい、資顕が引き取っていたのですが、太田資正は、亡き兄の妻と合わせて三人とも追放してしまったようです。」

 「外道だな、養子を送り込まれて本家を奪われるのを嫌ったともとれるが、兄嫁や姪を幼き子とともに追放するとは、心根が悪すぎる! 今後関東の調略が必要になっても決して味方に招くでない、討ち滅ぼしてくれる!!」

 「承りました。」

 「して3人はどうしておる? 路頭に迷っているようなら儂が招こう。」

 「北条家の家臣、成田長泰に引き取られたようです。」

 「北条家は扇谷上杉と違って慈愛ので関東を治めているな。」

 「は、ただそれだけでは終わりませんでした。」

 「どうなったのだ?」

 「岩槻城の、親北条派家臣が離脱して北条家に臣従した上、太田資正が元々の本拠地松山城を譲った上田朝直に裏切られました。」

 「ほう、天誅でも下って打ち取られたのか?。」

 「いえ、討ち取られはしませんでしたが、朝直が北条家に臣従致しました。」

 「城まで与えたものに裏切られるか、余程信望が無いのであろう、打ち取り候補として書き記しておけ。」

 「は、承りました。」

 俺は素破の収集した情報を整理して、今後に味方として重用する人材と、配下に加えても構わない標準能力の人材、心根が悪く信頼できない討滅候補を選り分ける事にした。自分の人物眼が愚かで、寝首を掻かれるのは自業自得だが、その後で家臣領民が苦しむことは許されない、周辺国の武将と歴史上有名な武将の人物鑑定は急務だ。

 「三河の情勢はどうなっている?。」

 「織田信秀の嫡男信長と斎藤道三の娘濃姫の具体的な輿入れ話が進み、信秀は三河安祥城を拠点に岡崎城に侵攻したようでございます。」

 「ふむ、兵力・編成・侵攻路は?」

 「織田信秀は、庶長子信広を先鋒とし4000兵を率いて安祥城から矢作川を渡河、上和田に布陣しました。」

 「ふむ、今川殿はどう対応されたのだ?」

 「今川義元殿は、松平広忠救援のため1万の兵を出陣させられました。大将は太原雪斎殿、副将は朝比奈泰能殿で松平軍と合流した後、織田軍先鋒の信広と接触し小豆坂で合戦となりました。」

 「そう言えば、朝比奈泰能は田原城を囲んでいなかったか?。」

 「申し遅れました、田原城の戸田一門は朝比奈泰能殿に打ち滅ぼされ、田原城は泰能殿が城代として管理しております。」

 「ならば、今川殿は矢作川を挟んで遠江側の安全は確保されていたのだな?」

 「確とは申せませんが、少なくとも渥美半島の織田派の勢力は抑えられたものと考えられます。」


 「うむ、善繁(よししげ)はどう思う。」
 俺は、鮎川勝繁に諱を与えて、鮎川善繁に変名させた、長坂勝繁と同じではややこしい。

 「は、4000と1万では最初から兵力で織田が劣っておりました。更に背後で蠢動すべき味方が討滅されては著しく織田が不利であったと思われます。」

 「だが、動かねば三河は手に入らぬし、味方した戸田が攻め滅ぼされて何もせねば、今後味方に成る国衆や地侍が居なくなるか。。。。。。。」

 「左様でございます、本来は戸田が囲まれた時点で援軍を送りたかったのでしょうが、諸般の事情で遅れてしまったのでしょう。」

 「背後が心配だったのだろう、黒影続けてくれ。」
 話が横道にそれ過ぎた、合戦の経過を聞き今後の参考にしないとな、特に参加武将の性格や癖を知るのは重要だ。

 「今川軍は坂の頂上付近に布陣し優勢に合戦を進めておりましたが、信広部隊も劣勢を悟って無理をせず、兵を信秀本隊のある盗木の付近まで後退いたしました。本隊と合流して勢いを盛り返した信広部隊の奮戦によって松平隊が崩され、次第に今川軍が劣勢となりましたが、予め今川軍は伏兵を配置しており、伏兵が側面から織田本隊に奇襲を敢行した為、織田勢は総崩れとなり、再び矢作川を渡って安祥城まで敗走いたしました。」

 「善繁はどう思う。」
 鮎川善繁の判断を聞いてみる。

 「先ほども申し上げましたが、敵より多くの兵を集めた時点で有利であります。」

 「うむ、至言で有る。」

 軍議に集まっている全諸将が必死で聞いている、努力を怠れば他の近習、ライバルから後れを取ると、前回の村上義清合戦で思い知ったのだろう。俺も信玄も能力の有る者は出自にかかわらず抜擢する、信玄はまだ譜代に遠慮しないといけないが、俺はは独力で稼いだ金で兵を雇っている、その中から教育した者を足軽大将に抜擢しているのだから文句は言えない。信玄の配慮で俺の近習に押し込んで貰ったのに、軍議や合戦で活躍できない、そのくせ不平不満を言えば、召し放ちに成り一族一門の恥に成りかねない。

