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第二章貴族偏

城伯3

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「凄いな、ラナ。
 魔都の冒険者のほとんど全員が志願してきたのではないか?」

 ダニエルが軽く言ってくれます。
 こちらはあまりに応募者が多いので、九千人以上の希望者を断らなければいけないのです。
 その申し訳なさで苦しんでいるのに、他人事過ぎる話し方です。
 自分の方は志願者がいなくて困っているでしょうに。

「いや、本当の冒険者だけではこの人数にはならんよ。
 詳しく調べたら、冒険者登録だけしていて、実際に獣とさえ戦った事のない、士族家の部屋住みも多いだろう。
 よく調べないと役立たずを召し抱えることになるぞ」

 イヴァンは真剣に考えてくれているようです。
 確かにその心配がありました。
 特に私達が稼げるようになってからと、城伯に叙勲されてからは、とりあえず冒険者登録しておこうという部屋住みが急増しました。
 いえ、士族家の部屋住みだけでなく、貴族家の部屋住みまでが、腕のいい家臣に護られて、冒険者として経験を積もうとしたのです。

 でも、実際に狩りをやってみて、命の危険があまりに大きすぎて、恐ろしくなって諦めるケースが多かったです。
 私達はドウラさんと、エマとニカという強力な魔法使いのお陰で、ほとんど危険を感じることなく、トントン拍子に成長できましたが、これは異例中の異例なのです。
 普通では絶対にありえない事なのです。

「おい、おい、おい。
 俺達も真剣に考えないといけないんだぞ。
 能力があろうとなかろうと、最低千人の家臣を召し抱えないといけないんだぞ」

 マルティン様が少し真剣な表情でイヴァンとダニエルをたしなめます。
 ですがどこか余裕があります。
 家臣の当てがあるのでしょうか?
 まあ、能力に目をつぶれば、志願者は数多くいるでしょう。
 なんといっても、皇国の徒士家騎士家だった過去があるのです。
 知り合いから、部屋住みを召し抱えやってくれと頼まれることも多いでしょう。

「ラナ。
 早く決めてやってくれ。
 めぼしい連中は全部お前が召し抱えればいい。
 それはここにいる連中全員が納得している。
 お前が決めてくれないと、他の連中も縁故を召し抱えられないんだよ」

 いきなりドウラさんが食堂に入ってきて、ネタ晴らしをしちゃいました。
 やはりみんな縁故採用を頼まれているようです。
 でもそれは、一番条件のいい我が家に採用されなかった時の話だそうです。
 だったら手伝ってもらいましょう。

「分かりました。
 だったら、ドウラさんから見て、見込みのありそうな人間を教えてください。
 ジョージ先生とマルティン先生もお願いします。
 千人を少々超えてもいいですから、地方の魔境で十分戦えるパーティー編制、団分けをお願いします」
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