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イスパニア本格開戦

四郎

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 まいったな。
 四郎まで南方に行きたいと言うとはな。
 だが、俺の考えをよく理解してくれているから、西伯利亜や阿拉斯加に行きたいとは言わないな。
 そう言えば、叔父達も西伯利亜や阿拉斯加に行きたいとは言わなかったな。
 四郎が先に警告してくれたのかな。
「四郎」
「はい」
「子供が小さすぎる」
「それは‥‥‥」
「四郎が敵に後れを取るとは思わない」
「はい。御任せ下さい」
「だが、疫病は別だ」
「それは‥‥‥」
「四郎に万が一の事があった場合、子供がどんなに小さくても、直領の相続に問題はない」
「ありがとうございます」
「だが、預けている与力地の支配権は奪わなければならん」
「はい。それは当然だと思います」
「四郎の家族や家臣にその事を命じる、俺の気持ちを考えろ」
「それは‥‥‥」
「子供達が元服して、西伯利亜や阿拉斯加で経験を積み、四国太宰師に相応しい部将になるまで待て」
「家族には私から話しますので、御許し願えませんか」
「なあ、四郎」
「はい」
「余が、平気で子供達を戦場に送っていると思うか」
「いいえ。御優しい殿下が、自分が後方に残られ、御子達だけを戦場に送られる心中いかに御辛いか、四郎にも推察出来ます」
「余が胸を掻きむしる思いで我慢しておるのだ。四郎も我慢せい」
「それは‥‥‥分かりました。殿下が天下泰平の為に、臆病者のそしりを恐れられず、御子達だけを戦場に送られておられるのですから、私も戦場に行くのを我慢いたします」
「そうか、理解してくれるか」
「はい」
「では、その間に子作りに励んでくれ」
「殿下」
「情け知らずなようだが、これからも合戦は続く」
「はい」
「一門衆からも多くの討ち死にが出るだろう」
「殿下‥‥‥」
「情け知らずな言い方だが、余の子供も四郎の子供も、数多く死んでいくことだろう」
「殿下‥‥‥」
「だが、死なさなければならないのだ」
「はい」
「余の子供や一門衆から討ち死にを出さなければ、武田一門の性根が腐るのだ」
「はい」
「驕る平家になってはならぬ。鎌倉源氏のように、北条に乗っ取られるわけにもいかぬ」
「はい」
「武田諸王国は、百年の太平を成し遂げなければならぬ」
「はい」
「多くの子供を討ち死にさせる心算で、多くの子供を作らねばならぬのだ」
「はい」
「すまんな。久し振りに四郎に会って、思いを語ってしまった」
「とんでもありません。殿下の本音を聞けてうれしいです」
「そうか。そう言ってくれるか」
「当たり前でございます。家臣共に白い目で見られる中、殿下の庇護がなければ、余も母も生きていけませんでした」
「四郎は弟なのだから、兄が護るのは当然だ」
「ありがとうございます」
「だから、無駄死には絶対させんぞ」
「はい」
「硬い話はこれまでだ。今日は互いの近況を語り明かそう」
「はい。兄上」
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