上 下
68 / 99
第二章貴族偏

甘味

しおりを挟む
「お姉様はこちらで甘味を食べられた事がないのですか?
 私達には、送金してくださったお金でお汁粉を食べろとか、カステラを食べろとか、栗菓子が美味しい季節だよとか、手紙まで送ってくださっていたではありませんか?」

 私がうかつでした。
 何気ないマリアの質問に、何も考えずに答えてしまいました。
 これで私が、魔都に来てから、自分の私的な事に銅貨一枚使っていない事がばれてしまったのです。

 私は、下手な貴族では考えられないくらいの、莫大な金額を使っています。
 ですが、それは全て、狩りに必要な武器や防具ばかりです。
 貧乏生活が長かったせいで、私的な晴れ着や甘味には、全くお金を使っていなかったと、今更ながら思い出しました。

 でも、しかたないのです。
 長年の習慣習性は、そう簡単に治らないのです。
 それに、今は私達の活躍で変わりましたが、私達が魔都に来た当初は、若い女性だけで街を出歩き買い物をするのは、とても危険な事だったのです。
 だから、買い物は全てクラン内の売店ですなせていましたし、食事もクラン内の食堂で済ましていたのです。

「でしたらラナお姉様。
 姉妹四人で初めての買い食いをいたしましょう」
「ニコルお姉様の申される通りです。
 姉妹四人で買い食いいたしましょう」
「僕は仲間外れですか、ニコルお姉様、ダリアお姉様」

 ニコルとダリアとクリスティアンまで、マリアの話に加わってきました。
 四人のために初めて設けた公休日が、悪い方に作用してしまいました。
 今迄の私は、休みなど欲しいと思ったことはありません。
 遊び好きのダニエルでさえ、ドウラさんの手前、休みたいなどとはひと言も口にしませんでした。

 ですが、変われば変わるもので、マリアをパーティーごと鍛えるとなると、急に疲労の事が気になってしまったのです。
 私はマリアが疲労で思わぬ不覚をとる事を心配し、ドウラさんはレイノルドが疲労で思わぬ不覚をとる事を心配したのです。

 その姿を見て、エマとニカに対する態度との違いに「おばあちゃんっ子は三文安い」と言う諺を思い出しました。
 エマとニカもドウラさんの言動に苦笑していましたが、私は笑えませんでした。
 私の事を見ているイヴァンとダニエルは、同じように苦笑しているのでしょうね。

「お姉様。
 だったら姉弟五人で栗の焼き菓子を食べに行きましょう。
 徒士団騎士団のお姉様方に、美味しい焼き菓子の店を教えていただいたのです。
 昔お姉さまが焼いてくださった焼き芋には及ばなくても、姉弟五人で一緒に食べれば、それなりに美味しいと思うのです」

 止めてくださいマリア!
 職人が焼いた菓子と、素人の私が焼いた芋を比べないでください!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

悪女と言われ婚約破棄されたので、自由な生活を満喫します

水空 葵
ファンタジー
 貧乏な伯爵家に生まれたレイラ・アルタイスは貴族の中でも珍しく、全部の魔法属性に適性があった。  けれども、嫉妬から悪女という噂を流され、婚約者からは「利用する価値が無くなった」と婚約破棄を告げられた。  おまけに、冤罪を着せられて王都からも追放されてしまう。  婚約者をモノとしか見ていない婚約者にも、自分の利益のためだけで動く令嬢達も関わりたくないわ。  そう決めたレイラは、公爵令息と形だけの結婚を結んで、全ての魔法属性を使えないと作ることが出来ない魔道具を作りながら気ままに過ごす。  けれども、どうやら魔道具は世界を恐怖に陥れる魔物の対策にもなるらしい。  その事を知ったレイラはみんなの助けにしようと魔道具を広めていって、領民達から聖女として崇められるように!?  魔法を神聖視する貴族のことなんて知りません! 私はたくさんの人を幸せにしたいのです! ☆8/27 ファンタジーの24hランキングで2位になりました。  読者の皆様、本当にありがとうございます! ☆10/31 第16回ファンタジー小説大賞で奨励賞を頂きました。  投票や応援、ありがとうございました!

遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

僕は弟を救うため、無自覚最強の幼馴染み達と旅に出た。奇跡の実を求めて。そして……

久遠 れんり
ファンタジー
五歳を過ぎたあたりから、体調を壊し始めた弟。 お医者さんに診断を受けると、自家性魔力中毒症と診断される。 「大体、二十までは生きられないでしょう」 「ふざけるな。何か治療をする方法はないのか?」 その日は、なにも言わず。 ただ首を振って帰った医者だが、数日後にやって来る。 『精霊種の住まう森にフォビドゥンフルーツなるものが存在する。これすなわち万病を癒やす霊薬なり』 こんな事を書いた書物があったようだ。 だが、親を含めて、大人達はそれを信じない。 「あての無い旅など無謀だ」 そう言って。 「でも僕は、フィラデルを救ってみせる」 そして僕は、それを求めて旅に出る。 村を出るときに付いてきた幼馴染み達。 アシュアスと、友人達。 今五人の冒険が始まった。 全くシリアスではありません。 五人は全員、村の外に出るとチートです。ご注意ください。 この物語は、演出として、飲酒や喫煙、禁止薬物の使用、暴力行為等書かれていますが、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。またこの物語はフィクションです。実在の人物や団体、事件などとは関係ありません。

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)

青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。 父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。 断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。 ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。 慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。 お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが この小説は、同じ世界観で 1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について 2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら 3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。 全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。 続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。 本来は、章として区切るべきだったとは、思います。 コンテンツを分けずに章として連載することにしました。

処理中です...