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第二章貴族偏

城伯6

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「おねがいします!
 クランに入れてください。
 なんでもします。
 荷物持ちでも、掃除でも、洗濯でも、なんでもします」
「おねがいします、クランに入れてください」
「私もお願いします、クランに入れてください」

 噂とは怖いモノです。
 私が五千人もの家臣を召し抱えたという情報が、皇国中に広まった結果、軽卒と呼ばれる武家奉公人になりたいというの者が魔都に殺到したのです。
 今はまだ魔都近郊の者達ばかりですが、皇都各地から集まっているという情報を、レオン第四皇子が教えてくれました。

 全て無能な貴族士族の失政のせいです。
 厄竜の広めた疫病のせいで、領地が荒廃しているのは分かります。
 ですがそれは、農地を耕す民が疫病で死んでしまったからです。
 生き残った者に、一年凌げるだけの食糧を貸し与えたら、ちゃんと農地を耕して食糧を生産してくれるのです。
 それをやらないから、こんな事になるのです。

「ラナ様は百姓仕事を簡単に言われますが、ちゃんと作物を育てられるようになるには、数年の経験が必要になるのです。
 いえ、それ以前の問題として、一年放置された田畑を元の農地に戻すのは、本当に大変なのです。
 それにいつまた疫病が流行するか分かりません。
 貴族士族も、貴重な食糧を疫病の治まっていない地域の民に無償で渡すほど、余裕がないのです」

 私が独り言を口にしてしまっていると、某男爵家の分家の部屋住みが、恐る恐る話してくれました。
 それでようやく分かりました。
 私は貧乏で苦しんではいましたが、領地を治め民を喰わせていく苦労はしたことがないのです。

 だから、集まって来た流民難民を邪険にすることができなくなりました。
 今迄散々領地持ちの貴族士族の悪口を言ってきた分、自分が領地持ちの貴族になった以上、民を喰わせていける事を証明しなければいけなくなったのです。
 今迄の発言を棚に上げて、助けを求める流民難民を切り捨てる事はできません。
 そんな恥知らずな真似はできません。

「集まって来た流民難民を鍛えて武家奉公人にします。
 年齢や性別に問題がある者は、できる事にあわせて、屋敷内で使う下男下女にしますから、見込みのある者は貴方達に鍛えてもらいます。
 家族を武家奉公人にする者以外は、軍役で武家奉公人を召し抱えることになりますから、自分が召し抱えるつもりで鍛えてください」

 私の決断を受けて、新設されたばかりのホセイ家魔都駐屯徒士団騎士団は、大量の武家奉公人見習を鍛えることになってしまいました。
 状況を見て、築城中の領地に労働力として送った方がいいかもしれません。
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