 「更に、後背や内部に有る潜在的な敵を討滅した上で合戦に及んでおります。」

 「ふむ、合戦での目に見える手柄が大事なのではなく、先ずは調略や内政で敵より多くの兵を集め、次いで合戦時に裏切る可能性の有る者を取り除くことが重要と申すのだな。」

 「はい、もう一つですが、織田軍は武勇で松平部隊を打ち破っておりますが、合戦場の索敵を疎かにした為伏兵の奇襲で敗れております。」

 「ふむ、武勇よりも索敵を重視せねば、敵に勝る武勇も役立たずと言うことだな!」

 「は、1に兵力・2に忠誠・3に索敵・4に武勇でございます。」

 「皆の者、理解したであろう、内政によって国を富ませ軍資金を集め兵を多く養うのが1番の道じゃ。武勇の鍛錬は当たり前の事じゃ、繰り返すぞ、武士が武勇を磨くのは当たり前の事で誇るような事ではないのじゃ!!」

 『は、承りました!!』

 「2番は民を富ませ安らかに生きれる国を作るのじゃ、さすれば民は必至で国を守ろうとする、国の守りを民に任せる事が出来れば、我ら武士は安心して他国に攻め入れるのじゃ。」

 「はは~~~、承りました。」

 さてと、今川が織田を破ったのなら史実通り桶狭間の合戦は起こりそうだ。ならば、どうすべきか? 史実通り織田松平と組んで駿河をかすめ取るか? 今川氏真を支援して、織田・松平に対抗させるか? どちらに転んでも好い様に布石を打っておくべきだろう、史実を知っていることは誰にも言えない、ならば今川・北条と組んで信濃・飛騨・美濃・越後を切り取るための方策としてとして、従弟の今川氏真との友諠を厚くすると説明するか。

 具体的にはどうすべきか? 信虎爺ちゃんと定恵院伯母ちゃんに動いて貰おう、爺ちゃんは恐ろしい位長命だよな? だが最低でも女傑の寿桂尼の信頼を得なければならない。旦那の今川氏親が病床にある間は、今川家の政治を指導していたと聞くし、長男の今川氏輝は実質的には寿桂尼の傀儡だったとも言われている。今川義元が討たれた後のキーパーソンは彼女だろう。ならば、信虎爺ちゃんが寿桂尼の信頼を得ていれば、軍師や陣代として登用される可能性も有る。その為には、武田家が今川家を裏切り、駿河に侵攻することは有り得ないと、寿桂尼に思わせないと不可能だ、せっせと文などを送り交流しよう。送り先は、寿桂尼・義元・氏真・信虎爺ちゃんと定恵院伯母ちゃんだな。

 さて、上原城は松尾信是に預けて躑躅ヶ崎館に行って許可を貰わないと、切腹ものだ。先年分国法で、勝手に他国と交渉したり手紙のやり取りをすることは禁止と定めた。信玄に許可を取り、信玄と俺の2人が署名し花押を押した物以外は偽書としよう。それと、今川義元は猜疑心が強いと素破が報告している、全ての手紙は一旦義元に届けて読んで貰ってから各人に転送してもらおう、織田からの寝返り領主が、再び織田家に戻る返り忠を疑われて殺されていたはず、信虎爺ちゃんと定恵院伯母ちゃんが殺されるような事だけは避けねばならない。

 信玄と義元の検閲無しの文の遣り取りは禁止だ!

『諏訪上原城 善信私室』

 俺は飛影・闇影・黒影・鮎川善繁と内密の軍議を行う。

 「闇影、武田の国衆や地侍に叛意の有る者はおるか?」

 「小山田殿と穴山殿は半独立状態です、もし武田が不利になれば裏切りは覚悟しなければなりません。」

 「具体的な動きは無いのだな?」

 「今のところは大丈夫です。」

 「善繁は兵量配備をどう思う。」

 「曽根昌世殿が、和田城で村上と小笠原に睨みを利かせておられます。和田城には今田家盛殿が500兵、中山城には滝川一益殿が500兵・矢ヶ崎城には相良友和殿が500兵で守りを固めて御有ります。」

 「うむ、葛尾城の村上義清と林城の小笠原長時に対する楔としては十分だな。」
 
「甘利信忠殿が、妻籠城で扶持武士団1000兵を率いて、美濃斎藤と飛騨・三河に睨みを効かせておられます。」

 「うむ、木曽は手に入れたばかり、民政を厚くして忠誠心の育成に重点を置きたい、信忠には連絡を密にさせよう。」

 「は、次に飯富虎昌殿ですが、青崩城砦群で扶持武士団1000兵と子飼い800兵を率いて、美濃三河国境線に睨みを効かせておられます。」

 「国境線の手配りは大丈夫だな。」

 「ただその所為で、若殿の上原城には扶持武士団1800兵と足軽800兵の合計2600兵しかおりません。」

 「守備籠城には十分だが、攻勢をかけるには不足と言いたいのか?」

 「御意!」

 さてどうする? 兵糧は十分だ、全く収穫が無かったとしても、1年は甲斐の民を喰わせていける。足軽を集めすぎると、銭で雇った足軽主力の尾張織田信長や畿内三好軍の歴史を変えてしまいかねない。だが兵は必要だ、甲斐・信濃・飛騨・越後・武蔵・駿河・遠江だけから足軽を集めるか?

 「北条殿・今川殿と争わないように、甲斐・信濃・飛騨・越後・武蔵・駿河・遠江だけから兵を募ってくれ。」

 「承りました。」
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